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かけるという生活
日時計。
西田かけるは子供のときに見た日時計を頭に思い浮かべた。
大昔、人間は時を知るために日時計という物を造った。
その日時計は、かけるの背をはるかに超えていてその一部に影を落としていた。
かけるは5才ぐらいで、もちろんその意味もわからなかったが、その日時計が大好きだった。
家から少し遠い場所だったが、よく親に連れてきてもらっていた。
かけるの目は、いつもその高いテッペンを見つめ、それから下に伸びる影を追った。
今、かけるは目を開けると白い天井が広がっていた。
そして横から覗き込んでくる顔…小さな目で黒目が目立つ丸い顔。鼻は低くて口は大きい。アゴは小さい。そんなオン眉ボブの少女。
「おい、かける。また寝てたのかよ。4限に続いて。昼だぞ、メシだメシ!」
少女はお世辞にもかわいいとは言えないその顔をかけるに向けて皮肉っぽく笑った。
「なんだおまえか。ちょっと俺夢見てたわ」