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2.白雪邸殺人事件

リーサ

「続いて第二弾を飾る『白雪邸殺人事件』です」


まゆゆ

「登場人物の全員が本名を名乗らないという、前代未聞のとんでも作品ですね」


リーサ

「いちおう、二階堂真澄さんだけは本名なんじゃないでしょうか?」


まゆゆ

「ふん、どうだか分かりませんよ。なにしろ、戸籍を調べられるわけでもなし。偽名はやりたい放題です」


リーサ

「まあそこは置いといて、この作品の特徴ってなんでしょうね」


まゆゆ

「ずばり、絶海の孤島のクローズド・サークルに招待された、見ず知らずの男女七名の間に展開される、謎めいた連続殺人事件ですね。

 シチュエーションは、ミステリー作家の女王、アガサ・クリスティの代表作『そして誰もいなくなった』の完璧なるパクリです」


リーサ

「おまけに招待主が最初の晩餐で姿を現わさないところまで、しっかりパクっちゃってますよね。

 まあ、この作品のパクリといえば、世界中の作家がしていることなので、もはや、お菓子作りの基本レシピの一つみたいなものなんですけどね」


まゆゆ

「おまけに、原作のインディアン像を真似て、白雪姫と七人の小人の陶器像まで用意する徹底ぶりですね」


リーサ

「それがもとで、登場人物のひとり一人を小人に対応させなくてはならなくなり、挙句の果てに、恭助さんを無理やり花粉症に仕立て上げちゃったわけですから、作者の苦労が垣間見られますね」


まゆゆ

「そのほかの作品では、恭助さんに花粉症の症状が見られないわけですから、この件に関して、作者はさぞかし後悔しているらしいという噂まで立っています」


リーサ

「まあ、それは置いといて、いきなり出だしに、興味深げな『白雪邸見取り図』が出て来るんですけども」


まゆゆ

「あの図の制作には、作者は相当に苦労したみたいですよ。なにしろ本人は、無類の方向音痴かつ美術音痴ときていますからねえ」


リーサ

「建築学の才能もゼロですね。一階の中央にある、付け足したような不可思議な共同トイレの存在が、作者の混乱ぶりを物語っています」


まゆゆ

「どうやら、見取り図の完成寸前になって、ようやく気付いたみたいですよ。この屋敷にはトイレがないことを……」


リーサ

「実際、お風呂もなかったのですけども、それは各個室に個々に装備されているということで、無理やりごまかしています」


まゆゆ

「いまさら共同浴場を作るスペースは建物内になかったわけですね。ていたらく以外のなにものでもありません」


リーサ

「とはいっても、邸内の光景描写にはかなり力を入れているみたいですねえ。何かモデルがあったのですか?」


まゆゆ

「ここで小馬鹿にされてはならぬと、ここだけは、作者はあれやこれやと一生懸命調べたみたいですね」


リーサ

「白雪邸のモデルとなったお屋敷は『旧岩崎邸』、三菱財閥岩崎家の本邸なのだそうです」


まゆゆ

「そこで繰り広げられる謎の密室殺人事件。舞台としては最高です」


リーサ

「それだけじゃないですよ。この作品は舞台設定だけは、とことん、過去の名作をパクりまくっているわけです」


まゆゆ

「ほう、まだなにかあるんですか」


リーサ

「はい。第一の殺人現場は完璧に閉ざされた書斎だったわけですが、なんとその部屋の中に、被害者以外に、お酒に仕込まれたしびれ薬を飲んで、気を失って倒れている生存者がいたのです!」


まゆゆ

「それって、カーター・ディクスンの『ユダの窓』の完全なパクリじゃないですか?」


リーサ

「作者は『ユダの窓』の舞台設定を、最高に美しいシチュエーションだと、高く評価しておりまして、つい真似てしまったということですね」


まゆゆ

「ついでにトリックまでパクっちゃたんですか?」


リーサ

「いえいえ、そのような恐れ多いことは……。さすがに、メイントリックは別物にしてあります」


まゆゆ

「じゃあ、この作品の密室のメイントリックは完璧なんですね?」


リーサ

「いえいえ、とても完璧なものとはいえません。

 イズレイル・ザングウィルの『ビッグ・ボウの殺人』や、ガストン・ルルーの『黄色い部屋の秘密』などの古典的名作から派生した密室トリックの一つを使用しています」


まゆゆ

「この解説書を書くにあたって、作者が調べ直してみたところ、クレイトン・ロースンの『帽子から飛び出した死』の中で、本作で使用した密室トリックが使われているそうですね。残念ながら作者はその作品を読んだことがなくて、また聞き情報に過ぎませんけど」


リーサ

「ぶっちゃけこの作品、十人の読者がいれば、八人は犯人を当ててしまうのではないかと思います」


まゆゆ

「えっ、そうなんですか? じゃあ、なんにも面白味がないじゃないですか?」


リーサ

「ただ、この作品は小トリックがそこそこ冴えていると思います。あくまでも、作者談ですけども」


まゆゆ

「小トリックですか?」


リーサ

「はい。作者がもっともお気に入りなのが、香を炊くトリックですね。

 犯人はどうして殺人現場で香なんか炊いたのか?」


まゆゆ

「なるほど、面白そうなトリックですね」


リーサ

「それに、登場人物の一人であるクリンの話し言葉を、作品の執筆の最中にもかかわらず、大幅変更しているんですね」


まゆゆ

「標準語を話していた人物を、地方の方言でしゃべらせるようにしたわけですね」


リーサ

「そうです。そしてその意味は、解決編の最後になって解き明かされるわけです」


まゆゆ

「登場人物の話し言葉も、ミステリーのトリックになり得るってことですね」


リーサ

「それから、リンゴのトリックもあります」


まゆゆ

「ほう、リンゴのトリックですか?」


リーサ

「作品を読めば分かりますが、作者自身が左利きであるが故に、思い付いたトリックだそうです」


まゆゆ

「つまり本作は、ひとつ一つはしょぼいトリックですけども、それらがたくさん集まって構成されているわけですね」


リーサ

「そうなんです。それと、解決編が、出題編と同じくらいのボリュームがあって、クライマックスに向かって徐々に盛り上がっていく雰囲気が、とてもよくできている、とのことです。これもあくまでも作者談に過ぎませんけどね」


まゆゆ

「作者としての出来の評価はいまいちだけど、読者からの総合評価が高い理由が、そこら辺りにありそうですね」


リーサ

「やっぱり、分かりやすいってことが、一番のメリットなのでしょうね。この作品の」


まゆゆ

「ということで、クローズド・サークル系ミステリーの『白雪邸殺人事件』。

 どうぞお楽しみくださいませ」


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