携帯保存食
「そういえばお前もダンジョンに潜ったり、よその街に出かけたりするよな?」
「もちろん。冒険者だし」
「そうか。ならばお前にオススメの一品がある」
「なに? 武器? それとも便利なマジックアイテム?」
「いや、ちがう。ある意味それらに匹敵する大事なもの……携帯できる保存食料だ」
「それは確かにちょっと興味あるわね。冒険者の必需品だし」
「だろう? それに市販されている保存食は似たようなものが多い。途中で飽きがくるのも冒険者の悩みのひとつだ」
「そうね……っていうか詳しいのね。ひょっとして冒険者なの?」
「れっきとした冒険者ではないが……冒険者のまねごとはできるといったところだ」
「ふうん」
「まあ今は俺のことはいい。さっそく商談といこう。これが先ほど言った、うち特製の保存食だ」
「干物なの? 特製って言葉の通り、たしかに他では見たことない形だけど……いったい何の干物?」
「……それは言いたくない」
「なんでよ!?」
「お前には先入観を持ってほしくない。だからあえて素材の名を伏せるのだ」
「分かったわよ……でもせめて商品名くらいは教えてよ」
「なぞの携帯保存食干物、クロヤモリンだ」
「名前を聞いた瞬間に買う気がなくなったわよ!!」