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8、またまだ魔法使いとは名乗れない原石

説明回です。


17/8/15追記 すいません。勝手ながら文字数調整のために8、9をまとめました。それに伴い、9の取り下げと、サブサイトルの変更しましたが、内容に変更点はありません。ご迷惑をお掛けします……。

タイトルは多いほうが分かりやすそうですが、話が短いとガクッと来てしまいますよね。精進致します。

「ヨセフさん! 今のはどうでしたか?」

「はい、メティア様。大変お上手でしたよ」

「ふふ! ありがとうございます!」


 あれから――私の誕生日から――三ヶ月。私は今、屋敷の中庭で魔法の練習をしている。

 そう、とうとう魔法を学び始めたのだ!



 あのあとのお父様の仕事は大変速いものであった。身内ながら、さすがと言う言葉に尽きる。

 先生を探すにしても、確かな腕を持つ先生を探してくれた。選定にはもっと時間がかかるかと思ったら、ものの三日で数人に絞ってださった。さらに、最後は私の目に選ばせてくれると言うので、その数人に会った。皆さん真面目そうでいい人達ばかりだった。そうして選んだ人が今の先生である、ヨセフさん。

 柔らかい笑顔のナイスミドル。さらに愛妻家――奥さんのために早期退職したと言われているらしい――という評判をお父様みたいで好ましく思い選んだ。

 早期退職前はヨセフ・サーライン伯爵として当主を務め、同時に王宮に仕える魔法師――上級魔法を使う人――であったそうだが、私は親しみを込めて、ヨセフさんと呼ばせていただいている。初めはヨセフとお呼びくださいと言われたが、それは丁重にお断りした。たとえ私が、これから雇用主側の身内だとしても、一回りどころか何回りも年上の方を呼び捨てなんて、元日本人の常識と精神年齢が許してくれない。


 実際に教えてもらいはじめると、その柔らかな笑顔とは裏腹にスパルタ――ということもなく、その笑顔のまま優しく、同時に程よく力を抜いた方であった。

 そんな素敵な先生もついた私に、もう怖いものなんてない。私の魔法の腕はめきめきと上達――なんて、そう上手くいくわけもなく。まあまあそれなりに上手く進んでいる、といったところ。

 生活魔法を三週間程度でコントロールし、今は初級魔法を練習中。普通は毎日私と同じ時間やったとしても、一ヶ月程かかるので少しは早いかもしれない。

 言ってしまえば、前世でもやったことなので頭では分かっているのだ。しかし、体は分かってはいないため、生活魔法の目的である魔力出力量の制御などは一からであった。これらはどうにも、慣れや感覚的なものに依存してくるから仕方ない。


 生活魔法を詳しく説明をする前に、おさえることが沢山ある。

 まず、日本で言う家電やライフラインが、この世界ではインフラ整備と、魔法で機能している。魔力は電力の代わりであったり、水道の代わりであったり。

 コンロに火をつけるにしても、ここでは魔力が要るのだ。とは言っても、皆魔力はあるものの大小の差はある。

 ここで魔石というものが出てくる。魔石とは魔力が溜められる、日本で言う宝石のようなものである。

 それらに魔力を溜めておき、魔方陣を組み込んだ水道やコンロに埋め込む。そうして規定の箇所に魔力を流し込むと、それをスイッチとして魔石から魔力が供給され動き始める。

 つまりスイッチとしての魔力を流し込む、これが生活魔法だ。

 しかしこれが、習得するのに意外と時間が掛かる。魔力が大きすぎると安全装置が働き作動しないし、もちろん小さすぎても作動しない。

 魔力の出力を完璧にコントロールすることで生活魔法を習得したと言え、後々の魔法にて暴発を抑えることにも繋がるのだ。


 それからやっと次に、今練習している初級魔法。こちらはイメージが大切である。

 まだ持っている属性に依存することはなく、皆が使える無属性のものがほとんど。もっぱら物理的なものがメインである。軽い物を押す程度の衝撃波であったりとか、意外と重要である防御壁等。

 加えて、全部で六つある属性魔法の内、光、闇を除いた属性の初歩的な魔法も入ってくる。火であれば、元からある火種を大きくしたり、土であれば少し盛り上げたり。水なら元からある水を手に一杯分くらい増やしたり。風ではスカートを揺らす程度のそよ風を起こしたり。これらは元からあるものをコピーしていく魔法が正体なのではないかと言われている――イメージでできてしまい陣がないため、解析が難しく断言はされていない――ので、属性魔法かと問われてしまえば微妙だが、学ぶ過程として分かりやすいようにいうことで、属性魔法に分類されている。


 ちなみに、初級魔法を使える者は初級魔法使い、一般には略されて“初級使い”と呼ばれる。晴れて“魔法使い”と言われるのは、中級魔法を使えるようになってからである。この上は魔法師――ヨセフさん含む――上級魔法を扱うことができる者。さらにその上は魔導師。人数も数人になるが、創術――魔法を新しく創ること――ができ、その気になれば禁術も使えるのではないかと言われている。


 話は戻って、初級魔法の無属性、水、火、風をクリアし、私が今やっているのは土属性の魔法。 

「…………」

 ボコッと土が盛り上がる様子を想像し、魔力を地面に向けた手のひらに集める。そうして、出す。

――しっかり地面がボコッとなった! ……二ヶ所。

「ん? 何? え?」

 詳しく言えば、私の地面に向けた右手のひらの先と、私の左足の左側。力を込めていていつの間にか手のひらが地面を向いていた左手の真下。

「メティア様? どうしました?」

 私の声に、ヨセフさんは俯き地面を見つめる私の顔と、右手のひらの先の地面を交互に見る。

 私はゆっくりと右手で左手真下の地面を指差す。

「え、あ、いえ……なんか、こっちも盛り上がったんですけど……」

「え?」

「え?」

「――――おや。これは……お茶目をしましたね」

 ヨセフさんはくすりと笑った。







――――思えば、確かにおかしかった。


 火を起こしたときと、無属性の防御壁は大丈夫だったと思うが、風を起こした時は何だか激しく課題の布を揺らしてしまったし、水を出したときは多くて手から溢れた。無属性の衝撃波はコップを少し動かすだけのはずが倒してしまった。それぞれ一度は想像よりも大きく効果が出てしまい失敗。それから調節していった。


「多分、メティア様は魔力量が多いのでしょう。そのため軽くと思っても、両手共に大きな魔力の一部を込めていて効果が二倍となっていた。こればかりは感覚ですからねぇ」

「なるほど……?」

 確かに思い返せば、失敗していたものはたまたま両手でやっていたかもしれない。

「ほら、火の時は少し怖がって片手しか出していませんでしたよね」

 そう言うと、あの時の私の様子を思い出したのかヨセフさんはくすりと笑う。

 確かに火に手を近づけるという行為にビクビクと怖がってはいたのだが、今思うと恥ずかしいからそう笑ってくれるなと思う。

 少しムッとした気持ちがそのまま顔に出ていたのか、ヨセフさんは謝ると軽く咳払いをしてから続けた。

「つまりは、まあそういうことですよ。はは、メティア様の将来に期待が膨らみますね」

 言葉の中に嫌味は感じられなかったため、純粋に褒められたらしい。

「ありがとうございます!」



 それから込める魔力は今までの感覚の半分でいいと言われ、やってみれば調節は必要なかった。両手に込めていたものを片手に集めることには大した苦労もなく済んだのが幸いであった。

 それから少しずつ、しかし確実に魔法は上達していった。


 そうこうしているうちに、あっという間に時は過ぎて行く。

 ヨセフさんの授業が、最初は多少みっちりとやっていただいたが、それも魔法が安定してくるにつれ定期的になり、今は週に二回。その他にも学ぶべきことは尽きないのだろうが、まだ幼く遊びたい盛りであることを加味して、他の習い事もあるにはあるが、少なくとも週二、三日は休日があって、その日はその週習ったことの復習や趣味、お出掛けと好きなことをしている。

 約束通り、お父様やお母様、お兄様と、休日やお茶の時間、習い事の合間をともに過ごすことも忘れない。




 そんなある日に事件は起こる。

 この平和な日々に慣れていた私は、日々に潜む危険を忘れかけていたのかもしれない。何にしろ、油断をしていたのは確かである。 



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