309/348
大きくなる薬と小さくなる薬
「来る日も来る日も失敗ばかりで『お許しください、ご主人様』と、毎日のように主人にぺこぺこ頭を下げている男がいてな」
「ふんふん」
「そんなある日、実験に付き合えと、主人から赤い薬と青い薬を手渡された。その男はまず赤い薬を飲んでみた」
「それでそれで?」
「するとあら不思議、たちまち自分の体が大きくなって頭が天井を突き破らんばかり。赤い薬は体が大きくなる薬だったのだ。さっきまで怖かった自分の主人が今ではちっぽけに見える。気後れしなくなった男は『これまでよくもいじめてくれたな。これからは俺がお前をこきつかってやる!』と、主人に向けて言い放つわけだ」
「まあ気持ちは分からなくもないわね」
「やがて男は残った青い薬のことを思い出し、それも飲むことにした。赤い薬と同じように、きっと何か良いことが起こると思ってな」
「そしたらどうなったの?」
「するとあら不思議、たちまち自分の体が元のサイズに戻ってしまう。青い薬は体が小さくなる薬だったのだ。目の前には恐ろしい目つきで自分を睨んでいる主人がいる……。先ほどの失言に気づいた男は慌てて『お許しください、ご主人様』と、いつものようにぺこぺこ頭を下げたという話だ」
「悲しすぎる話ね……」




