インテリジェンスソード・プロトタイプの運命
「このインテリジェンスソード・プロトタイプだが、商品になると思うか?」
「ああ、あの時の『さしすせそ』で返事をする剣? 少なくとも私はいらないかな……」
「なぜだ? ……まあたしかに現状だと知性がある剣とは言い難いが……」
「理由分かってるじゃないの! ……それはともかく売るつもりなのね。ちょっと意外だわ」
「俺もはじめは売る気はなかったんだが、試作品とはいえ珍しい剣に仕上がったのは確かだ。市場にこの剣の価値を問いたい……本音を言うと、結構な資金を投入したのでそれを多少回収したいというのもある」
「それは切実な理由ね。武器としての品質はどうなのよ?」
「切れ味に関しては市販の剣と大差ない。元々、戦闘用に作ったわけではないからな」
「じゃあやっぱり、ランダムに返事をする機能くらいしか特色はないわけね……物珍しさで買っていく人もいるかもしれないけど、高値では売れないんじゃないかしら?」
「やはりそうか。しかしこの剣は今の形にたどり着くまでに紆余曲折あって、作り出すのに苦労したからな。安値で売りに出すのは避けたいものだ」
「気持ちは分かるけどね……今のままだとさすがにセールスポイントが弱すぎるし、高く売りたいなら何か知恵を絞るしかないんじゃない?」
「ふむ……ならば売りに出す時に『これが噂のインテリジェンスソード!?』とハテナマークをつけて断定せず、客に誤認させるというのはどうだろう?」
「それは絶対にやめときなさいよ!?」
「さすがに冗談だ。仕方ない、この剣にはこれからも俺の心を癒す役目を背負ってもらおう」
「今回ほど、この剣に知性がなくて良かったと感じたことはないわ……」




