金のなる木
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」
「どうした、声を潜めたりして」
「あまり聞かれたくない話だからよ。……あなた、金のなる木について知っているそうね?」
「ほう……念のために確認しておくが、お前が言うのは多肉植物のカネノナルキのことではないのだな?」
「ええ、もちろんよ。それならもっと大っぴらに話してるわ」
「そうか……どこで噂を仕入れたかは知らないが……確かに俺がその木を植えた当の本人だ」
「……! じゃあ、本当に実在するのね!! そんな夢のような木が!」
「そういえば、そろそろ実がなる頃だ。なかなか良いタイミングにやってきたな」
「ひょ、ひょっとして私にもその実を?」
「うむ。噂から俺にまでたどり着いた報酬だとでも思ってくれ」
「嬉しいわ! ありがとう! それで肝心の木はどこにあるの!?」
「慌てるな。分かりづらいところに植えたからな。場所を書いたメモを取ってくるからちょっと待っていろ」
「お願いね! ……ああ、怪しい噂話に大枚をはたいた価値があったわ! こんな幸運にあずかれるなんてね……!」
「……待たせたな。ほら、メモだ。あとこれを一緒に持っていけ」
「……? なにそれ、ハンマー?」
「これを使って思いっきり実を叩くんだ。お前の力ならきっと余韻ある音が響き渡ることだろう」
「それ金のなる木じゃなくて鐘の鳴る木じゃないの!!」




