生まれ変わった柊康太、学校へ行く
自分で書いてて句読点が多い気がするんですけど、減らした方が読みやすいですかね?
俺は昔から朝は飯が喉を通らない体質なので朝は食べない。
朝飯を食べている妹をよそに高校に行くためのルートを何度も確認している。
心配性なのは散髪後も変わってないみたいだ。
気づいたらもう良い時間だった。
「じゃ行ってくるぞ、真由も遅れんなよ。」
「う、うん。」
そう言って俺は家を出て、篠田との待ち合わせの場所に5分前に着いた。
こういうときは篠田は必ず時間ギリギリに来る。
篠田が来るまでの空いた時間に13秒チャージをバッグから取り出して飲む。
この微妙な3秒をどうにか短縮できないかと試行錯誤しているが、世界の最先端技術を取り入れた新しいタイプの容器が使われており、今の人類ではどれだけ速くても必ず完食に13秒かかる設計になっている。
完全に最先端技術の無駄遣いである。
そうしている内に、篠田が家から出て来た。
「いってらっしゃ~い亜衣、ちゃんと学校までの道覚えた?」
「もう、それ聞いたの昨日と合わせて7回目だよ~。」
「あら、ちゃんと数えてるのね偉いじゃない。」
篠田と篠田母との微笑ましい会話が耳に入ってくる。
俺と違って篠田はなんも変わってないな~とか思っていたら、急に不穏な会話が聞こえてきた。
「ところで…今あの家の前に居る人って誰かしら?亜衣のお友達?」
「え…本当だ、誰だろうあの人…」
「でも同じ学生服着てるわよ?同じ学校の人だろうし、亜衣ちょっと聞いてきたら?」
「ええ!?私が行くの……」
ふむ?そんな奴が篠田の家の前にいるのか?しかし辺りを見た感じそんな人は居ないようにみえるが…?
「あの…失礼ですがどちら様でしょうか……」
そう言って篠田が聞きに来た相手は
…俺だった。
いや俺!?
「どちら様って…あなたと待ち合わせしてる柊康太ですけども。」
「「……え?」」
「え?」
篠田母にも驚かれてるんだが?
俺そんな容姿変えたつもりは……
あぁ、そういえば髪切ってたわ。
「え!!??あなた本当に康太!?」
「嘘!?本当にあの康太君なの!?」
親子揃って元気ですね…
「ええ、まあ、ちょっと髪型変えたあの康太ですけど。」
「あら~凄いわね!今まであんなに伸びてた髪が随分さっぱりしちゃって!」
「ほ、本当にあのコミュ障陰キャの康太なんだ…」
さりげなく貶されたが、事実だったのでぐうの音も出ない。
「…まあそれはそうと、そろそろ歩き始めた方が良いと思うが。」
「え?あっ!うん、そうだね!」
「あの康太君が見違えるほど格好良くなっちゃって、凄いわね~…」
ずっと呟いてる篠田母を置いて、俺と篠田は歩き始めた。
が、篠田がさっきからずっと視線をそらしている。かと思えば時々こっちをチラッと見てきてまたそらす。
「あの~俺の顔になんかついてる?」
「いやいやいや、なんもついてないけど…うん、ついてないよ!」
「そうか、なら良いんだが……」
やばい。
篠田との接し方も分かんねぇ。
今までどうやっていってたっけな?
取りあえず今はそんな悪い雰囲気じゃないし、しばらくこの振る舞いで様子を見るか。
「……質問がいくつかあるので聞いて良いですか?」
「唐突だなおい、別に良いけど。」
「まず一つ目!なんで急に一人称「俺」に変えたの!?昨日まで「僕」だったはずなのに!?」
「あ~……イメチェンだよ…多分。」
「なぜ答えが疑問型……」
だって俺も分かんねぇんだもん。
「二つ目!いつからそんな言葉に詰まらず流暢に喋れるようになったの!?」
「え?俺って前そんなに滑舌悪かったの?」
「滑舌じゃないけど、なんかこう、一言喋るごとに読点がつくような喋り方だったもん!」
「俺そんなコミュ障だったのか…まあ、あれだ。イメチェンだ。」
一言喋るごとに読点って…滅茶苦茶話すの遅いじゃん絶対。
「じゃあ三つ目!何で急に髪型かえたの!?」
「妹のためでもあるけど…うん、イメチェンだ。」
「さっきから全部イメチェンじゃん!?もっと他に理由あるでしょ!」
「とは言っても本当にイメチェンだぞ?そもそも俺はこんなことで嘘はつかん。」
「た、確かに康太は昔から嘘はつかないけど…でも今の康太は昔の康太とかけ離れてるから分かんない……」
これが俺にとっての普通なんだが、反応を見る限り昔の俺は全然違うタイプだったらしいな。
そこから少しぎこちない会話をしていたら、あっという間に学校に着いた。
距離が近いというのもあるが、お互い道を暗記していたので迷うことなく1直線にこれたからだろう。
校門を跨いで中に入ると、クラス表を配っていた。
それを見る限り、どうやら俺と篠田は別のクラスのようだ。
参ったな、俺は家族と篠田以外にまともに喋れる奴が居ないからな。このままだとクラスでの会話が一切無いまま1年過ごしてしまうことになる。
まあ、今年は運が悪かったんだろう。来年に期待だな。
「あ、康太とクラス別になっちゃったね。」
「そうだな、だから俺は高1はクラスでの会話が一切無いまま過ごすことになるな。」
「いやいやいや、さすがに友達1人か2人は作れるでしょ…作れるよね?」
「友達…?すまん、なんだそれ?話し相手なら分かるが…」
「康太が言うと冗談に聞こえないから止めてよ…」
ふむ、本気で分からないから聞いたつもりなんだが。
まあいいか。
そんな会話をした後、俺と篠田は各々の教室に行った。
教室に入ると、何となく見たことあるような面子がいる。
この高校は俺の行ってた中学校と近いからな、同じ中学出身が多いのだろう。
名前は1人も覚えてないが。
俺の席は運の良いことに一番後ろだ。
名前が柊なので窓際にはなれなかったが、ましな方だろう。
しばらく周りの様子を眺めてると、担任と思わしき人物が教室に入ってきた。
「は~い、1─C担当の先生になりました~
前田 優子です~。新米教師ですのでお手柔らかにお願いします~」
えらくフワッフワしてる先生が来たな、俺の嫌いな熱血系じゃなくて助かった。
それにしても小さいな?俺より15~20㎝ぐらい小さそうだ。
「は~い今先生を見て小さいと思った人は手を上げてくださ~い。今なら少しの減点で許してあげます~」
…恐らくこの発言でクラスの半数以上が減点をくらっただろう。
しかし、他の奴らからの評価は悪くないように見えるな。
前田先生か…このクラスで俺が唯一まだましだと思う人かもな。
「取りあえず~先生は君達のことを名前以外何も知らないので~、今から一人ずつ自己紹介をしていってくださ~い。名前と好きなこと、クラスのみんなに一言をお願いします~」
……前言撤回、この先生は駄目だ。
今の発言、他の奴らにとっては親睦を深めるきっかけになるかもしれないが、陰キャの俺にとってはただの拷問だ。
要するに前田先生は俺に死ねと言ってきたのだ。
さて、どうしたものか。
「じゃあまず俺からだな!野球部に入る予定の安藤 隆です!好きなことは野球です!取りあえず皆も野球部入ろうぜ!よろしく!」
OK、彼は俺が関わりたくないタイプだ。
熱血系は俺の中では敵になっている。どれだけいい人でも暑苦しかったらそれだけでお断りだ。
しかし、周りからの評価はこれまた高いようだ。
彼、安藤に感化され他の奴らも同じように自己紹介をこなしていく。
そしてとうとう自分の出番がまわってきてしまう。
仕方ない、俺もこいつらに合わせてやるか…
「は~い、じゃあ次は…柊君ね~」
「え?柊って、あの陰キャの?」
「メカクシ様だよメカクシ様。」
「でも、なんか雰囲気違うというか、別人みたいじゃない?」
なんか俺が言う前から騒がしいな、まあ気にせずやるか。
「柊 康太です。好きなことは1人で静かに過ごすこと。取りあえず、皆さんは俺に近づかない方が良いですよ。第1関わっても何の得もないので。そんなわけでよろしく。」
教室が途端に静まり返り、俺が椅子を引く音が響き渡る。
……あれ、もしかしなくても俺ミスった?
13秒チャージのくだりは深夜に思いついたのを入れてみただけです。
僕は10秒チャージすら飲んだことがありません。