7、丸くおさまっても兄を忘れちゃいけない
一段落。今回は短いです。普段の半分くらい。お願いします。
「メティアはもう私達の気持ちを分かってくれたわ。次は、私達の番じゃないかしら?」
「え」
「えっ?」
お母様のお言葉に、お父様、次いで私が声をあげた。
(今、お母様はなんと)
自分の心が表情が、段々と期待に染まるのがわかる。
「えっと、シェリア、それは……どういう……?」
「だから、私達も、この子の気持ちを解ってあげましょう?」
私は逸る自分を抑えながら、うずうずと両親を交互に見やる。
「……つまりそれは……」
「えぇ、そうよお。少しは魔法の勉強も、許してあげない? メティアなら大丈夫よう。だって私達の娘よ? ね? そう思わない?」
(もしかして、もしかして……!)
今、私の気持ちのパラメーターはぐんぐんと上昇し、今にも振りきれそうだ。
長年――とは言ってもまだ五歳というツッコミはおいておいて――の思いが、ついに叶うかもしれない。しかしこんなに嬉しいなんて、予想以上だ。
「……メティア、そんなに魔法が学びたいかい?」
お父様がゆっくりと私と目を合わせて、恐る恐る泣きそうな顔で尋ねるが、その表情も興奮した私の目には止まることはなかった。
「はい‼」
元気に、輝かんばかりの笑顔で即答した私に、お父様は希望を打ち砕かれたようで、少しだけ項垂れ、諦めたようであった。
さらに私は続ける。
「……だけど、よろしければ……たまのお休みには、私と遊んでください、お父様」
「……ッメティア‼ 私のお姫様! 勿論だよ、お父様と遊ぼうね……!」
伺うようにお父様の目を見上げた私は、涙を流さんばかりに喜ぶお父様を見て少し大袈裟じゃないかと思ったが、まあお父様はやはり可愛いと、そうも思った。
「メティア、お母様とも遊ぶの、忘れないでちょうだいね~~!」
お母様はいつものように可愛らしく微笑んでいるが、その微笑みの中には満足そうな色が伺える。
「はい! もちろんです、お母様!」
「お兄様ともね」
「えっ?」
いつの間にいらっしゃったのかお兄様が、お母様とお父様の間に立っていて、ごく自然に声を上げていた。
「お、お兄様⁉」
「うん。お兄様だよ? どうしたのメティア、僕とは遊んでくれないの?」
「い、いえ。喜んで遊ばせて頂きたく……」
突然現れたお兄様に私は戸惑っているが、お母様にもお父様にも驚いた様子はない。私だけがお兄様の入室に気付いていなかったのか。
「ふふ、よかった」
私の言葉にお兄様は嬉しそうに笑い、私の頭をふわりと撫でた。
「ありがとう、メティア。愛してるよ」
同時にお兄様の口から突然、愛の言葉が飛び出した。
いつの間にかお兄様はこう、私にすごく甘くなった。お父様が私に甘いのを見てそうなったのか。はたまた、お父様も昔はその甘いマスクもあり、ブイブイ言わせていたとかいないとか聞くので――お父様はこの話になると必死で話を遮るので詳しくは知らないが――天性の才能を持っているとか、そういうことなのか。
しかしまあ、私も慣れたもので、しっかりと切り返す。ついでに微笑みを添えて。
「私もです、お兄様。お母様もお父様も」
当たり前のように愛してる。
なんてったって、私の自慢の家族だ。