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転校生

「はぁ…」


あの後リビングに戻ったら、朝の事をまた母さんに怒られた。

いつもガミガミ言われるのが嫌で逃げてしまうけれど、今日こそは真面目に母さんの目を見て話を聞こうと思っていたーー。

そう、思ってはいたんだ。



だけど僕はまた、嫌なことに蓋をした。

学園を理由に、逃げたのだ。


(まぁ、学園に行かなければならないのは嘘ではないし、理由でもなく義務だから…)


嘘では無いことを良いことに、僕はまた僕自身に言い訳をする。






「よっ!ルミエール」


通学路である綺麗にされた石畳の上を歩いていると、後ろから呼び止められた。


「やぁ……ジャック……」


僕を呼び止めたのは、幼馴染みで同じクラスのジャック。

僕の事を何でも知ってはいるが、デリカシーがない。

それに、彼の事が嫌いになった。

高等部になってから特に。


「どうした?浮かない顔して」


ジャックはニヤリと笑い、僕の肩に腕を回した。


「……別に」


構って欲しくなんてないのに、いつも僕にまとわりついてくる。

良い加減、こいつとの縁も早く切りたいよ……。






ーー駄目だ、弱音を吐いていては。

早くこいつよりも優秀な人間になって、調子に乗らせないようにするんだ。



……大丈夫、僕は『ブランの末裔』だ。

何も心配する必要は無い。

いずれは、兄さん達の様に力だって目覚める。






だから、大丈夫だ。

安心しろ、自分。






「なぁ、悩み事があるんなら言えよ。ルミエールの大親友にして、学年1位のジャック様がお前の力に必ずなってやるって!」


「はぁ……。だから、大丈夫だってば」


コイツは……。

呆れてしまい、わざと聞こえるように溜息を吐いた。




僕はコイツの名前を聞くのが、3番目に嫌いだ。

聞いただけで吐気すらするのに、こうやって肩に腕を長時間置かれていたら、本当に吐いてしまいそう。




「じゃ、もう学園に着いたから」


僕は学園の門の前で、ジャックの腕を払う。


「なんだよ、釣れないなぁ」


早歩きで学園内の建物に入って行く僕をジャックも後ろから追いかけて来る。


「学園なんだから、もっとビシッとしてないと。先生達に見られてる」


気にしない振りをして歩みを進めていたが、ジャックが教室の前まで僕の後ろをくっついくるので、我慢出来なくなった。

足を止め、ジャックに顔を近付け小声で言う。




数人の教師が、僕らを見ていたから。




「あぁ……なるほどね……」


ジャックは周りを一瞥すると、頷いた。


「ジャックが物分り良くて、助かったよ」


そろそろ吐きそうだったから助かった……。

ジャックから離れた僕は、心からそう思う。





「おはよう、ジャックと……ついでにルミエール」


僕達が教室に入ると、クラスメイト数人が挨拶してくる。

僕はついで。

いつもだから慣れている。


「おはよう……」


もう構ってられない。

嫌味なクラスメイトと無理矢理会話を広げるぐらいなら、勉強した方がマシだと判断した僕は、自分の机に座った。


「何アイツ……なぁ、ジャック。もうルミエールとつるむの止めろよ。皆噂してるぜ?『ブランの末裔』の恥さらしだって」


そんなの知っている。

僕は一家の恥さらしだ。

あの『ブラン』に泥を塗るような……。


「何言ってんだよ?お前らが『ついでに』とか言うから、ルミエールが拗ねちまったんだよ」


ジャックは僕の事を庇っているのか貶しているのか分からないけど、こういう所“だけは“嫌いじゃない。


「まぁ、ジャックが言うのならそうなんだろうな……」


4人グループの1人だけが頷いた。





嘘付け。

そんなこと微塵も思ってない癖に。





「皆さん、おはよう!」


ジャックの知らない所で、僕と奴は睨み合っていたが、クラスの担任であるミシェル先生が現れたからだ。



お淑やかな話し方から、育ちの良さからくるものだと分かる。


「「「「「おはようございます、ミシェル先生」」」」」


クラスの全員が声を合わせ、ミシェル先生に朝の挨拶をする。

それを僕は、誰にも気付かれないように口パクで言った振りをした。


「ホームルームには少し早いけれど、皆さんに新しいクラスの仲間を紹介しますーージャンティー、入ってらっしゃい」



ジャンティー?

男かな?



この学園に転校生なんて滅多にないから、男であっても女であっても、皆嬉しそうにソワソワしている。


「初めまして、ジャンティー・トンプソンといいます。皆さんと早く仲良くなれたらと思っています。宜しくお願いします」






息が止まりそうになる。










ーーあぁ、また逢えたね?

君を素敵に殺してあげるから楽しみにしていて?

そしたら、僕達は今度こそ永遠に一緒にいられるから。






僕の身体(中)で、あの夢の男の声が聞こえる。

今までだったら、歪んだ男に吐気すら感じていたのに……。

今回だけは違った。






彼女が視界に入った瞬間に、僕は歓喜した。

やっと探していた相手を見つけたように、最愛の人間が現れた時のように。



実際は、最愛の人なんか僕には知らない。

でも、あの男は言う。






“やっと見つけた“と。






初めまして、僕の最愛の人。

僕はニヤリと笑った。

















転校生は、女の子だった。

おはようございます。

爽崎和生です。

3話目を上げるのに時間がかかってしまいましたが、新しい登場人物が2人追加されました。

これからも宜しくお願いします。

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