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プロローグ

 思い至って書いてみました。


「きょっ、うっ、はぁ~! お出掛けぇ~っ! そうっ、家族が私を置いてったから、叔父さんとお出掛けなんだぁ~い!」


「焼き肉でごめんね、なんか」


「いいんだよ、叔父さん! 置いてきぼりの私を連れ出してくれるだけで感謝してる!」


「ははは……」


 私、久保(くぼ) 美樹(みき)は、寝過ごしたことによる置いてきぼりを食らいました。自業自得なんだけど、誰か起こしてくれてもいいじゃんと思います。

 この夏休み、家族は沖縄旅行で一週間いなくなりました。私、暇。食べ物? 近所に在宅の叔父さんにたかります。ってか、たかってます!

 叔父さんは優しくて、よく私と遊んでくれる。ちなみに既婚者なのだが、奥さんも私と仲良くしてくれる。素晴らしい夫婦ですね!

 今日は奥さんは仕事でいないけど、また今度焼き肉に行きたいなぁ。

 そうです、今は叔父さんの車の中。穴場の焼き肉屋に行くため、車通りの少ない道を走っているのです!


「や、き、に、く! や、き、に、く! YA・KI・NI・KU☆」


「さては、置いていかれた悲しみと怒りでテンションがおかしくなったかな……」


 え、何のこと? 私は至って正常ですよ、叔父さん。


(しゅん)くんも誘いたかったな……」


「部活があるって言ってたよね。夜までなんて、サッカー部だっけ? キツいねぇ」


「違うもん。剣道だもん」


「あ、そっか」


 舜くんとは、私の幼馴染み兼恋人のことである。線が細い、ちょっと女の子みたいな男の子だけど、剣道がそこそこ強い、私の大好きな人だ。

 まだ二人とも十五歳だから何もしてないけど、いずれは結婚とかしたい。まだ早いけど。考えること早いけど!

 けど、大好きなんだ。本当に。大好きなエピソードはたくさんあるけど、たくさんありすぎて忘れてしまった。たまに思い出す程度。


「ねぇ叔父さん! 焼き肉遠慮しなくていいよね?」


「今日は特別にね。忘れられて、ショックも大きいだろうから。姉さんのおっちょこちょいのせいで置いてきぼりとか、僕が居たたまれないし」


「叔父さんは悪くないけどね~。でもありがとうお母さん! やっぱり家でぐうたらしてるのが一番いいしね!」


 そう、置いてきぼりでも何の問題もないのです。家でぐうたら、宿題やりなさいだの、そういう言葉を聞かずにテレビを見たりネット小説を読んだりと出来るのだから。

 最近投稿している小説も、ちょこっとだけ人気出てきたんだもんねー。

 さて次はどんな1話にしようか……。

 そう考えていると、後方から『キュルルルル……』と、固い何かと何かが擦れるかのような音が聞こえてきた。


「うーん?」


 私は後部座席に座っていたから、よく見ようと座席に膝を乗せる形になって、後ろの道路を見た。


「あれぇ……? あの車、随分と速く走るんだねぇ……」


「え?」


 私の呟きを聞いて、叔父さんも横目で後ろを見た。そして大きく目を見開く。


「運転手、居眠りしてるよ! このままだと突っ込まれる!」


「うっそ!?」


「嘘じゃない!」


 叔父さんは聞いたこともない程大きな声を上げて、一気にアクセルを踏み込んだ。

 この道は住宅街が並ぶ一本道で、突っ込まれた時に避けることが出来ない。

 後ろの車は勢いよく進んできていて、真っ直ぐな道とは言え、よく横の住宅に突っ込まないでいるな、とそんなところに驚いた。


「叔父さん、どうするの!?」


「どうもこうも! あの勢いで突っ込まれたら僕達死んじゃうからね! 逃げるしかない!!」


「死ぬ……? うわ、やだそれ。ねぇ、この通りって結構長かったよね? 逃げ切る前に突っ込まれそうなんだけど」


「冷静に分析しないでっっ!?」


 叔父さんの絶叫を聞きながら、私はもう一度後ろを振り返った。明らかに距離を縮めてくるあの車。

 今何㎞出てるんだろう。ちなみにこちらは80を越している。詰めてきているということは、つまり時速80㎞以上の速さを出していることになる。

 速い……速すぎる! 居眠り運転グランプリで一位に輝けるんじゃないかな!? ところで居眠り運転グランプリってどこでやってる? え、そんなのはない? さいですか。


「叔父さん、たぶんあと50メートルくらいで追いつかれる!」


「あぁああああああもう!! 何で今日に限って居眠り運転なんかッ!」


「叔父さんご乱心! さァアアアアアア、追い詰められる私達! 逃げ切ってこれからの人生を歩むことが出来るのかァアアアアアッ!?」


「実況とかいらないからね!?」


「こりゃ失敬」


 ふざけてる場合じゃなかった。このままだと本当に突っ込まれて死んでしまう。やっぱ家でごろごろしてれば良かった。

 いくつもの住宅の壁をガリガリガリガリ削りながら、それでも速度が緩むことなく車は追いかけてくる。

 じっと目を凝らしてみると、運転席に座る、たぶんおじちゃんがハンドルに突っ伏していた。太陽の光がおじちゃんの頭に反射している。

 ハゲですね! ハゲだねおじちゃん! 諦めないで! 育毛のCMとかあるでしょ!? だから駄目だよ諦めないでよこのままだとおじちゃんも死んじゃうからねぇえええ!?


「叔父さぁああああああん! もうハゲがすぐそこにぃいいいいいっ!?」


「クソッタレがッ!! 美樹、前に来なさい! 後ろだと突っ込まれた時にもろに当たるよ!!」


「それもそうですね!!」


 おじちゃんのハゲぴかぴかりんが近づき来る中、私は身を乗り出して助手席に座ろうとした。

 すると、













 ドガンッッッ!!!




 妙な音が、鼓膜が破けるんじゃないかって程大きく聞こえて、次の瞬間、強烈な痛みが全身を襲った。

 痛い! 痛い! 痛い!! 死ぬ! 死んじゃう!!

 どこもかしこも痛くて、どこがどうなっているのか分からないままでのたうち回り、体の奥から込み上げてくるものを吐いた。吐いて吐いて、吐きまくった。

 叫び声を上げようにも、次から次へと口からソレは出て来て、吐くことしか出来ない。


 もう嫌だ!!


 そう思ったその時、私の意識はぶっ飛んだ。











 お読みいただきありがとうございますm(__)m

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