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携帯唐揚げ

「こんにちは」

「……おっと。いらっしゃい」

「どうしたの？　何か考え事？」

「実はまた冒険者向けの食料を作っているんだが、味付けについて悩んでいるんだ」

「……まさか前みたいな怪しげな干物じゃないでしょうね？」

「今回はいわゆる保存食ではないから心配するな。量産体制が整ったら、ダンジョンの入口近くに出店《でみせ》を作ってそこで売ってみようかと思っている」

「ふーん。それで何を売るつもりなの？」

「唐揚げだ」

「あらうれしい！　私唐揚げは大好きよ！　冒険者仲間もそうだし、それは売れるんじゃないかしら」

「うむ。持ち歩きながら食べることのできるサイズにするつもりだ。小腹を空かせた冒険者たちにぴったりのものとなるだろう」

「お店がオープンする日を楽しみにしてるわ！　……でも念のために聞いておくけど、材料は普通の鶏肉なのよね？」

「……それは言いたくない」

「なんでよ!?　やっぱりまた怪しい食材を使ってるわけ!?」

「そんなことはないぞ。ちゃんと食材として普遍的に使われている由緒正しいものだ」

「……じゃあせめて売り出すときの商品名だけでも教えてよ」

「なぞの携帯唐揚げ、ウシガエルンだ」

「この前の干物と同じで名前を聞いた瞬間に買う気がなくなったわよ!!」