2.ベンチの酔っ払い
野坂オートマタ美術館に展示されているオートマタ『ベンチの酔っ払い』の実演を見て考えたイメージ創作です。
人形の動きを表現しながらそこに自分のイメージを追加した作品となっています。
商売道具のストリートオルガンが壊れてしまった
男はどうにもならぬ怒りからワインを片手にベンチに座り込む
気付くと男はベンチにもたれて眠っていた
夢の中で彼の楽器は今日も良い音色を奏でていた
人々の歌声や笑い声
その声に興味を惹かれたネズミ達
これはかつて自分が見た光景
何故自分は生きる手段にこの商売を選んだのか
生きる術なら他にもあるのに何故なのか
男は生きる手段を選んだわけではなかった
男が選んだのは自分の夢だった
生きる術なら他にもあるが、自分の夢はこれだけだった
諦めきれずに小銭を貯めて、ストリートオルガンを買った
なのに今、壊れたからと言って楽器を捨てて他の道を行くのか
ただ楽に生きる事など誰にも出来ない
なのに夢さえ捨ててしまったならば生きる喜びはどこにあるのか
目を覚ますと男はベンチにもたれかかっていた
目の前には壊れたままのストリートオルガン
しかし彼の夢までは壊れてはいないようだった