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新生月器ポスリア  作者: TOBE
覚醒編
51/88

ポスト湖畔の一時

 遮る物のない平原。地平線から日が昇る。


「寝ず番、ご苦労だ。ライナス」

「おはようトゥルヴレイ」


 神官が早くから起き出してきて、剣の素振りをする姿は、旅するうちに見慣れた光景であった。

 彼は目を細めて、ライナスの視線を辿る。


「日の出か」

「俺が居たところでは地平線から昇る朝日ってのは貴重だった」

「ああ、山国じゃそうだろうな」

「……」

「どうした?」

「いや、何でもない。それにしても綺麗だ」


 徐々に面積を広げる日を見つめ、ライナスは意外な言葉を継ぎ足す。


「でも、怖い」

「怖い?どうして」

「朝日が一つ昇る度、俺が俺で無くなるような気がして」


 突然、朝日が異質な物になったかのように、ライナスはそそくさと焚き火に目を移す。

 その台詞と表情が感傷的に見えたのか。


「寝不足で疲れているんだろう。火は私が見ているから少し休んで来い」

「ありがとう、だけどあまり眠りたくないんだ。だって……」

「ん?」

「い、いや、とにかく大丈夫だから心配するな」

「ならいいが、無理はするなよ?」


 だって、次に起きた時に、自分がどうなっているか、分からないから。

 トゥルヴレイに聞こえないように呟いた一人言はしかし、馬車から降りようとしていたジーナの耳には届いた。


「ライナス……」


 彼女の瞳には迷いのような揺らぎが浮かんでいた。




 剣が裂き、盾が弾く。

 森に戦闘音が響いていた。不死竜の棲む山に近付くにつれ、出現するモンスターはより強力になり、現在一行が交戦するは空中に浮かぶ、バルサユニットと呼ばれる木製の人形達。脚はなく、腕関節、頭部を見えない力で胴体に留めた、何かしらの科学を匂わす姿をしている。


「気を付けて。防御力もHPも結構高いわよ!」


 ジーナの忠告に応えるように、ライナスは目の前にダーツ盤を展開する。もしも現実世界でダーツを嗜む人が見ていたら、その後の行動を「ふざけてるのか」と咎めたであろう。

 ダーツ盤に向かったのは同時に放たれた三本の矢。しかも、その全てがど真ん中を射抜く。150のダメージが、残っていたバルサユニットのうち一体を粉々に砕き、ブルーノ隊長がヒュ~と口笛を吹いた。


「やるねぇ、ライナス」

「いや、やるってレベルじゃないですよ」


 トゥルヴレイは幾分悔しそうな、不貞腐れた表情で「アイアンシール」と、防御魔法をブルーノ隊長に放ち、そこにウルポックが素早さ上昇魔法「アクセラ」を重ねる。

 魔法の援護を受けたブルーノ隊長は流れるように一太刀、木製のパンチを盾でいなし、更に一太刀をバルサユニットに入れる。


「おらぁっ」


 ブルーノ隊長がさっと身を引くと、既に振り上げていたレイブンのバトルアクスが重い風切音を奏でた。当りどころが悪ければ必殺の一撃であるが、命中に難があるらしく、木の腕をはね飛ばすにとどまる。


「離れて!レイブン」


 止めはジーナの火炎魔法「フォティアストーム」。炎の渦がバルサユニットを包みこみ、可燃性の身体を焼き尽くす。一頻り暴れた渦が収まった跡には、黒い灰だけが空気を黒く汚していた。残り一体。浮いていたものが更に高度をあげ、ライナス達から距離をとる。


「逃げる気か?」

「いいえ、魔法を撃つ気よ!」


 ジーナの言葉に直ぐ様反応したライナスは、アイテムボックスから新たなダーツを取り出す。

 後端に光の線を帯びたダーツは、ボードの力を得ると真っ直ぐ飛び、空中でバルサユニットを縛り上げた。


「ヴェレタ!」

「了解です!」


 ライナスは光の線を思いきり引く。ヴェレタは地面を蹴り、斜めに下降してくる標的と、すれ違い様の一刀。

 カランカランカラン。

 剛剣が横一文字に胴体を切断し、最後の一体は地面に転がるただの木材へと成り果てた。

 戦闘終了。ブルーノ隊長の剣が鞘に納められ、キン、と音をたてる。


「いやはや、凄い戦力だね、こりゃ」

「特にライナスさんは凄いです。私と火力も殆ど変わらないじゃないですか。この分なら不死竜も二人がかりでやれますよ」

「いやぁ、それほどでもぉ~」

「……」

「なんだ、ウルポック。お前も俺の成長っぷりに驚いて声も出ないとか?」

「そうだね、元のライナスではあり得ない力だよ。こんなに戦えるなんて、まるで御伽噺に出てくる主人公みたいだ」

「なんだよ、なんか悪いことのように言うじゃねーか」

「世界を変えるか、自分が変わるか」

「あ?」

「呑み込まれては駄目だよ、ライナス」


 ――でないと「あんた」が消えてしまう。


「おーい、ライナス、ウルポック君、あまり離れないでくれよ!」

「はーいブルーノ隊長。今行きまーす」

「あ、おい、ちょっと待て。お前は一体」


 お前は一体何者なんだ。

 いつもの「ウルポックだよ」というお決りの台詞さえ、この時は返って来なかった。




 鬱蒼と木々が生い茂る森の中で、その泉の頭上に広がる星空は、一層の煌めきをもって一行を出迎えた。

 薄暗く、見通しの悪い道のりに神経を磨り減らした彼らが、ここを野営地としたのは当然の選択だろう。

 到着したのが遅い時間だったこともあり、食事もそこそこに床についたのが二時間程前。馬車は女子二人に譲り、男どもは焚き火の側で夜を明かす。ふと目を醒ましたライナスは、今日の寝ず番であるトゥルヴレイに話しかけた。


「誰か通ったか?」

「ジーナ殿だ」


 トゥルヴレイは短くそれだけ言うと、行き先を顎で示す。

 ライナスはくるまっていた毛布から抜け出すと、泉のほとりに向かった。

 泉は月の光を受けて、遠目には白く輝いて見え、周りを囲む草原の黒とコントラストを描いている。その境い目からちゃぷちゃぷと、水の跳ねる音が聞こえてきた。

 ジーナは足を膝下まで濡らし、泉の縁に腰かけていた。長いローブが捲し上げられ、露になった太股が艶かしい。しかし、ライナスはらしくもなく、彼女の手元に目を奪われた。

 掲げた両手が開かれると、無数の水滴が宙を舞う。刹那の宝石。一粒一粒に月光を閉じ込めたようなそれは、すぐに闇に溶け、消えてしまう。

 そして、ジーナは再び水を掬った。


「綺麗だ」


 繰り返される幻想的な風景に、自然と感想が漏れる。ジーナはニコリと笑みだけで返すと、また一掬い、光を空に散らした。

 ライナスはゴロリ、仰向けになる。満天の星空が視界一杯に広がる。しばらくすると隣で草の動く音がして、ジーナも後に続いたのが分かった。


「ライナスのいた所でも、こんな風に星が見えたの?」

「いや、俺の故郷じゃこんなに綺麗じゃなかったよ」

「あら、田舎の村って言わなかった?」

「ああ、そうだ。だから星も綺麗で……綺麗で……あれ、どういうことだろう」

「どうしたのライナス」

「何だか記憶が曖昧なんだ。きっとまだ寝ボケてるんだな。急に起き出してきたから」

「思い出せないの?故郷の星空を」

「うん。でもまぁ、いいよ。目の前に凄いのがあるし」


 カラカラと笑う、その横で。ローブの胸元を強く握りしめた手は、ライナスからは見えなかった。


「ライナスは、いつか帰っちゃうんだよね」

「そりゃあ、運命の女性が見つかれば帰るかもな」


 そこで、ニヒッと悪戯っぽい笑みがジーナの顔を伺う。


「俺がいなくなると寂しいか」

「まぁね」

「おろ」


 べっつに~。とか、調子乗ってんじゃないわよ。とか、そういう答えを想像していただけに、ライナスの口から拍子抜けの声が出る。


「あなたには色々助けて貰ってる」

「それは俺だってそうさ」

「うん、こんな風に助け合える人に出会ったのは、初めてだから」

「ジーナ……」


 ライナスは身体を起し、ジーナを見る。星空を眺める横顔からは、その台詞の真意まで読み取ることは出来なかった。

 焦げ付くような衝動が彼を突き動かす。


「前に言ってたよな。運命の相手は自分で決めるもんだって。やっぱり俺、お前が」

「それ以上は駄目」


 あ……。

 息を飲む音を最後に、辺りを静寂が包み込む。


「まずったな、焦りすぎたか」


 気不味い沈黙の後に出たのは、上辺だけは軽い口調。ライナスはポリポリと頭の後ろを掻き、立ち上がる。


「先に寝るわ。お前もほどほどにしとけよ」


 お休み。の一つも交わされずに、二人の距離は遠ざかる。隣の気配が消えるまで、上ばかりを見つめていた瞳が、ギュッと閉じられる。


「今、終わらせる訳にはいかないのよ、ライナス」


 横を見れば彼の後ろ姿はもうだいぶ、小さくなっていた。駆け寄って、その腕に自分の腕を絡める想像をしながら、彼女は「ごめんなさい」という呟きを、虫の声に紛れさせた。




 寝ず番のトゥルヴレイは、教典に落としていた視線をちら、と上げる。


「泣いていたのか」


 男が男に指摘されるのは、これは物凄く恥ずかしいものである。ライナスが慌てて涙の跡をゴシゴシ拭っていると、トゥルヴレイは表情を変えぬまま「お前でも悩みがあるんだな」と言った。


「悪いかよ」

「いや。相談なら乗るぞ?何しろ悩み事の先輩だ」

「力神の試練か」


 トゥルヴレイはただ黙って剣を持ち上げ「喉、渇かないか」と訊く。


「喉?あー、まぁな」

「さっきパンガの実を見つけたんだ。ご馳走するよ」


 足元の、小振りな椰子の実に似た木の実を掴み、空中に放ると、鞘から一閃、白銀の太刀が放たれた。

 地面に到達するやパカリと分かれた一つを拾い、トゥルヴレイはライナスに差し出す。


「ほら」


 受け取りながら、ライナスは驚く。


「すげぇな。斬れないんじゃなかったのか」

「HPが無いものならご覧の通りだ」

「成る程。あ、うめぇ」


 甘露に一瞬顔が綻ぶも、直ぐ様悩みを聞くに相応しいしかめ面が「でもよ、勿体ねぇよな」と言った。


「自分が一番分かっているよ。その歯痒さに耐えるのが力神の試練だ。そもそも儀式に成功する例が少ない上に、成功者の中でももっとも厳しい試練を課せられたのが私だ。得られた癒しの力も相応に大きかったがな」


 普通は特定の武器のみ封じられるのであって、トゥルヴレイのように他者へのダメージ全般に及ぶ制限は、他に例がないという。


「それってスキルなのか?同じ力神の試練という名前でこれほど効果にバラツキがあるのも変だろ」

「分からない。もしスキルだとしたら常時発動するタイプだろうからな。そういうのは教王国にでも行かないと調べるのは無理だ」

「そう言えば大僧正くらいだったな。鑑定のスキル持ってるの」


 RPGや異世界小説ではお馴染みのスキルが、この世界ではかなりのレアスキルらしい。そのせいで、自分のスキルに関しては何となく感覚的に察知するか、先例に習って特定するしかなかった。名前を意識することで発動するタイプは大体頭に浮かんできたりもするが、常時発動型は所持者でさえ正確に把握してないことがままあるのだ。


「あとは一部の精霊が持つという話だ」

「ウチのはそんな有難いやつじゃないからな。こいつはクッチャネというモンスターに違いない」


 ライナスはいつの間にか現れて、パンガの実をムシャムシャやってるウルポックを指差す。

 ムゥ。

 片眉を上げた不機嫌そうな表情がパンガの実から口を離すと、「持ってるよ」とぶっきらぼうに言う。そして、再びパンガの実にとりかかろうとしたところでライナスに取り上げられた。


「お前、本当かよ!」

「本当なんですか、ウルポック殿!」

「あ~っ。も~、返してよ!!」


 ゲシゲシとライナスの頭に体当たりを始めるウルポックを「まだたくさんありますから」とトゥルヴレイが宥める。

 結果、パンガの実の追加を条件に、二人は鑑定を受けることになった。


「じゃあ始めるけど、ちゃんと心を開くんだよ。強制的にステータスを覗けるのは相手とよっぽどレベル差がある場合のみで、それ以外は自分から見せようっていう意志が必要なんだ。そうだな、『どうか私のステータスを見てください、ウルポック様』って唱えるとしようか。さぁライナス、やってみて」

「おい、かえって心を閉じそうなんだが。様までつける必要あんのかよ」

「つべこべ言ってると土下座もつけるよ」

「はぁ、やれやれ。どうか私のステータスを見てください、ウルポック様。これでいいか」

「ダメダメ全然響いて来ない。ちゃんと心を込めて、『この哀れな下僕に崇高なる知恵をお恵み下さい、ウルポック様』って言うんだよ」

「台詞変わってんじゃねーか!」


 このような無為なやりとりが何回か繰り返された後。


「このゴミムシにも劣る負け犬に、ウルポック神のお知恵拝借賜りたく候」


 もはや卑屈なのか、崇めてんのかよく分からないところまで変化した文言をもって、ようやっとウルポック神は頷くに至った。


「よかろう」


 くっ、こいつ。

 ライナスはワナワナと震える拳をなんとか抑える。ぶっちゃけ心を開くというよりウルポックの匙加減だった気がするが、何はともあれステータス発表である。

 ウルポックの大きな目からミャーっと光線が出ると、空中に四角いウインドウが投影された。


名前 ライナス=フィリオン


LV21


称号 勇敢なる村の若者

   眷属器所持者


HP154

MP12

SP1000


力 45

守り 38

速さ 30


魔法 無し


スキル バトルダーツ(固定ダメージ)

    スタンボード

    ワイヤーボード

    早投げ

    同時投げ

    アイテムボックス


「これがライナスのステータスか。大体想像していた通りだな。SPがちょっと意味分からない数字だけど」

「いやいや待てよ。称号のところ見えないのか?」

「勇敢なる村の若者、別に変じゃないだろ。確かに今は王都に住んでるかもしれないが、称号ってのは周囲の認知によって変わるものだ」

「そうじゃなくてその下の……」

「下?何も書いてないぞ」


 トゥルヴレイの口調に、からかっている様子はない。


(そもそもそういう冗談を言う奴じゃないか。だとするとこの称号は俺にしか見えない?いや、逆にトゥルヴレイだけ見えないって線もあるよな。それにしても眷属器?なんの眷属なんだ)


「ウルポックは俺のステータス……」

「さ、次はトゥルヴレイさんね。トゥルヴレイさんは素直だから普通に願うだけでいいよ」

「それは忝ない、ウルポック殿」


 ライナスが確認する前に、ウルポックはトゥルヴレイの鑑定に入ってしまう。非常に気になるところではあったが、リアクションが無かったのが恐らく答えだろう。


(多分見えてないな。もし見えていても、黙っているからには教えてくれないだろう)


 この称号についての情報は得られないと結論付けたライナスは、疑問を抱きつつも、そのままトゥルヴレイのステータスへと興味を移した。


名前 トゥルヴレイ=グッドウィン


LV 28


称号 悩める神官

   第一王女の幼馴染


HP221

MP150

SP121


力75

守り68

速さ70


魔法 リペイン

   リポイズ

   セラピア

   サーナート

   アイアンシール

   アクセラ

   エレメントシール

   プラチナシール

   エクシフォッグ

   リパラライ

   ソルサウンド


スキル 運命神の特命


「な、なんだこのスキル」

「運命神……?力神ではなく?確かなのかウルポック殿」

「うん、間違いないよ。効果も見る?」

「出来るのか!?是非頼む」

「ええと、スキル名をピックアップしてっと」


 ウルポックがPCを操作する時のようにブツブツ言うと、運命神の特命という文字が点滅を始める。そしてしばらくすると、すぐ横に文字らしきものが羅列された。


「こ、これは!ボヤけて、読めない……」

「あちゃ~、こりゃロックがかかってるね。見えるようにするには運命神の許可が必要みたい」

「そうか、神がまだ私には早いと」


 期待していただけに、トゥルヴレイの肩がガックリと落ちる。その横で、ワハハハハと爆笑が起こった。


「成る程、運命神の特命か」

「ライナス、まさかお前、読めたのか!?」

「ああ、理由は分からないが俺の目にはバッチリ映っているよ」

「どういう効果なんだ」

「神が隠したものを俺がバラす訳にはいかないだろう。だが心配するな。運命神の特命というからには、時が来ればきっと分かる」

「ぐ……」

「一つ、これだけは言っておく。お前はヴェレタにとって必要な男だ。この旅についてきたのはそれこそ運命だったのさ」

「このスキルは、私は、姫の役に立てると言うのか」


 ライナスは腰をあげる。そして、後ろ姿で軽く手をあげると。


「ああ、俺よりもな」


 そう言って、自分の寝床に潜り込んだ。

 そうか、お前よりも。

 浅ましいと思いつつも嬉しさが込み上げてくる。トゥルヴレイはライバルだと思っていた相手に感謝を抱き、言った。


「お休み、ライナス」




 明くる朝、一行は仕度を終えると馬車に乗り込んだ。

 ああ、またあそこに戻るのか。

 ライナスは憂鬱を、森の暗い道のりのせいにしてみる。本当は勿論ジーナの件である。朝食の時に「おはよ」と笑いかけてきたのを、思わず目をそらしてしまい、ずっと自己嫌悪に苛まれているのだ。

 だがそれを仲間に悟られたくはない。 御者台のうしろで自分でも態とらしいと思うくらいの大あくびをしていると、ブルーノ隊長が苦笑の浮かんだ顔で振り向いた。


「よくないなぁ。寝ず番でもない人が夜更かしなんて」

「すみません。なんせウルポックが鑑定のスキルを持ってると判明したもんで」

「へぇ、そいつは珍しい」

「どうです、ブルーノ隊長も見てもらえば」

「いやぁ、俺はいいよ」


 ブルーノ隊長はいつものごとく、のっぺりとした口調で言うと、前を向く。そして顔が完全に見えなくなると、ボソリと付け加えた。


「俺には全部分かっているから」

「そ、そうですか」


 この人なら俺とジーナの間に何かあったこと、気付いているかもな。

 ライナスがタラリと冷や汗を流した所で、馬車は走り始める。この時の「全部」が、そのままの意味だったことを、彼はだいぶ後になって知るのであった。


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