プロローグ
青の星と緑の星。間に浮かぶ小惑星の一つに、一組の男女が背中合わせで座っていた。
彼らはそれぞれの本体とも言える母星を目に映し、ポツリポツリと語る。
「あの子を責めないであげてね。人一倍寂しがり屋……それだけだったんだから」
女に話しかけられた男は、頷きもせず、かと言って否定もせず「後悔しているか?」とだけ訊いた。
「そうね。私は民に、少し与え過ぎたのかもしれない。その点はあなたの方が正しいと思うけど、仕方ないわ」
だって愛してしまったのだから。
見えないが、背中の向こうで彼女が笑っている顔を思い浮かべ、男は「そうか」と嘆息する。
「それじゃ、みんなをお願いね」
女は立ち上がる。最後に目に焼き付けておこうと振り向けば、やはり寂しそうな視線が見上げている。
「やっぱり俺は……」
「ずっと一緒だよ。私とあんたはまた一つになるんだから」
手を引くと、男も立ち上がる。目を瞑り、最後のキスを交わす。
唇が離れると女はニコリと笑い。
「さよなら、テラ」
母星に向けて飛び立った。
残された男は緑の星に呟く。
「本当にこれで良かったのか?ルナ……」
対極の位置にある青い星。二つの惑星は異常に接近していた。
引力による衝突を、免れないほどに。