薪ざっぽう
「お前は薪ざっぽうを手にして戦ったことはあるか?」
「ま、薪ざっぽう? 木切れみたいなやつのことよね? うーん……夜襲を受けた時、とっさに焚き火に手を伸ばして……ってことならあったけど、それもカウントしていいの?」
「もちろんだ。さすがに歴戦の冒険者だけあっていろいろと経験しているな」
「というか、薪ざっぽうなんて単語、実際に使ってるのを聞いたのは今日が初めてよ……」
「そうか。俺は薪ざっぽうという言葉の響きが好きなんだが、やはりあまり使われていないのか」
「それで薪ざっぽうがどうかしたの?」
「実はな……今まで薪としてまとめて売っていたものの中から、いくつかを薪ざっぽうとして商品化しようと思うんだ。もちろん武器のカテゴリーでな」
「……わざわざ武器として陳列するようなものかしら?」
「各人にとって手頃な薪ざっぽうはそれぞれ違うだろう? 一人一人、自分にぴったりの薪ざっぽうを選んでほしいんだ」
「そもそも薪と薪ざっぽうとの区別がつかないんだけど、具体的にどんな違いがあるのよ?」
「薪を武器として手に持つと薪ざっぽうになる。これが俺の判別方法だ」
「ずいぶんといい加減な判別方法ね……まあそれはそれとして、なんで薪ざっぽうを武器として売ろうなんて考えたわけ? 薪ざっぽうという言葉の響きが好きだから?」
「たしかにそれがメインの理由だが、サブの理由もある」
「へえ? どんな?」
「……薪は木切れを大量にそろえてやっと一つの商品になるわけだが、薪ざっぽうは木切れ一本ずつを商品にできるんだ……この意味が分かるな?」
「どう考えてもそっちがメインじゃないの!!」




