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2、一歳 お兄様

 ご無沙汰しております。

 なかなか難しいです。口調とか、安定してないですかね。

 ギャグに走ってみたいなあ。


 今回もお読み頂き、ありがとうございます。

 あの物心ついた決心の日から、私は順調に、両親は勿論、お屋敷の人達にも沢山の愛を注いでもらい、すくすくと育っていた。現在私は一歳と少し。この前誕生日を祝われた。精神年齢は一先ず伏せよう。

 平和な毎日だ。今日もお昼寝が気持ちいい。



 ところで、私にはお兄様がいる。血は繋がらない。お兄様は養子なのだ。

 お兄様は遠い家の分家の子供だったのだが、その頭、物分かりの良さ故、実の両親には理解されず気味悪がられていたのだが、その才能を買った両親が私が生まれる一年前に、良ければ養子にしたいと申し出て、我が家に迎えられたらしい。

 ちなみに、これは前世で聞いた話だ。今の私にはまだそんなことが理解できそうもないし、言うことでもないだろうから、話されていない。


 と、まあそんなお兄様と、私は実のところ、全然会ったことがない。

 前世も、お兄様は嫡男としての勉強や人脈作り、外務官である父の部下として公務に忙しくそこまで会わなかったが、今世は本当に全然会わない。

 勉強が始まっているのは確かだが、まだお兄様は僅か四歳、一歳の私と三歳差。年齢的にそこまで詰め込みではないはずだ。

 折角可愛い……かは別として、妹が生まれたのだ。普通、興味を示して、少し位会いに来てもいいと思いません?

 けれど、お兄様は今まで、自ら会いに来てくれたこともないし、家族揃ってのイベント、食事会等――つい最近で言えば、私の誕生会――で会っても嬉しそうだった様子もなかった。むしろ、少し、睨まれたような?

 もしかしたら、お兄様は私を好いていないのかも知れない。

 それはいけない。次期当主に嫌われるなんて……。でも私は何もした覚えがない。一体どうしたものか――


 そんなことを考えていたら、なんと。良いお天気の本日、お兄様が訪ねて来ました。私のお部屋を。と言っても、まあここはお母様のお部屋なんですが。どうやら私に会いに来てくれたみたいです。午後のお昼寝から目覚めた私のいるベビーベットを覗いています。

 お兄様がそっと手を伸ばし、ふにふにと私の体を触る。

(いやそんな仮にも乙女の体を……!)

 腕に胴体、足を、ふにふに、ふにふに……。

 私は内心狼狽しているが、相手からしたらまだ物心もついていないであろう赤子。意識していたらそれはそれで怖い。

 そんな様子を見た母は「仲良しねえ」なんて言って柔らかい笑顔を浮かべている。これは、珍しい、じゃないんですか。まったりとしたお母様をよそに、私は何かあったのかと、つい邪推をしてしまう。


 その時不意にドアがノックされて、使用人さんの声で「奥様、御友人がいらっしゃっております」と言う。お母様は「あら、もうそんなお時間?」なんて可愛らしいお声で言うと「ジェドお兄ちゃん、メティアを頼むわ」なんて、やはり可愛らしいお声で言う。そうそう、お兄様の名前はジェドと言います。

 そしてそのまま出ていった。


「……」


「……だあ」


(嘘でしょう)


 いきなり、二人っきりにされた。

 すごい、すごい飛び級して、二人っきりに。

 今しがたお母様が出ていったドアからお兄様の顔に視線を移すと、やはりお兄様もドアの方を見てぽけっとしている。良かった、私の反応も、お兄様の反応も、間違ってない。多分。


 というかお兄様、私のこと頼まれちゃったよ。どうするの。なんかごめんなさい。

 思いが通じたのか、お兄様がぽけっとした状態から戻ってきて、こちらに視線をやった。自然と目が合ってしまう。何だか胸に不思議な感覚が過った。

 お兄様はこちらを暫く見つめた後、困ったように笑った。その顔が何だか翳りを帯びていて、不安になっていると、お兄様は近くの椅子を持ってきて座る。立ちっぱなしは疲れちゃうもんね。

 それからお兄様がぽつり、ぽつりと溢すように呟く。


「メティア。君は、可愛いね」


「あう?」


(? 急にどうしたのだろう、お兄様。ありがとうございます)


「まだ、純粋で、無垢で。何も分からない」


「うー」


(……分からないと思うでしょう? でも実は、中身はもういい年で。分かってますよ、お兄様)


私はまだ上手く喋れない。脳内はこんなでも、口がついてこないのだ。

 とりあえず子供っぽく意味を持たぬ声を発しながら、せめて、と脳内で言葉を連ね、受け答える。



「……君は――」


 そこで、お兄様が言葉を途切れさせた。

 そして私の頬に再び添えられた手が、ゆっくりと撫で下ろされる。首辺りまで下りたところで、お兄様が私の目を見て再び言葉を紡ぐ。


「君は、僕の居場所を、奪うの?」


 泣きそうな目だった。

(どういうこと?)

 私はただ、黙って見返すだけ。


「実子の君にだって、次期当主の座は渡さない」


(あ……。そういうこと)


「やっと、見つけた僕の居場所なんだ」


 悲しそう。苦しそう。この子は、怯えている。

 いくら大人びていても、この子はまだ四歳。なのに、こんなことを危惧して、脅威を感じる。

(大人びる、というのも考えものだわ)


 この世界は、養子が珍しくない。だが、実子が生まれたら、実子がやはり可愛くてとか、血は大事でとかで、継承権を移す、という身勝手なことをする親がいるのだ。

 そして、女性当主と言うのも珍しくない。そうでなくとも、娘の婿を当主に、と言うのも勿論ある。


 お兄様はそれ故に、私を脅威に感じているのだろう。


 実子に継承権を移された養子の扱いは色々聞く。きちんと、変わらず家族としてやっていくと言うのも勿論聞くが、酷いものも聞く。

 用済みと言わんばかりに、放り出されたり、離れに追いやられたり、使用人のように扱われたり。全く勝手なものだと思う。けれど


(私達の両親は絶対にそんなことしませんよ、お兄様)


 失礼ながら、お兄様はこの二年、何を見てきたのか。皆、使用人さんも含め、しっかりとお兄様を可愛がっていたじゃないか。時には厳しかったかもしれないが、そこには全部愛があったじゃないか。

 何故知っているのかって?

 それはここで、お母様もお父様も、よくお兄様のお話をしていたから。

 最初の方は私に付きっきりで離れられなかったお母様に、「今日はジェドが○○を出来るようになった」とか、「今日は叱ってしまったけど、少し叱りすぎたかも知れない。嫌われていないか」とか、「○○してくれて、とても嬉しかった」とか、「本当に自慢の息子だよ。誇りに思う」とか、お父様が毎日とはいかなくとも、多忙な中よく来ては聞かせてくれたのを、勿論そこにいた私も聞いていたから。それからお母様からは私のお話。

 ある時には私にまで、「メティアも可愛いけれど、お兄様も美男子でね、才能も素晴らしいんだよ、大きくなったら惚れてしまうかもね。でもパパと結婚しようね」なんてデレていた。何かおかしいのは気にしないで欲しい。



 と、まぁそんな訳で、両親は間違ってもお兄様に酷いことなどしないだろう。さらには、継承権を移すなんてこともしないと思う。何より、それを私も望んでいない。多分、もし、もし与えられても放棄する。

 一瞬、跡継ぎならば、嫡男であるゼラン様との婚約も無くなるかと考えたが、何だか、それは違う気がした。



 精一杯の否定の気持ちを込めて、首を左右に振る。あんまり振るのは不味い気がしたので、狭い振り幅で小刻みに。



「? どうしたの急に首をブンブンと……。筋を違えるよ」


「だぅっ!」

 言われた側から、少し違ったかもしれない。痛い、悔しい。


「ぷっ! 何してるの? メティア、面白いね。可愛い」


 顔を顰め、涙目の私を見て、お兄様は吹き出された。


「あう~!」


(何笑ってるのよう……。こちとら痛みで幼児の涙腺が弛みまくりなのに)



 恨みがましげな視線を知ってか知らずか、お兄様は優しく私の首を撫でてくれた。

 安心する体温に、幼児の私は素直にキャッキャッと笑う。すると、お兄様も少し瞠目した後、優しく笑った。それには、年相応とまでは行かないが、無邪気さと、純粋さが滲んでいた。



 そうして暫くすると、お母様がいつの間にかドアから顔を覗かせていて「うふふ、お()り、ありがとうね、お兄ちゃん」なんて声を掛けるものだから、お兄様はなんだか照れ臭くなってしまったようで、「そろそろ宿題を片付けなくてはいけないので」なんて言って帰っていった。仄かに耳が赤かったのを私は見逃さなかったよ。全く、可愛いものだ。



 お兄様に、私の意図が伝わったのかは、分からない。……いや、恐らく伝わっていないだろう。

 いつか、私が巧みに言葉を操れる……回る舌を手に入れたとき、またこの話をしよう。私の意思を、伝えよう。



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