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真実の愛  作者: 瀬名 杏子
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私でよろしいのですか?


「思ったより、元気そうだな」


「私よりお継母様の方が衝撃が大きかったようですわ」


カイル様は、わざわざ私に会いに公爵家を訪ねて下さいました。


「王宮では人目がある。それに俺は公爵より先にアンネローゼに直接話したいと思ってね」


カイル様、いつもと雰囲気がどことなく違いますね?


「改めて俺はアンネローゼに婚約を申し込みたい」


「ですが、私はミシェルの代わりに公爵家を継ぎますのよ、カイル様」


「俺が臣籍降下する」


「王位継承権を放棄なさるのですか?」


「第二王子チェイスと第五王子タイラーがいる」


「ええ、まあそうですが…?」


カイル様は、小さくて可愛い小動物のようなご令嬢か、色白ぽっちゃり系のご令嬢がお好きかと思っておりました。


私で本気でよろしいのかしら?


私は令嬢にしては背が高く、在り来たりのブルネットの髪とブラウンの瞳、威圧感のある美人と揶揄されてますわ。


パステルカラーのドレスが似合わなくて切ないです。


「俺との未来を考えてくれないか、アンネローゼ」


カイル様が私の腰をさりげなく引き寄せます。


チェイス様と違って、カイル様は真面目な方ですが、意外と慣れてらっしゃるような?


やはり、カイル様もそれなりにご令嬢方とお楽しみになられていらっしゃるのかしら?


カイル様は短髪の精悍な顔立ちで、目力のある鳶色の瞳で射抜かれたいとご令嬢方に人気がありますの。


「重鎮達が反対なさるのでは?カイル様は国にとっては大事なお方、すぐにお返事は出来ませんわ」


「ゆっくり考えてくれ。俺はアンネローゼを必ず幸せにするよ」


カイル様は私の手の甲に優しく口付けます。


思わずカイル様は何か悪い物でも召し上がったのではないかと考えてしまいました。


カイル様の横顔をじっと見つめながら腹を探ります。


カイル様は評判の良い方ですが、優等生過ぎるところが気になります。


私はカイル様の幼馴染と言っても差し支えありませんが、あまり感情を表情や態度に出さず、わかりにくいお人柄です。


おそらく、カイル様も私に対して恋愛感情はないでしょう?


臣籍降下して婿入りする相手としてフォーセント公爵家は遜色ないというところでしょうか?


驚きましたが、カイル様との結婚は悪くないですわ。


王太子の婚約者という立場上、宝石やドレスなど高価な贈り物は受け取りませんでしたが、カイル様から折につけお花やお菓子は頂いていました。


カイル様と結託して、第五王子タイラー様を推せば良いのです。


第五王子タイラー様はまだお若いですが、あのしたたかさは祖父の宰相譲りなのでしょう?


あの無能な子沢山が唯一の取り柄の陛下の実子とは、とても思えません。


第二王子チェイス様は、宰相が潰してくれますわね。



カイル様をにこやかにお見送りして、今日は午後から登城しなければなりません。


「お嬢様、お茶を淹れ直しましょうか?」


「エマ、少し甘めでお願い」


侍女のエマは料理長の娘で私の妹のような存在です。


「奥様は本当に領地に引き込もられるのですか?」


「私もしばらく静養も兼ねて保養地で過ごされるようにお勧めしたのよ」


お継母様はすっかり気落ちされています。


「最近は、奥様も態度を軟化されていらしたのに」


「ミシェルが公爵家を継ぎ、私が王太子妃になればフォーセント公爵家は安泰のはずでしたわ」


叶わぬ夢でした。


「ミシェル様は又従姉妹のブルック王女様とご婚約されると思ってました」


「仲が良かったものね。兄妹いえ姉妹のような感じだったのかしら?」


お継母様がブルック王女にすり寄ってましたね。


私が王太子の婚約者なので、ブルック王女がフォーセント公爵家に降嫁すれば、貴族間のパワーバランスが崩れます。


お継母様には何度ご説明してもご理解いただけなかったのですが…。


「お嬢様の代わりにどなたが王太子の婚約者になられるのでしょうね?」


「婚約者候補筆頭は、アザレア・アズベリー侯爵令嬢ね」


今日の紅茶は、花のような香りがします。


「アザレア様は、まだ10歳では?」


一度王宮でお見かけしましたが、可愛いらしいご令嬢ですわ。


「15歳のタイラー王子が王太子にえらばれればまだバランスはいいけれど、アズベリー侯爵は宰相の政敵。20歳のチェイス王子か19歳のカイル王子では、確実に正妃より先に側妃が王子を産むわね」


まあ、貴族間の婚姻では10歳差など珍しくありませんが…?


「リーナ・シュルタント侯爵令嬢は?」


「先月、婚約が決まったのよ」


「リーナ様は14歳でしたか?今まで婚約者がいない方が不思議でしたね」


私と違ってコロコロ表情の変わるエマは、可愛いです。


エマがいてくれたら寂しくないので、お父様もついでに領地に引きこもって貰いましょうか?


「シュルタント侯爵は、リーナ嬢をタイラー王子の婚約者にしたかったのではないかしら?」


「侯爵は今頃、歯ぎしりしているのでは?」


「リーナ嬢は賢いけれど、後宮を束ねる器ではないわ。学者肌なのよ」


「本の虫ですものね」


王妃教育に疲れきった私は、分厚い本を見るだけで頭が痛くなります。


「リーナ嬢のお話は楽しくて、またお茶会にお呼びしたいわ」


「そうですね、次回は焼き菓子でもご用意しましょうか?」


「楽しみにしてるわ、エマ。お化粧を少し直した方がいいかしら?」


「テカリを抑えて、軽くお粉をはたきましょうか?」


さて、お化粧を直したら久しぶりの登城です。

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