第2話 生まれてからのこと
私は日本に二回の生を受けた。どちらも女子として、二回目は前世の記憶がそのままで。ちなみに死んでから一年後に転生した。
生まれてから三年ちょっとが経ち、ようやく私は現状やら今の家族関係やらを理解することができた。
まずは母親、霜月 美麗。
彼女は現在二十七歳。私を生んだ時点では二十四歳だった。
性格は極めて温厚。少し抜けているところがあり、たまに失敗をする。まったりしていて、お花が漂っていそうな雰囲気だ。
身長は平均より小さめで、体型は女性の憧れを具現化させたかのようなボンキュッボン。
子供への愛はとてつもなく深く、しかしうざったくない。
家事は万能、スーパーのタイムセールの時は獲物をもぎ取る強さを持つ。どこぞのおばあちゃん並みに豆知識量が多い。
いやぁ、良い母親だね。
お次は父親、霜月 玲哉。
現在三十七歳。バツイチ。原因は妻の不倫らしいけど、複雑な事情があるとかないとか。
性格は叔父さん(前世の)に似ている。ちょっと子供っぽいところがあって、親しみやすいところとか。でも意外としっかりしているんだよねぇ。
ルックスは中々良い方だ。顔も、良い方だと思う。身内目線だから贔屓してるかもだけど。
こちらも子供への愛は深い。程よい愛だ。
仕事は医者をしているらしく、普段は忙しい。だが休みを取れると遊びに連れていってくれる。
さぁさぁ、お次は兄です。霜月 燐。
現在十三歳、中学一年生。部活は美術部。
兄は父の連れ子だったらしく、未だ母に遠慮をしがちだ。実の母じゃないって、そんなもんですか? あー、でも父にも遠慮がある感するんだよね。何でだろ?
性格はクールなもので、表情があまり変わらない。ただし父似のルックスと綺麗な顔立ちから、モテると推測。
私とはあまり関わってくれない。グスン。
そしてこの私、霜月 巳稀。
現在三歳、家でぐうたらがお仕事でっす!
転生したことはあまり深く考えず、まったりしております。まだ自分では動けないし、大きくなってから家族のこととか舜くんのこととか調べる予定。つもり。
顔立ちは、整ってる方じゃないかなぁ。両親の遺伝子がちゃんと働いてくれれば、良い感じだと思うんだけど。ぶっちゃけ母も美人だし。プロポーションは言うまでもなく。
今の家族のことも大好きな転生少女(幼女?)です。
そんな私はとある日の夕方、時間をもて余していた。まだ四時である。
父は仕事。母は買い物で六時半頃まで帰ってこない。兄は六時まで部活だ。
一軒家に三歳の子供一人って、防犯的にどうなのよ、と思うだろう。だがしかし、嘗めてくれるな。心配性の父は最新で最高の防犯システムをこの家に設置しているのだ! ……詳しくは知らないけど。
そして正確には、父じゃなくて防犯システム会社の人が設置したんだけど。でも父がお金払ったから、父って言えるの? うぅん?
あぁ暇だ。持ってる本は全部読んじゃったしなぁ。
前世ではこういうとき、どうしていたっけ?
えーと確か、ネットで小説読んだり書いたりネットゲームしたり……。ネットばっかり。
ネットかぁ……。パソコンがあればなぁ……。
ん? あるよ。あるじゃん、この家。家族で使いましょーっていうパソコンが!
私は三歳児の体で一生懸命動き、リビングにある一台のパソコンの前の椅子に座った。そして体を伸ばし、パソコンの電源を入れる。
ポチッとな。あ、ついた。
パチッと簡単についた電源に感動しつつ、私はこの手には大きいマウスを操ってネットを開いた。
えーっと、小説投稿サイトの……おっ、あったあった。ログイン? 確かパスワードとIDだったよね。
カタカタカタっとぎこちないながら指を動かしてキーを叩き、約四年ぶりに開かれたマイページを見る。あららぁ、四年前のまんま。
私の小説、四年間更新されていませんと書かれちゃってるじゃん。ちょうど良いから今書いちゃえ。
「ふんふんふふふ~ん」
日本からすると四年前に流行っていた曲を鼻歌で奏でながら、私は四年ぶりに小説を書き進めた。
久し振りだなぁ。この楽しい感覚。読むのも好きだけど、書くのも好きなんだよねぇ。
そんなふうに、私の感覚からすると三年ぶりにネットに入ったので興奮していた私は、家の玄関で物音がしたことに気づかなかった。