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悪役な私だけど、今度こそ幸せになります。意地でも。  作者: 代田ハル
プロローグ 一度目のメティア
1/11

とりあえず崖から突き落とされた

 初めまして。

 普段は読む専門なんですが、書いてみました。初めての作品です。拙い文章で読みにくい所が多々あるかとは思いますが、よろしくお願い致します。


3/20 誤字修正など、色々整えました。本筋は変わっていませんが気になる方は、お手数ですがお読み直しください。

 ある昼下がり、近衛騎士である私はその日、たまたま王都近くの森にて個人行動の任務を請け負い、一人森を歩いていた。仲間とはずいぶん前に別れ、各々バラバラの方向に歩いている。

 少々の危険がある森――弱いながらも魔物の生息している森――での植物などの採取も、王室からの命だと騎士の仕事となる。そして今日は王妃様からの御命令で結構珍しい薬草の採取だ。


 歩いているといつの間にやら、崖に出た。その時突然、背後に人の気配を感じたと思えば、次の瞬間、視界には空が映り込んでいた。

 今、一瞬にして何が起きたのか、私には分からなかった。

 だか、直後に受けた身体を叩きつけられる様な衝撃。すぐ何が起きたか、否、何をされたのか、理解することとなった。

 突き落とされたのだ。先程立っていたはずの崖から。

 理解すると同時に、頭に、足に、激痛が走った。痛みに喘ぎつつ、目だけで辺りを一瞥し、思考を巡らせ、状況を把握する。


 ……私は何者かに押された。立っていた崖は、見上げれば六、七メートル程だろうか。そこまで高くはない。現に私の怪我の程も、そこまでのものではない。……だが、打ち所が悪かったのか、酷く頭が痛む。それと、足に、(ひび)くらいは入っていそうな痛みがある。


「――ッ!?」


 突然のことに声にならない音声が漏れる。

 頭の痛みが、締め付けられるようにズキズキとしていたものが、大きな岩を頭上に乗せられたかの様な痛みに変わったのだ。

(どうなってるの……)

 それから、堰を切ったように、見たこともない記憶が走馬灯の如く駆け巡る。何故かこれは前世の記憶だと分かった。だが、まるで、それらが原因とでも言うように、タイミングぴったりで再び酷い痛みが襲う。

 痛みに邪魔をされ回らぬ頭で、必死に思考する。

(どう……いう、ことよ……)

 この記憶によると、

私は――

彼は――

彼女は――

この世界は――

 私はただ、呆然とした。




 どのくらいそうしていたのか分からないが、気がついた時、走馬灯は過ぎ去ったが、やはり頭の痛みは酷いままだった。

 だが、私だって伊達に騎士を名乗っている訳ではない。いつまでもこのままではない。


 突然だが、私は魔法が使える。そして中でも治癒魔法が得意だ。頭に、足の骨に、応急手当を施し、痛みを少しでも抑え、歩いて帰ろう。これくらいなら、何とか自力でも帰れるだろう。

 何者かは分からないが、私を突き落とした奴が、止めを刺しに来る前に。

 この高さでは死なないことくらい、相手も分かっているだろう。殺意があるのなら、確実に来る。息の根を止めに。


 魔法の行使には、頭を使うので、この酷い痛みに、(いささ)か不安を抱いたが、足は、何とかよちよちでも歩けるまでにはなっただろう。次は頭だ。



「やあ、メティア。そんなところで這いつくばって、何してるんだい?」

 不意に前方から聞こえた、聞き慣れた声に、素早く顔を上げた。咄嗟にしてしまったことで、やはり酷く痛む頭に顔を顰める。


「頭でも打ったのかな? ……そこの崖から落ちてしまって」

「……っえ?」


 思わず、声が詰まってしまった。

――貴方が、何故、それを?


「……見て、いらしたの?」 


――だったら助けてくれればいいのに。……貴方はそれでも、私の婚約者? 私は、いつだって貴方に恥じぬように、と――


「――ッ!」

 そこまで思って、また、頭が痛む。

 そうだ、この人はもう――


 目の前の彼が口を開こうとした時だった。


「ゼラン様ぁ~、待ってくださいよぉ~! 私、疲れちゃって、足が痛いですぅ……」


「――!?」


 彼の後方から聞こえた、色に例えるならショッキングピンクと言った具合であろう、甘えた声。それは私の耳に届くと、ビクリと私の肩を震わせた。

 声の主は、まだ姿は確認出来ないが、バッサバッサと豪快な音を立てていて、人間の抑制なく、伸び伸びと育った森の草を掻き分け、此方へ向かっているのがよくわかる。


(あぁ、こんな情けないところ、彼女なんかに見られたくないわ)

 そう思うのに、身体は怪我のため、自由に動かないのだ。今から動いても、よちよち歩きでは、きっとすぐに此処へ着く声の主の視界から消えることは叶わないだろう。

 大人しく諦め、今だ草を掻き分ける大きな音が聞こえている、大方、その声の主が姿を現すであろう方を、いつものように軽く睨みつけておく。


 ちなみに"ゼラン様ぁ"と、先程ショッキングピンクの声に呼ばれた者は、目の前にいる。そう、私の婚約者だ。

 その彼も、今は私と同じ場所を見ている。もうすぐ姿を現すであろうその女をさぞや、愛おしいとでも言うような目で。

(……この人は、どうして、こうなってしまったの)

 私はそれを横目に、意識を過去へ飛ばした。



 彼は昔はこうではなかった。幼馴染みの私達はいつのまにか、婚約していた。小さな頃から彼は、しっかり者で、誰よりも努力家で、万人に対し紳士。女に現を抜かすこともない。

――そんな彼に、私は恋をした。彼を誇りに思った。また、彼の婚約者である自分に、誇りを持った。そして、彼と少しでも並べるようにと、文武両道を心掛け、常に人一倍努力し、女性ながらに彼と同じ騎士になった。でもそれだけではダメだと、騎士の中でも優秀な者しか入れない班に、彼と同じ班に。厳しい男社会の中をこの身一つで渡り、のしあがった。……そんな私を、彼も認めてくれていた。



 いつからだろう。歯車が、狂い始めたのは。彼に異変を感じたのは。彼女が彼の隣にいるのを見かけるようになったのは。


 

 それは、互いに、騎士と言う只でさえ忙しい仕事が本格的に忙しくなり、たまにしか会えなかった時期のこと。


 ある日、女性と話す彼を見た。それが彼女、エリーナ男爵令嬢だった。

 最初は彼も、彼女を相手にしていなかった。私と言う婚約者がいるからと。

 当然だと思った。貴族として、いや、その前に人として。彼女は、婚約者のいる者に、色目を使うというのはどう言うつもりなのかと、甚だ疑問に思った。


 次に見たときは、彼は彼女に紳士的な対応をしていた。

 不思議と、前回見たときより、嫌がっている感じがない。むしろ、満更でもないような雰囲気を出している。

 ……上手く彼女をあしらっているのかと思った。だから、自分の中に芽生えた、少しの嫉妬にも気付かない振りをした。

 その後も何度かそんな様子を見かけた。だんだんと、黒い何かが、私の中に溜まっていくのを感じた。



 またある時は、好意を向ける彼女と、楽しそうに笑い合いながら話していた。

 その時ばかりは、私の中で、溜まっていたものが……怒り、悲しみ、妬み、色々な黒い感情が、ボトボトと溢れたのを感じた。

 その日忙しい合間を縫って、彼と話をした。「悪い気はしないじゃないか」と言う彼に、私は怒りを覚え、「もういいわ」と早々に会話を切り上げた。


 ……次に見たときは、街で二人、仲良く手を組み歩いていた。

 その様子は端から見れば、恋人の様だった。実際「お似合いの恋人同士だね」と、屋台のおじさんに冷やかされるのを、満更でもないようで、否定もせず、照れながらも笑い合っていた。

 その日の夜、時間を空けてもらい、私の見たことを話し、思いをぶつけた。

 私は今まで、勉強や努力と言う、対話のないものとひたすら向かい合ってきて、人に思いを伝えるのはどうも下手らしいので、こういうときは全て話してしまうようにしているのだ。前は彼も、そんな真っ直ぐなところも好きだと、言ってくれたのに――その時の目の前の彼は「うるさい」とでも言うように顔を顰めていた。

 結局、その日はケンカ別れとなった。



 ……次の日から、彼と話すことはほぼなくなった。避けられてしまったのだ。そのまま、現在まで。

 ……最近に至っては、業務連絡などしかしなかった。同僚としての挨拶もなしだった。





(……彼の変化は、きっと彼女のせいよ……)

 漸く最後の葉に手が掛かり、最後だけ、控え目に――今更そんなことをしても無駄だと思うのだが――葉をどかす彼女が、可愛らしく――いや私は可愛いと思えないが――葉の横からぴょこりと顔を出す。

 私は変わらず……否、表情を更に険しくさせ、眉間に深い皺が睨みに追加されたが、横目で見たゼラン様の顔は、可愛いものを愛でる時のように緩んでいた。


 この人は、もう――彼女に心を奪われている。


「ゼランさぁまぁ~」


 ……やっぱりショッキングピンクだ。耳に付く……。そう言えば、どうして森に? と思わなくもないが大方デート……か何かだろう。


「エリーナ」


 ゼラン様も蕩けるような甘い声で、声の主の名を呼ぶ。


(本当に、変わってしまったわね……!)

 とても以前の彼からは想像もできない、むせかえる様な甘さに、吐き気を感じながら、戦慄した。


(私は貴方の、真面目な所が好きだった……)

 少し関わらない間に、こんな風になってしまうなんて。幻滅もいいところだ。……だが、尚も嫉妬の心も残る自分にげんなりする。

 ちなみに、帰ったら、彼の両親に報告してやろうと密かに決める。もう黙っていられないわ……。


「あれ? そこで寝てるのって、メティア様じゃないですかぁ~? どうなさったんですか? えっ! メティア様ってば、傷だらけですよ~? うわぁ、傷、気持ち悪い……。痛くないんですか?」


 私が彼に幻滅している間に、ちゃっかり彼の腕に絡み付いたらしいショッキングピンクは、そこでやっと私に気づいたようで、私の状態を見て、そして傷だらけだと騒ぎ出した。なんとも見たまんまの感想をくれる。

 寝てない。倒れているの。あと、さらりと気持ち悪いと言ったが、好きでつけた傷じゃない。その下手な怖がる演技は止してくれ。


(というか、何? 痛くないかって? 勿論痛くないわけないじゃないわ。しかも、貴女の声を聞いてから心なしか、主に頭を中心に痛みが増した気がするわ)

 心の中ではちゃっかり悪態を吐きつつ、目線で訴える。(貴女とは話したくない)と。

 すると、その様子を見たのか見ていないのか、何故か彼が話始めた。


「エリーナ。彼女はそこの崖から足を滑らせたようで……」



――え? 足を滑らせたって……私が?

 私がそんな下手を踏む訳がない。そんなこと彼は分かっているはずだ。伊達に一緒に過ごしてきていない。

 私は元々が抜けていたから、尚更気を付けるように、よく周りに目を配るようにして、それをすっかり癖にし、カバーしたのだ。簡単ではなかったそれは、騎士にまでなった今、とても役に立っている。なので、私にそんなこと、有り得ないのだ。……普通なら。


「彼女、頭を強く打ったようで……酷く弱っていて、もうダメかもしれないと言っているんだ」


「……は?」


「えっ……そんな、メティア様……!」


 確かに、頭が痛くて、まだあまり動けないのは取り敢えず認める。だけど、私は全くもって"ダメ"何ぞではない。別に生きて帰るつもりだ。


「何を仰っているの? 私は帰るわ。急がなくては、私を突き落とした何者かが此処へ来てしまうわ」


 勿論、確り意志を伝えさせてもらう。私はまだ死にません、と。それと暗に、突き落とされたのだ、と。


「エリーナ、メティアは君の前で強がってしまうみたいだ。自分が君に、貴族とは何たるかを、さぞや誇らしげに説いたのだろうから」


 ……突然何を言ってるの、彼は……。私は彼女に貴族とは何たるか、なんて説いた覚えはない。

 彼女には確かにそれも必要かと思われるが、態々私が、そんな親切で面倒臭いこと、しない。

 ……ただ、貴女の振る舞いは、令嬢としてどうなのかしら? と問うたことはあったか……。


――まさか、その事を言っている?


 だとしたら、私は、自らが掛けた問いの答えを言うような、バカなことをした覚えはないし、そんな多くを語ったつもりはない。

 いつだったか、以前騎士の訓練棟で偶然会った彼女に、その一声を掛けただけだ。これは説いたというのですか……。しかも、"さぞ誇らしげに"とは……何やら話に尾ひれどころか、手か足が生えたようで。

 と言うか、ここで一つ言いたい。あれは、彼女がちょっかいを掛けている、複数の男性の、婚約者の方々から、「私達の為に、何か言ってやってくださいませ!」等と言われたので、彼女自ら、行動を省みてもらおうとして、伝えた言葉だった。

 婚約者の方々が直々に何かしようものなら、婚約者の中には私と同じ公爵家の御令嬢もいらっしゃったし、あの時の彼女達の様子では、この、目の前のショッキングピンク……改め、エリーナ嬢の男爵家なぞ、簡単に潰してしまいそうな勢いだった……――普段は可愛らしい花の様にニコニコと、日溜まりの様に温和な彼女達も、一貴族令嬢として育ってきた。やるときはやる。

 それに、私だって嫉妬していたのだ。だからこそ。


「どうしたの? 言葉もないけど、その時を思い出した? 僕にバレていて焦ってるの? 彼女にキツい言葉を投げ掛けて、罵倒したんだってね? 後悔しても、今更遅いよ」


「はぁ……?」


 思わず不快感を隠しもしないで声を上げてしまった。


「ゼラン様! そのことは……もういいのです。私が、私が、全て悪いのです……。男爵家の癖に、公爵家のゼラン様に近づいたから……」


「いや、え?」


 彼等が何を言ってるのかちょっと分からない。

 キツい言葉? 罵倒? バレてて焦る? 後悔? 私が全て悪い? 男爵家の癖に?

 言葉自体は分かるけれど、どうして今そんな言葉が出るのか、分からない。彼等は、ベタベタし過ぎて、とうとう揃って頭がおかしくなったのかもしれない……。


「御二人とも、何のお話をしてらっしゃるの? あの?」


「ハッ! しらばっくれるのかい? 彼女をこんなにも傷つけといて!」


「ゼラン様! 良いのです、もう良いのです……。私が全部、悪くて……!」


(しらばっくれるって何のことなの……。そして、何でエリーナ嬢は泣いてるの……意味が分からないわ……)


 二人の登場にいつの間にやら段々と治まって息を潜めていたらしい頭の痛みがまた復活してきた。本当に彼女は私の頭に悪い。いや、二人ともか。


「エリーナ、怖かったね。よしよし。ほら、もう泣かないで。僕がいるよ。先に進んでおいで。先程確認しておいたから、危なくない。僕は用事を片付けたらすぐ追い付くから」


 彼は、それはもう甘い声で、泣いている彼女を抱き締め、それから彼女の頬を伝う涙を、唇で掬う。

(うわ……)

 私はもうドン引きしながら、嫉妬して、吐き気がして、何だか色んな思いがぐるぐるしている。また頭痛が酷く……! 取り敢えず、目を背けた。さっきから彼には幻滅しまくりだ。まさか、この森は人を開放的な気持ちにする作用か何かがあるのかしら……? 兎に角恥ずかしくて見ていられない。


「本当に……? 本当にすぐ、来てくれる?」


 エリーナ嬢はそう言って顔をゆっくりと上げた気配がした。目を背けているので、あくまで気配だ。


「ああ、勿論」


 やはり声が甘い。胸焼けがしそうだ。

 何だろう。これはキスをするような雰囲気を感じる。他所でやってちょうだい……。いや、しないでほしいけれど。彼は私の婚約者だ。今は解消したい気持ちで一杯だけれど……。


「分かった、じゃあ行くね」


 続いてチュッ、と軽いリップ音。

(私、婚約者……よね?)

 随分と見せつけてくれる。


またガサガサと盛大な音を響かせて行くかと思いきや、今度は草のない小道を行く様で、タッタッタと走る音が聴こえた。……そう、走ってしまうのね……そんなフリフリのドレスで……エリーナ男爵令嬢……。



 特徴として「お前の書く文は、回りくどい」とよく言わます。本当にその通りです。こちらでも長々と説明してます。書いているうちに、深みに嵌まってしまうといいますか、何と言いますか。ごめんなさい。

 ここまで読んでくださったあなた様に、ただ感謝です。

 もしよろしければ、評価、ご感想、ご指導の程、よろしくお願い致します。

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