福引券
「こんにちは」
「いらっしゃい」
「あら、ガラガラじゃない。福引のサービスでも始めたの?」
「うむ。一等賞から残念賞まで、さまざまな冒険者向けのアイテムを用意してある。お前もぜひ福引券を手に入れて挑戦してくれ」
「楽しそうなイベントね! それで福引券はどこで手に入れればいいの? 商店街とかで買い物したらもらえるのかしら?」
「発行した福引券は、すべてダンジョン内に隠しておいた」
「……はあ?」
「駆け出しでも探せる浅い階層から、俺が行ける限りの深い階層を含めてな……」
「いやいや、なんでよりによってダンジョン内に隠すのよ?」
「他にも、寝ているモンスターにこっそりと近づき、懐にねじ込んできた」
「ええ!?」
「手強いモンスターを倒して福引券をゲットし、喜びに打ち震えるがいい」
「なんでモンスターとの死闘の果てに、あなたが作った福引券を手に入れないといけないのよ……」
「さらには、宝箱の中身と交換してきた。冒険者が数多の危機を乗り越えて見つけ出した宝箱にこの福引券が入っていると思うと、心が躍る」
「なんてことしてくれんのよ!! というかさっき私が言ったみたいに、商店街に置いてもらえば良かったじゃないの!!」
「それも一度は考えたんだが、福引券を置いてもらうために余所の店主の話しかけるのは、ちょっとハードルが高くてな……」
「どう考えても、今回あなたがやらかしたことよりは簡単だと思うんだけど……」




