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吾輩は黒猫である

作者: 黒猫ぺろり

吾輩は黒猫である。


名前なんて物は人間が勝手に付ける物であり

吾輩は「吾輩」である。強いて言えば「黒猫」である。


そんな吾輩は野良猫ではあるが、

とある家に「居候」をしておる。


野良猫とはいえども居候としての「自覚」はあるつもりであり

チンピラのような「ドラ猫」とは違い、吾輩のように「高尚」な猫は

決して人間に迷惑などかけないのである。


と、吾輩は思っておる…。


ある日、いつものように縁側で日向ぼっこをしておると

家の人間がいつもより騒がしいことに気付いた。


せっかく、吾輩が気持ちよく眠りかけておったというのに…。

人間とは全く以てして落ち着きがなく困る。


眠気が覚めてしまったので、

仕方なく吾輩は日課であり趣味である

人間観察を行うことにした。


どれだけ観察しても理由はとんと検討が付かぬが、

しかし、見れば見るほどにいつも以上に騒がしいと感じるのである。


いつもは家でほとんど見かけない

「お父さん」と呼ばれている人間も慌ただしく動いておる。


「お母さん」と呼ばれている人間は「子供」というらしい

小柄な人間にいつも以上に指示を出しておる。


掃除機というらしい不思議な物体もいつも以上に

鳴き声をたてておる。吾輩はあの鳴き声が大嫌いである。

どうにもこうにも「威嚇」されておるような気がして

落ち着かないのである。あぁ、掃除機とやらは大嫌いだ。


日が落ちた頃、いつもならば家の者が落ち着く刻限であるが

今日だけはなにやらワイワイと明るい声で騒ぎ始めたのである。


いつもなら淡々と餌を食べておる家の者も

今日は何となく楽しそうに見えるから不思議である。


吾輩はいよいよ人間という生き物が

分からなくなってきた…。


その時だった、お母さんが吾輩にいつもより高い声で

機嫌良さそうに話しかけてきた。


「ノラちゃんにもご馳走、ほらお刺身よ!」


そう言いながら、チラシという変なヒラヒラした物を床に敷き、

「刺身」と呼ばれる吾輩の大好物を振る舞ってくれた。


いつもはカリカリした餌だというのに

今日に限っては吾輩の大好物である…。


何が起きているのかますます

分からなくなってきたのである…。


しかし、毎日こうだったら良いのにと思いながら

吾輩は久々の刺し身を堪能した。


実に美味であった。


そして、夜は更けて行き、

今度こそゆっくり眠ろうと思った時であった。


外から「ゴーン、ゴーン」という音が聞こえた。

家だけでなく外までも騒がしい…。


一体、今日は何が起こっておるのだ。


全く以てして人間とは不可思議な生き物である。

吾輩は「ゴーン、ゴーン」という音を子守歌にして

無理矢理、眠ることにしたのであった。


翌朝、縁側で暖かい朝日を身体に受け目が覚めた。


昨日はあんなに騒いでおった人間達も

いつものように静かに動いておる。


だが、妙に「清々しい」表情をしておるのだけは

吾輩には理解できなかった。


まぁ、そんな事は黒猫である吾輩には関係ないことである。

吾輩は()()()()()()()毎日を淡々と過ごすだけである。


(了)

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