陰キャはペアを組みたがらない
他の人の書き方を見てみたくてランキングから読んでいたら、ジャンル別日間ランキング10位に自分の小説があって(゜Д゜)ってなりました…
たくさんのブックマークや評価、ありがとうごさいます!
やばい。
語彙力が幼児退行するくらいやばい。
完全に陰キャ生活デビュー失敗したわ…
だってあれだもん、クラス中の視線が俺に集まってるもん。
誰にも気にされないように過ごすつもりが、逆にクラス中に気にされるようになってしまったよ…
というかなんで俺に視線が集まってるってるんだよ?今他の人の自己紹介中なんだからこっち向いてる場合じゃないだろ…
「え、えっと…松本 香織です(チラッ す、好きなことはバレーです(チラッ あの、1年間よろしくお願いします…(チラッ」
お前も自分の自己紹介に集中しろ。
なんで一言ごとにこっち見てくるんだよ。
やっと全員の自己紹介が終わった。
そんな長い時間やってなかったが、ずっと視線を送られ続けられたせいで無駄に長く感じた。
「は~い、皆さんのことはよ~く分かりました~。まあ何人か個性的な人が居ましたが~、皆さん仲良くしましょうね~」
その個性的な人の中に俺が入ってないことを祈ろう。
「取りあえず~、自己紹介が済んだので授業の終わりまでやることがありませ~ん。なので今から、2人組を作ってお互い話しあってくださ~い。クラスメート同士の親睦を深めましょうね~」
たった今、前田先生に対する評価が0からマイナスに下がった。
自己紹介に続いて2人組を作りましょうだと?この先生は一見優しそうに見えるが、中身は陰キャを殺すことだけを考えている殺戮マシーンだったのか?
いくら恨んでも状況は何も変わらない。
一呼吸おいて俺はようやく辺りを見回す。
……もう8割方ペアが完成している。残りの2割は今すぐにでもペアが出来るだろうという状態だ。
そんな状況を見て、俺は心の中でガッツポーズをする。
これだよ、これ!
これこそが俺の望んだ状態だ!
自分だけあぶれることで俺が孤独であることに違和感を持たれなくなる。
自分から1人が好きだからと言って進んで孤独になりに行くのは俺の好きなやり方じゃない。
この不可抗力で孤独を強いられている、そう見られる環境が俺の理想だったのだ。
自分の理想の状態が作られた喜びで思わず笑みが出そうになるがぐっとこらえる。
端から見たら変人にしか見えないだろうが、今さら周りの目なんて気にしていない。
あぁ、やはり1人はいいなぁ。誰にも気を遣わず、遣わせず、何にも縛られないこの開放感!
こうなりたかったからあのような自己紹介をしたのに、なんで逆に周りからの視線を集めてしまったんだ?
う~ん…と考え込んでいた矢先、例のフワッとした声が俺の耳に響いた。
「おや~?柊くんと宮本さんだけまだペアを組めていませんね~それでは~、貴方たちもペアになってもらいます~」
なんだよ今忙しいんだ。
大体あぶれてるのなんて俺だけだしペアなんて組みようが…
…まて、宮本さん?
その人が知り合い~とか、そう言うわけでは無いんだが、ただこの人もあぶれていたんだなと驚いたのだ。
え?というか待ってこの先生、宮本さんとペアを組めって言った?
別に宮本さんが嫌いなわけではない。
むしろ宮本さんは他の奴らより格段に静かで、自己紹介の時だって…
「……宮本 理沙…暗い所が好き……よろしく………」
こんな感じで、余計なことを一切喋らない無口な人なのだ。
俺にとっては、下手にうるさい奴らよりはこういう無口でおとなしい人の方が断然好ましい。
自己紹介後もひとりだけ俺に無関心で、他の奴らと違って見向きもしていなかった。
なので俺は宮本さんのことを、自分に無関心でおとなしい、という俺の思い描いていた理想のクラスメート像そのものなのだ。
恐らくこれからの授業で今組んだペアを使う機会が多々あると思う。
宮本さんが俺なんかと組んだら迷惑でしか無いだろう。俺嫌われ者だし…
だからこそ俺は、宮本さんとペアを組むのを拒んでいるのだ。
「なんでお互いペアを組みたがらないのですか~?もしかして何か組めない事情でもありますか~?」
「いえ、そういうわけでは「なら大丈夫ですね~、では後は残り時間いっぱいまで話し合ってくださ~い」
く、食い気味にこられた…。
やはりこの先生は一筋縄では行かないな…
そして結局、宮本さんとペアを組むことになってしまった。
お互い無口なので、数分経ったのにまだ一言も発していない。
そして先に口を開いたのは宮本さんだ。
「……あの………」
何か続けようとしていたが、横から別の声が入ってくる。
「うわ、あれって宮本じゃね?」
「本当だ~、陰の女王じゃん」
「今あいつと組んでる男子、可哀想だね~」
「な~」
こんな陰口が聞こえた。
俺とは別の中学校から来た奴らの声だろう。
宮本さんは俺と別の中学校なので、中学時代の宮本さんのことは全く知らないが、彼女は中々厄介な扱いを受けているらしいな。
そう思った矢先…
「ねえ、あれって陰キャの柊だよね?」
「嘘?髪型とか全然違うし別人でしょ。」
「だよな。第一に柊はコミュ障ぼっちなんだから、自己紹介であんな流暢に喋れないだろ。」
「でも名前も性別も同じだけどなぁ…」
「メカクシ様が目を隠さなくなった…」
……そういえば、俺も陰口言われるような奴だったな。
どうやら厄介な扱いを受けていたのはお互い様らしい。
似たもの同士ってことなのかな?
「類は友を呼ぶ、か…」
やべ、思わず口をこぼしてしまった。
「…確かに……そう……」
意外な返答だった。
わりと失礼な発言だったし、まさか肯定されるとはな…
それに、宮本さんは表情こそ変えていないものの、不思議と悪い感じはしていなかった。
取りあえずなんか話しかけとくか…
「あ~、宮本さんって正直俺の自己紹介聞いてどう思った?客観的な意見を聞きたいんだけど…」
「…不思議な人……話しかけにくい人……表情が暗い人……」
おおかた予想通りだった。
しかし、話しかけにくい人と思ってるってことは、俺のあの自己紹介の意味をくみ取ってくれたのかな?
やはりこの人は俺にとっていい人だな…
「…でも……私も同じ……」
下を向いているので詳しくは見えないが、少しだけ宮本さんが微笑んだような気がする。
俺の友達はまだ出来そうにもないが、同類ならたった今見つかったかも知れない。
昨日と比べて更新頻度が少なすぎる…
こんな感じで、日によって更新頻度がコロコロ変わります。
なるべく1日1本は投稿していきたいですが、忙しいとそれさえ危うくなって来るので、ご了承頂ければ幸いです。