表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

和解

仕事が終わり、拓磨は人混みの流れに沿い、繁華街へと向かっていた。


昼休みに友也から連絡があり、近くの居酒屋で待ち合わせる事になったのだ。


店内に入ると、奥のテーブルに友也の姿があった。


こちらに気付くと、苦笑いを浮かべながら手を上げる。どうやら既に、一杯やっていたらしい。


「待たせたか?」


取り敢えずビールを注文すると、向かい側の椅子に腰を下ろす。


「いや、俺もさっき来たばかりだから」


「なんだ。だったら待っていても良いだろう」


軽く文句を言うと、友也は「別に乾杯なんかいらないだろ」と、少し気恥ずかしそうにぼやいた。


その時タイミング良くビールがきた。


「まぁ、それもそうだな。乾杯」


軽くジョッキを持ち上げると、一気に飲む。


「仕事の方はどうだ?順調か?」


23歳の友也は、まだ新入社員だった。拓磨とは違う業界だが、それなりに業績も知名度もある中小企業だ。


「てか、何で急に飲むなんて言い出したんだ?今まで一回もそんな事言ったことないだろう」


兄弟仲は悪くはないが、上京してからは多忙などの理由もあり、顔を合わせるのも久しぶりだった。拓磨はビールを飲み干すと、わずかに笑みを浮かべながら言う。


「実は、結婚するんだよ」


「えっ」


今まで互いにプライベートの話はしていなかった為、友也は目を丸くした。


「結婚?いつの間に彼女作ってたんだよ」


「会社の同期だよ。来週の休みに、取り敢えず父さん達に報告しに行く。その後両家の顔合わせとかもあるから、先に言っておこうと思ってな」


今日会社に行き、真っ先に優香に声をかけた。どうしてもと言うならば婚約破棄も仕方ない。


だが、どうしても理由を知りたいし、できる事ならば改善したいと。


彼女ももともと断固破棄と決めていたつもりではないらしく、すぐに話し合いになった。


「実は私――妊娠しているの」


その言葉に、拓磨はやはりなと思った。


タイミング的に、彼女が拓磨の隣人への態度を見て、結婚を考え直そうと思ったのはわかっていた。


やはり、拓磨の子供への意識や扱い方を見て、このまま結婚をして子供を育てていけるのかが不安になったのだ。


拓磨はすぐにその事を謝罪し、今までの『欠点』について改善を約束した。


そして無事に婚約は継続され、改めて来週の休みに拓磨の実家へ行くこととなったのだ。


「でもまぁ、良かったじゃん。俺にもちゃんと、義姉ちゃんを紹介してよ」


「あぁ。今度は優香も連れて、3人で飲もう」


笑みを浮かべると、なくなりかけたビールで、改めて乾杯する。


不思議と今でも、あの夢の記憶は継続され、鮮明に思い出せる。


きっとこれからもこの記憶は薄れる事なく、自分の子供が生まれてもずっと続いていくだろう。


あの光景は脳が見せたバーチャルではない。


理由はわからないが、全て生まれから自分が体で経験した、過去の『現実』なのだから。


終わり

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ