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壊れた男の夢

君が望むのならば、僕は君に罰せられよう。

僕が君を思うならーー。






君を殺してあげよう。

君の綺麗な血は、きっと素敵な口紅になって君が一層美しさを放つから…。














「おはよう…」


僕は朝起きると自分の部屋を出て、一目散に両親がいるリビングへ駆け込んだ。


「お前は全く…身支度を整えてからリビングに来なさいと何度言えば分かるんだ」


リビングに入り両親がちゃんといることにホッとした。

けれどそんな僕とは違い、父親は僕の姿を一瞥すると呆れた表情をして、また新聞に目線を戻す。

そのまま文句を言われた。


「もう……ルミエール、朝から走らないのっ!」


母さんだけは僕をしっかりと見つめて、怒ってくれた。


「……うん、ごめんなさい」


いつもと変わらない……。

僕は安心した。


「元気なのは悪い事じゃないのよ?

でもね、時と場合を考えて行動しないと、お兄ちゃん達みたいなエリート官僚になれないわよ?」


うわっ。

また、その話?


僕はゲンナリした。

『お兄ちゃん達』という言葉は、僕が二番目に嫌いな言葉だ。


「わ、分かった。お母さん、僕着替えてくるから……」


しょうもない話になんか付き合ってられないね……。

僕はリビングから慌てて出る。







「本当に忙しない奴だな……」


「えぇ……あの子、お兄ちゃん達みたいに立派な官僚になれるか心配だわ……」


そうやって、自分を優秀な兄達と比べられてきた僕の気持ち分かる?

確かに僕は軟弱で、ハッキリとした発言ができないし、学校での成績だって悪い。



家は名門だからと言われ、毎日勉強漬けにされても優秀ではない僕は何処に居たって、肩身が狭いよ……。



けれど、こう毎日比べられていたら肩身が狭いのは当たり前だろうとも思う。

これでまだ、精神にまできていないのだから褒めて欲しいものだ。


僕は階段をズカズカと上る。






ーーまたあの夢を見てしまった。

あの恐ろしく、残酷な人間が出てくる夢を。

人が殺されるのは、夢であっても良い気はしない。

だから、16歳にになった今でもみっともなく両親の姿を探してしまう。

見つけたら、自分が安心できるから。









僕が人が死ぬ夢を見たのは、いつからだったか覚えていない……。

物心ついた頃から、もう何十回ーーいや、何百回を超えるほど見ていた。



僕の意思なんて関係なく見せられる夢は、やけにリアルで気持ち悪い。



殺される者は、老若男女様々。


殺す男は嬉々として人を殺し、幸せそう笑うのだ。




『また僕の為に命を捧げてくれてありがとう』



男は毎回言っていた。

毎回そこで目が覚めて、怖くなってリビングまで走る。

僕はまだ死にたくない……。


怖かった。

夢の出来事の筈なのに、僕は夢の男に殺されるのではないか、と。



けれど夢なのだから、本当に殺される事なんて無かった。



「はぁ……もうあの夢見たくない……神様勘弁してよ。僕が何か悪い事をしたならば、謝るから」


最近は昔に比べ、夢を見る頻度が増えた。

このままずっと見続けたら、おかしくなってしまう。

……毎日なんて見たら、きっと僕はノイローゼになってしまうだろう。










僕は学園指定である紺色の制服を纏うと、最後は白い腰までのマントを羽織る。


「もうあんな夢見ませんようにっ!」


鏡の前に立って身嗜みを確認するが、鏡の中の自分と目が合う。


「何か文句でもあるの?」


鏡に映る不貞腐れた自分の顔を睨み付けてから、またリビングへ戻った。

こんにちは。

爽崎和生と申します。

寒くなってきましたね。

私は風邪を引きましたが、皆様は気を付けてお過ごしくださいませ。

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