本の中の世界に主人公として入り込める本
「本の中の世界に主人公として入り込める本に興味はないか?」
「……興味がないと言ったら嘘になるけど、もし自分の身に起こったらと思うとちょっと怖いわね……剣で切り開くような物語ならありがたいんだけど」
「そうか。その意見は参考にしよう」
「……!? まさか……そんな本を作っているとか言うつもりなの!?」
「そのまさかだ。といっても完成までもうしばらくかかりそうだがな。……少しは関心があるようだから聞くが、実際に体験してみたいと思わないか? 現状でも中盤あたりまで楽しむことはできるぞ」
「……ちゃ、ちゃんと無事に戻って来れるんでしょうね!? 万が一、本の中に取り残されるなんてことがあったら……!」
「安心してくれ。そういった危険はまったくないと断言できる」
「そ、そう……そこまで太鼓判を押してくれるなら……いやでもやっぱりちょっと不安……ああ、もう、好奇心には勝てないわ! 今すぐその本を見せてちょうだい!」
「いいだろう。持ってくるからそこで待っていろ。上質な物語をお前にプレゼントしてやる」
「……子供のころにそういった空想をしたことはあるけど、まさかそれが大人になった私の前に現実として現れるなんてね……世の中は分からないものだわ……」
「……待たせたな。これがその本だ」
「うわあ……ずいぶんと重厚な本ね。どんな世界が待っているのか楽しみだわ!」
「喜んでくれて何よりだ。まだまだ制作途中だが最終的にパラグラフ数は1000を超える大作になる予定でな。お前の意見を汲んで主人公は剣士という設定にしようと思う」
「それただのゲームブックじゃないの!!」




