第2話 夢の中の話/仕事説明・面接
4/21追記 誤字脱字修正。一部会話追加しました。
時刻不明――――――――???
気が付けば僕は見覚えのない大きな部屋に佇んでいた。
何が起こっているのか分らないが取りあえず気持ちを落ち着け周りを見回してみた所、部屋には不気味な特徴があった。
まず、この部屋は床も壁も黒い石のような物で作られているようだ。
薄汚れた赤く長い絨毯が真っ直ぐに敷かれていてその端には玉座が置いてあり、その上には砕けた骨らしき物と王冠が無造作に置かれている。
更に壁には豪華な額縁の絵画が掛けてあった。
描かれてる絵は赤い背景に紫色の多角形の魔方陣らしきものが描かれていて、この部屋の不気味さを更に際立てているようだ。
そして、天井を見て見れば僅かに灯りが付いた豪華な作りのシャンデリアが吊り下がっている。
これは玉座の間というやつだろうか?
いや、あえて言うなら魔王の間だな。RPGのラスト辺りに出てきそうな雰囲気の場所だ。
しかし、僕は確か自室で眠っていたはずだ。
それなのに気づけば不気味な黒い部屋に佇んでいた。どうなっているんだこれは?
「夢かこれは?」
訳が分らなくて思わずそんな声が出た。
「そう夢だよ。これは君の夢さ」
楽しげだが、低い音程の男の声が僕の耳にが届く。
声がした方に眼をやれば少し前まで空だった玉座には人影が有り、ソレが返答してきたようだ。
人影――――そう、そいつは文字通り人影だった。
人の形を取ってはいるが輪郭がはっきりしていない。
まるで影が立体化して集まって、人の形を無理矢理に作ってるようにしか見えない存在だった。
頭には赤い宝石が嵌められた王冠を乗せており目と耳と鼻は存在しない。
口のみが確かな存在感を持って確認で出来るが、その口も大きく裂けたように横に長く両端は吊り上がり不気味な笑いを作っている。
いくら凝視しようとも黒い影の輪郭はぼやけ、王冠と口の中の真紅しか存在感を認識できない。
そしてこの人影はこの不気味な部屋を僕の夢だと言う。
だが僕の夢にしてはこの部屋と人影の存在は病的だ。
僕は善良な普通の高校生なのにこんなものを夢で見る筈がない。
だが、こうしていても仕方が無い。
この不気味な夢に疑問をもった僕は目の前の不気味な存在に声をかけてみることにした。
「お前ははいったい何者だ?」
「ハハハッボクはただの夢の住人だよ」
先程とは違う、妙にかん高い声で笑いながら返答する自称夢の住人。
夢の国在住の世界一有名な鼠を思い出す。
もしかしてあの鼠の親戚か何だろうかだろうかこいつは?笑い方も似ている。
「ハハハッそんな危険なマウス知らないなぁ」
チッ確信犯か、しかしこいつ僕の思考を読み取って会話してないか?
「そりゃあ、ボクは今君の夢の中の住人だ。つまり君の頭の中の存在なのだから君の考えている事くらいわかるよ」
自称夢の住人は声色を戻し僕の心を勝手に読んで返答してきた。
どうやら危ない鼠のマネはやめたらしい。
しかしこいつの言っている事が本当ならば、僕が思っていることは丸分りという訳か?
「そういうことさ」
どうやらまた、僕の思考読んだらしく勝手に返答してきた。
こんな性質の悪そうな夢の住人が出てくる夢を見ているなんて、僕の心の奥には相当深い闇が眠っているのだろうか?
早く醒めないかなこの夢……
「ああ、目を覚ましたいなら簡単さ、ボクの話を聴いて最後に返答してくれるだけで良い」
またまた勝手に僕の思考を読んだのか自称夢の住人が勝手に返答してくる。
正直腹立たしい。
それにこいつの語り口調は何処か胡散臭い、話なんて聞かないほうが良いのではないだろうか?
うん、帰ろう。僕の夢だ、起きたいと願えばおきれるはずだ……
「いや、待って!少しだけ!聞くだけ聞いてよ。君にとって良い話があるんだ。」
ん?何だ?
何故か慌て出した夢の住人が、手を伸ばし慌てるように振りながら僕を引きとめようとしてくる。
そして、こいつの良い話という言葉に妙に心を惹かれた自分が居る事に驚きもする。
良い話……なんだろう?少し気になる。
それに何故か分らないが、僕はRPGで良くある『はい/いいえ』の選択肢で『いいえ』を選んだ時に会話が最初に戻り、『いいえ』選ぶ限り無限ループする現象を思い出してしまった。
本当に意味が分らないがこいつの話は聞かなければいけない気がしてくる。
「良かった聞く気になってくれたんだね」
まぁ話だけならな。
「あぁ、それで構わないさ。じゃあ言うよ―――――君の特技を活かしてみないかい?」
そう言って、自称夢の住人は口の端を本来耳が有る部分までせり上げ今迄で一番不気味な笑みを作った。
特技を活かす?
剣道の事だろうか?
剣道自体はたしかにそれなりだが……
「違うよ。そっちじゃない最近もう1個増えたよね? 自らの技術を誇れることが」
「最近もう1個?」
最近は自堕落な生活を送っていた僕には特にこれといって変化の無い日々を送っている。
特別に何かを成し遂げたとか、そう言う事は記憶に無い。
もし、あえて挙げるならばDGで世界ランク2位になったくらいであるが、これ活かせる事というのは僕の頭では想像もつかない。
「そうそれだよ、その迷宮作成と迷宮防衛の知識を必要としている者が居るんだ。君にはその仕事を頼みたい 」
夢の中とはいえ言ってる事が突拍子もないな夢の住人は……
いったい誰がそんな知識を必要としているんだ?
「ボクは君らで言う所の派遣会社みたいなものを営んでいるのだけれどね」
「派遣会社って途端に現実っぽい話になったな……」
「まぁ、君に分りやすい様に言った物の例えさ、それにこれは夢の中の話だ。細かい事は気にしないでよ」
確かにこいつの発言を細かく考えても意味はない気はする。所詮は夢だ、適当に話を聞いて流してしまおう。
「で、その派遣会社がどうしたんだよ?」
「実はボクが無名なのも有ってね。ここ最近我が社は閑古鳥が鳴きっ放しだったんだ。でも、先程久しぶりに依頼が来てね」
「そりゃあ良かったな。でも、それと僕に何の関係がある?」
「まぁまぁ、話は最後迄聞いてよ。この依頼の蓋を開けてみれば迷宮作成とその迷宮の防衛なんて内容なんだ」
「そりゃまた、大変そうな依頼だな」
迷宮……うん、ファンタジーな感じがして夢っぽい。現実では有り得ない話だが、まぁ夢の中では有りなのだろう。
「うん、そうなんだ。正直ボクには専門外の依頼内容でね。ボクの所の『モノ』だけじゃ解決できそうにないんだ」
なんとなくこいつの言いたい事が分ってきた。
「あーつまり、僕にそれをやれと?」
「そうだよ。君は察しが良いね」
「なんで僕なんだ?」
「実績と経験が君に有るからだよ」
「僕は迷宮なんてゲーム以外で作ったこと無いぞ?」
「ああ、それは知っているよ。君はその点を気にしなくて良いよ」
「気にしなくて良いってどういう事だ?」
「環境が近いんだよ。君がやっているゲームに」
どういうことだ?環境が近い?モンスターでも居るとでもいうのか?
「まず、ゲームと同じで君が作業場所を指定すれば現地の土木作業員が迷宮の作成作業を行ってくれる」
「なるほどな。土木作業員ってのは夢の無い言い方だと思うけど、そこは納得しておこう。ちなみに肝心の防衛の方は?」
「迷宮の防衛も同じさ。君が場所さえ指定してくれれば依頼人の護衛を担当している者が配置に付いて防衛してくれる」
確かにそれならば、DGの操作を現実でやっているようなものだ。
僕でも出来るかもしれない……夢の中の戯言とはいえ少しだけ興味を惹かれる
「興味を持ってくれた様で何よりだ。」
確かに少し興味は持った。だが、夢にしてもこんな話突拍子が無い話だ。
「所詮は君の夢の話だ。突拍子も何もないだろ?夢とはそういう物だとボクは思うけどね…………そうだ!納得がいかないならこれは君が好きなゲームの話だと思えば良い」
「ゲーム?仮想の話としての前提で話せばいいのか?」
「うん。君は仮想の話だと思ってボクの話を聞いてくれれば良い」
「仮想の話ね。でも、そんなことをして僕に何の得がある?」
「そう言うなよ。目が覚めるまでの暇潰しだと思ってボクの話を聞いてくれれば良いさ」
暇つぶしか……確かに目が覚める迄この部屋でコイツと無言で佇んでいるのは流石に嫌だな。
「分ったよ。面倒だけど、少しだけ話に付き合おう」
「面倒がらずに話を聞いてくれよ。そうだ!興味が有るなら君がこの仕事を請ける前提で僕に質問してくれても良い」
ふむ……確かに、こいつの突拍子も無い話を一方的に聞き続けても気が滅入る。というか声を聞いているだけで頭がおかしくなりそうな不快感もある。
正直話もしたくはないんだけど……とりあえず気になっている事でも聞いてみるか。
「じゃあ質問がある」
僕がそう告げると夢の住人はニヤニヤした笑みを作っていた口を閉じた
「聞こうか」
そして、口を閉じたまま真剣な声色で聞き返してくる。
……んん?今どうやって喋った!?声は間違いなく玉座のほうから聞こえてきた。
まさか、実は玉座の裏に人がいてこいつはホログラムっていうオチか?
もしくは、実はあの王冠にスピーカーが取り付けられていて…………うん、少し気持ち悪いが真面目に考えるだけ無駄だな。
コイツは夢の中の存在だ。存在自体が訳が分らない物に細かい事を考えても疲れるだけだ。
さっさと質問をしてしまおう。
「なんで僕なんだ?DGの腕なら2位の僕より世界ランク1位の奴に話をもっていけば良いだろう」
「ああ、そっちも腕は良いんだけど問題があってね。現地には連れて行けないんだ」
「連れて行けないって、なんでだ?」
確か1位のヤツは常時DGをプレイしていて、ニートだって噂があった筈だ。
仕事を依頼したいなら、学生の僕よりそっちへ話を持っていくべきだろうって何真面目に考えているんだろうな僕は……
「彼はボクの話が通じない人でね。まったく話を聞いてくれなったんだ」
「あー確かにアレはDGに人生賭けてるって噂だからな。そんな話興味無いかもしれないな」
僕の冬休みの生活を省みるとあまり、世界ランク1位の事を悪く言えたものではないが……
「それにその1位より君の方が優れている点もある」
「優れている点?」
「君は良い『眼』を持っているからね。それは1位の奴との大きな差になる」
何か、目を褒めだしたぞこいつ。
自慢じゃないが僕は目付きが悪いし、姉にはゲームをやっている時は死んだ魚の目をしていると言われている。
視力だって人並みだ。
もちろん、僕の目は「死の線が見える」とか「本来見えない物が見える」特殊能力は無い。
そういえば中二くらいの時にそういうものに凄い憧れた時期はあったが……
まさかそういう願望が残っていてそれが夢の中に反映されていて僕にそんな能力があるキャラ付けしているのか?
「あぁ、うん。そうだよね。誰もが通る道だ」
回想終えて夢の住人見ると、口の形をニヤニヤさせた笑みの形に戻しこちらを見ている。
「ん?なんだ?」
あ……しまった、コイツは僕の思考を読めるんだった。
僕の中二時代の恥ずかしい記憶を見て笑ってやがるな!
「まぁ、誰しもそういう時期は有るもんさ、このボクだってそういう時期があったくらいなんだから」
そう呟き、夢の住人は中空を見上げ遠い眼をしている(こいつに目はないので仕草のみだが)
若干イラついた。
だが、僕の頭の中が読めるこいつに態々抗議するだけ時間の無駄だ。
勝手に読み取って僕がイラついてる事を理解しているだろう。
次の質問に移ってしまおう。
「お前がボクの腕を見込んだってのは分った。だけど、依頼人はこんなゲームでしか経験の無い奴に仕事を任せられるのか?」
「ああ、それは大丈夫だよ。ボクは以前アノ国で別の大きな仕事で実績を残しているからね。ボクの関係者だと言えば仕事をする分には信用は得られるはずさ」
あの国?
ああ、外国の設定なのか?どうにも日本と迷宮というのは結びつかなかったのでコレは良い設定だと思う。
しかし、逆に無名で閑古鳥が鳴いてる会社なのに大きな実績が有るというのは、良く分らない設定だな。
実力があるのに仕事が来ないという事は営業が下手なのか?
確かに夢の住人の喋りは胡散臭い、普段営業をしてる時もこんな感じなら信用は得られないだろう。
しかもこんな不気味な姿だ、余計に客足は遠のくだろうな……
僕は少し哀れんだ目で夢の住人を見てやる。
どうやらまた、勝手に僕の思考を読んでいた様で考えていた内容が図星だったのか夢の住人は肩をガックリと落としバツが悪そうに僕から顔を逸らしていた。
少し悪いことした気がするが、まぁさっきのお返しだ
少しの間をおいて、夢の住人は気を取り直したのか再び僕に問いかけてくる
「で、どうだい?もしだよ?この話が現実に有るとしたら受けるかい?」
「まぁ、面白いかもしれないとは思う」
「だろ?それにさ、君は今姉君と喧嘩して家に居辛いのだろ? 家も空けれて自分の才能を活かせる。渡りに船の話だよコレは」
家を空けるのは姉の機嫌が戻らなかった時の最終手段だ。
だけど、話自体は面白いと思う。
うん、もう少しだけ夢の住人 の言葉遊びに付き合ってやろう。
どうせ話をしているうちに夢も覚めるだろう。
話にもう少しだけ付き合うことにした僕は仕事の内容の問題点を指摘することにした。
「もし、これが現実の話なら僕はこの話を断ると思う」
「え!?何故だい?君の願望を叶えるには最適な仕事だよコレは」
夢の住人は不満そうに口をへの字に曲げて何が不満なのか理解できないと言う風に僕に問い掛けてくる。
「仕事を行う上で何点か問題がある」
「どんな問題だい?可能ならばボクがその問題点を改善してみよう。その問題点とやらを言ってみなよ」
「まず、依頼人は護衛が居てもそれだけじゃ足らずに今時迷宮なんて馬鹿げた物を作ろうとしているんだろ?」
「そうだね」
「そんな物を作ろうとしている理由は何だ?もしかして、凶悪な敵が存在していて護衛だけじゃ解決出来ない状況なんじゃないのかこの依頼人は?」
「彼女は……あぁ、この依頼人は可愛らしいお嬢さんなんだけどね。彼女の家の家宝を狙っている盗賊みたいな連中に家を襲撃されていてね」
いきなり物騒な設定が出てきたな……
「つまりその、盗賊にみたいな連中から身を守る為に迷宮を作るって仕事なのか?」
「そういうことだ、現在彼女は家宝を持って逃げている最中なんだ」
「護衛だけで事足りない状態なのか?」
「うん。逃げていた先でも何度も襲われて護衛が何人も殺されている」
「つまり、僕が現地に行ってその依頼人と一緒に行動していたら僕にも命の危険性が有るってことだよな?」
「そうなるね。そこはボクも対策を立てようと思っているよ」
「対策ってどうやって対策するんだ?現実だって仮定するなら、命の危険が有る仕事なんて僕は受けないぞ」
「それについてはボクの所から特別に君を守る『モノ』を付けようと思う」
守る者?僕に専属のボディーガードか何か付けてくれるって事だろうか?
「君に付けるのはその道のプロさ、荒事をやらせたら現地で雇っている護衛よりもずっと役に立つはずだよ」
「つまり、僕の命の危険は無いってことか?」
「無いとは言い切れない。例えば、ボクの想定外の事が起きたりした場合は命の保証はしかねるね」
「なるほど……まぁ想定外の事は起こるものだしな」
こいつの言葉にも一理有る。何事にも想定外の事は起こるものだ。
例えば……姉の大事にしてた花瓶割って殴られたなんて事は記憶に新しい。
姉と一緒に食事中に間違って姉の服にソースを零して顔面を殴られ食事が血の味しかしなくなった、なんて事も有った。
姉が入っている風呂場に間違って入って全身をボコボコにされる。姉弟なのに何故あんなに怒っていたのか理解できないし、あの怒りは僕の想定を超えていた想定外と言えるであろう。
姉の通販サイトのアカウントで触手陵辱物のエロゲーを購入して、後日購入履歴でバレて腕を折られた。うん、あれは本当に想定外だった。
姉との剣道の稽古を忘れていて、すっぽかしてしまい後日稽古に10時間つき合わされ、動けなくなり救急車で運ばれた。この歳で過労で死に掛けるというのは想定外だな。
その他にも姉が――――姉が、姉に姉、姉姉姉――――姉ちゃん怖い!
「えーと……ゴメン、もう質問は無いかい?」
夢の住人は僕の思考が姉とのハートフルな思い出に浸って震えが止まらなくなった時に様子を伺う様に声をかけてきた。
危ない危ない、余りに濃い思い出過ぎて、姉との事しか考えられなくなる所だった。
頭を切り替えて質問に戻ろう。
「じゃあ、もう1個質問だ」
「なんか君アレだよね。仮定だって考えてるクセに質問多いよね」
「なんだよ、お前が現実と仮定しろって言ったから真面目に考えてやってるんだろ?」
「あーうん、そうだね。これは失礼をした、素直に謝ろう。そして君の真面目さを賞賛しよう。では、質問をどうぞ」
夢の住人は本当に申し訳なさそうな声を出して僕に謝った後に、急に明るい声になり僕を賞賛してくる。
アップダウンの激しいやつだ。ちょっと情緒不安定なんじゃないか?こいつ。
「さぁ、質問を続けてよ。ボクは君の疑問に何でも答えよう」
「じゃあ……依頼人は盗賊から逃げているらしいけど、警察とかに保護してもらうわけには行かないのか?」
「残念ながらそれは無理だ」
「なんで無理なんだ?」
「彼女はもう国家権力の庇護は受けられないんだ。だから古い洞窟と遺跡を流用して迷宮を作って篭城しようとしている」
警察の庇護を受けられない……悪人なのだろうか?でも、流石に悪人や犯罪者でも、迷宮を作るって選択肢は無い。
普通はもっと別の場所に逃げるか隠れるだろ。例えばそうだな……こう、国家権力が及ばないスラム街とか、仲間の組織に匿ってもらうとかさ。
そう、考えると迷宮を作って引き篭ろうなんて発想がRPGの魔王ようだ。
「ゴメンゴメン。語弊があった。というか君は依頼人を誤解している」
僕の依頼人のイメージが『女魔王』になりかけた頃、夢の住人は慌てて訂正を入れてきた。
「誤解ってどの辺りがだ?魔王か?それとも依頼人が悪人な事か?」
「どっちもだよ。彼女が国家権力の庇護を受けれない理由は彼女が居る土地が敵国に攻められていてね。政府機能が消失しているんだ。ちなみに今君が思っている様な悪人でもない」
また何か凄い突拍子も無い事を言い出したな、設定盛りすぎだろ。
「現地は紛争状態だからね。盗賊みたいな連中も大手を振って現地を歩けるわけさ」
「なるほど。でも国がその状態だと、迷宮に進入してきた盗賊を護衛の人達が捕まえても引き渡す先が無いないんじゃないか?」
「ん? 何言ってるんだい? 捕まえる必要なんて無いさ、そのまま始末してしまえばいい」
一瞬AO での嫌な見た嫌な光景が脳内を過ぎる。
血に染まった大地、切り裂く肉の感触、そして泣き叫ぶ――――やめよう考えるな。
話だ、話を続けよう。忘れるんだ僕
「――――それは流石にまずいだろう。倫理的にも盗賊の人権的にも」
「紛争状態なんだ。あの土地には倫理も何も有ったものじゃないよ」
「そんなに酷い状況なのか?」
「ああ、酷いね。紛争を起こした連中は、現地の住民をまるで狩りをするように楽しんで殺している」
「酷いな……そんな事が許されるのか?」
「許す許さないは個々の価値観だよ。だけど、そんな奴等が多く居る地で人権とやらを気にする事はないだろ?自分が人権や倫理を守っていても相手は気にしないで殺しに来る」
「相手に合わせて、自分が同じ位置まで落ちる事はないじゃないか!」
「アレ等の人権を踏みにじったとしても罰せるものなんて居ないんだ。君が気にする事はないよ」
なんだろう?こいつの話は何かがズレている。
人を殺すのは良くない、というのは僕達日本人に大前提で理解されていることだ。
それを破るからこそ罰せられるのである。
だけど、こいつの言い方だと罰せられるから殺さないという言い方だ。
前提となる考え方が違うのかも知れない、何か大きなズレを感じる。
でももし、こいつの話を肯定してしまったら僕は……いけない、また嫌な記憶が脳裏を過ぎる。どうしてもAOの記憶を思い出すと動機が激しくなる。これ以上考えてはいけない。
「―――それでも、人を殺すのは良くないと思う」
「そうかい?ならまぁ、君は殺さなければ良いさ」
「じゃあ、どうするんだ?」
「殺傷用の罠じゃなく捕縛用の罠でも作って捕縛した後に現地の者に引き渡して、始末してもらえば良い」
誰かが人を殺さなきゃいけないのに自らが手を汚さないで誰かが人を殺すのを見ているのは倫理的にどうかと思う。
そしてその状況でこの盗賊とやら殺さないとしたらそれは偽善だろう。だが、誰が何と言おうと、状況が何だろうと、僕は自分の手で人を殺したくない。
だからこれが妥協点だろう。はっきり言ってこんな会話はしたくない。早く済ませるべきだ
AOでの体験を思い出してしまう。もう2度とあんな気持ちにはなりたくない。
「――――あぁ、うんそれなら妥協でき……る」
「うん、理解が得られたようで何よりだ」
理解なんかしてない、考えたくないからさっさと妥協点を出しただけだ。だが、それはそれとして、今の説明に引っ掛かることが有る。
現地の人が殺しを許容しているなら、自分達で殺傷用の罠とやらを作って自分達で処理すれば良い話だ。
でも、なんかこの話僕が罠を作る流れになってないか?
「なぁ、罠って土木作業の人達か護衛の人達が作るんだよな?」
「ん? 何言ってるんだい君が作るんだよ?」
「作れるわけないだろ!」
有り得ない返答に思わず、語気を荒げて突っ込んでしまった。
「えっ!作れないの!?」
夢の住人は僕との会話で初めて驚いた声を上げた。
「大体なんで、僕が作れると思ったんだ」
「だって、君の記憶に知識が有ったから作れるものかと……」
何を言ってるんだ夢の住人は、そんな知識普通の高校生が持っているわけがな………………あ、持っていた……
あれは確か中二になったばかりの頃だったと思う。
僕は俗に言う『中二病』に罹りかけて、伝説の剣や妖刀等の謂れの有りそうな物に妙に興味を惹かれていた時期があったのだ。
そしてその類の知識を無駄に調べている時期が有った。
当時ネットや図書館でその手の知識を得ていたのだが、そこから色々な物に派生して普通なら読まないような本にも手を出した記憶がある。
確か……そう、本の名前は『世界罠辞典』だったと思う。
古今東西の罠が掲載されており、使い方から製造方法まで記述されていた。
『拷問器具辞典』も有ったけどそっちは気持ち悪そうだから見るのを止めた記憶があり、そちらの記憶の方が鮮明な位の記憶だ。
つまり、これは完全に僕は忘れていた記憶だ。
夢の住人はそんな事も知っているのか……?僕の頭の中の存在だとしたらそれも有りなのだろうか?
「だけど、僕はもうあの本に書いていた事なんてほとんど覚えちゃいないぞ」
僕がそう夢の住人に告げると、夢の住人は両手を肩の位置まで挙げ手のひらを上に向けた。
そして、軽く顔振りヤレヤレといったジェスチャーをしながら僕に語りかけてくる。
「仕方ないね。久しぶりの依頼だ。特別サービスで作る『モノ』もこちらで用意しよう」
「用意って護衛の人みたいに罠を作れる人を用意してくれるのか?」
「ああ、本当は追加のオプションは一つだけなんだけどね。 三つ目も君に付けよう」
特別サービスの追加オプションって……自分の部下だからって人をゲームの予約特典みたいな言い方するのはどうかと思う。
夢の住人の人間性に疑問を持ったが、わざわざ言及するのも億劫なので話を続ける。
「三つって、罠を作る人と僕を護衛してくれる人ともう一人は?」
「現地の言語を君に伝える『モノ』だよ。本来これのみが追加オプションの予定だったんだ」
「通訳さんか?確かに外国に行くなら必要だな」
「ああ、聞いて驚け!ほとんどの存在する言語を扱える凄いモノさ」
「凄いな、でもそんなスペシャリスト達が居るなら僕はいらないんじゃないのか?」
「まぁ能力は有能でも『アレ』等は単体じゃうまく行かない事が多くてね」
「単体じゃうまくいかないってどういうことだ?」
「どうにも応用が利かないんだ。どうしても指示出す者が必要になる」
「ふむ、なんか有能なのにガッカリな人達だってことは分った」
「そういう『モノ』なのですまないが、罠を設置する場合は君が設置場所に一緒に行って『アレ』に指示してやる必要があるんだ。それは大丈夫かい?」
「しょうがないな、護衛さんも付いて来てくれるんだろ?」
「ああ、その点については問題ない。そっちはまだ融通が効く方なんで君に危機が迫れば指示を出さなくても君を守ってくれる」
そりゃそうだ。守ってくれって毎度言わないと守ってくれない護衛なんて意味がないだろう……
この時には僕は段々と、この夢の住人との現実では有り得ない言葉遊びが楽しくなってきていた。
最初は不気味で訳のわからないことを言っていると思っていたが、考えてみればこいつは僕の夢だ。
僕の隠された願望か夢という形なって現れているのかもしれない。楽しくて当然だろうと勝手に納得していた……
「他に何か質問は無いかい?」
そうだ、重要なことを聞き忘れていた。
「これは派遣の仕事なんだろ?じゃあ僕への給料と仕事の期間はどうなっているんだ?」
夢の住人は一瞬ビクッと体を震わす。まさか、そこの設定は決めていなかったのか?
「君はこの話を夢だと思っているのに随分現実的な事を聞くんだね」
「まぁ、夢の中の戯言だとしても仕事やると仮定して話しているんだろう?」
「それは……うん、確かにそうだね……」
「ならこれは一番重要な事だろ?一番重要な事を抜く理由は無いはずだ」
夢の住人は返答をしないので僕は続けて喋り続ける
「給料が高ければモチベーションも上がる。仕事ってそういうもんだろ?」
「君確か……学生だったよね?その君がボクに仕事を語るかい?普通」
「まぁ今のはうちの親父の受け売りだけどさ。仕事する上で大事な事じゃないか?給料って。お前もその為に働いてるんだろ?」
「あーうんそうだね、君のいう事はもっともだ。君がこの仕事を現実的に考える為には報酬の明示は必要ってことだね」
「だな。だけど、現実的な事にこだわるならまだ問題があるぞ」
「はぁ……今度はなんだい……」
心底疲れた風に夢の住人が溜め息を付く。その様子を見てほんの少しだけ心が痛むのは何故だろう?
少し言いすぎだろうか?いや、現実性を求めてきたのはこいつだ。そこの所はしっかりするべきだと僕は思う。
「お前が行った通りに僕は学生だ。今は冬休みでニートみたいな生活を送っているけど、冬休みが終れば学校に行かなければならない。そこの所どうする?」
「ぁー本当に細かいな君は……夢も何もあったもんじゃない。仕方無い……少し時間をくれ考える」
そう言うと夢の住人は腕を組み何かを考えるようにして押し黙ってしまった。
ときおり、「ウーン」だの「失敗した」だのと思い悩んでいるようだった。
とんでもない設定はスラスラ出てくるのに、こういう基本的な設定は忘れていたのだろうか?
しばらく思い悩んだ後、夢の住人はポンッと手を叩きまたニヤニヤ笑いで喋りだした。
「よし、そうだね。じゃあこうしよう、報酬はボクに事前に支払われる『モノ』があるので3分の1を事前報酬として君に支払おう」
「ん、つまり事前に給料はもらえるってことか?」
「そうだね。後は依頼を無事に完了した場合は成功報酬も支払われるので、そこから君にまた同じだけ完了報酬として支払う形でどうだい?」
何故だろう?詳しい金額を言わない、なんか隠してないか?こいつ。
「詳しい金額は?」
「アノ国での報酬をうまくこちらの金銭価値に合わせられないけれども…………そうだな。恐らく君の国でも報酬を合計すれば数年は好き勝手やって生きていけるんじゃないかな?」
具体的な金額の話はぼかすか……やはりこういう所は胡散臭い詐欺師と話しているみたいだ。
「ボクは夢の住人なのだからそういう世知辛い話には疎いんだ」
僕が細かい事を聞き過ぎたのが不満なのか、夢の住人はまた口をへの字に曲げ不満そうにしている。
まぁでも、話の感じだと高校生の僕には破格の金額なんじゃないだろうか?コレは。
このあたりで納得しておいてやるか……
「分かった。じゃあそれはそれで納得しておく、だけど気になる事はまだ有るぞ」
「あぁもう、次はなんだい?」
「事前報酬と完了報酬だって言ってたけど、普通派遣の仕事って日払いか月払いの自給や日給じゃないのか?」
確か通常の派遣会社の給料形態というのはそういうものだったはずだ。
「…………実を言うとね。こちらの都合になって申し訳ないのだけれど、依頼人から事前に支払われる報酬以外に今、君に支払えるモノがボクの手元には無いんだ」
「あぁ、会社が傾きかけているわけか……」
「なんせ随分長い間依頼を受けていなかったのでね……」
なるほど、先程ビクッとしてたのはそれが理由だったのか……
どうせ夢の設定なら莫大な報酬でも約束すれば良いのに設定に拘る奴だ。
「つまり、事前報酬以外に今支払えないから一括で支払うから我慢しろってことか?」
「申し訳ないけどそうなるね。ボクの方でも維持費やら何やら色々ギリギリでね」
それなら、一括払いじゃなく日割りで毎日振り込んでくれれば良いと思うのだが……振り込み手数料が惜しいとかだろうか?
まぁ、これ以上この話を突いてもこいつを困らせるだけだな。
もう一つの質問に移ろう。
「で、もう一つの問題の方はどうする?」
「君が学生だという事かい?」
「あぁ僕は学生だからそんな長期間海外になんて行ってられないぞ」
「それについては仕事の完了条件が決まっていてね。その完了条件を満たせば君の仕事は終わりなんだが、それがいつになるかはボクも分らない」
「いつになるか分らないってどういうことだ?」
「依頼人とその仲間が命の危険を感じず暮らせる安全な迷宮を作る。もしくは依頼人が元の家に戻る環境を作る。これが完了条件だ」
「それって、実は物凄く長期の仕事になるんじゃないのか?」
「そうだね。その可能性も有り得るけれども逆に迷宮の防備をガチガチに固めれば、盗賊たちも諦めて直ぐに依頼完了となるかもしれないね」
つまり依頼人が納得しないうちには依頼完了とはならないのか……
「それは困るな確かに僕は姉の件で家を出たい気持ちもあるがそれは短期間の事だ。冬休み明けには家に居ないとまずい、不確かな期間だと働く訳にはいかない」
「うん、だから君はいつでも自分の裁量で仕事を辞めて家に帰って良いよ」
「帰るって外国なんだろ?どうやって帰るんだ」
「ああ、僕のほうで送迎はできるよ。君が働く予定の場所から乗り物で半日の距離で君の国へ帰れる場所がある」
「帰るときの交通費は出してくれるのか?」
「もちろん、それもボクが負担しよう」
「それならいいが、そうすると気になることが一つ出てくる」
「また?本当に細かいな君は…………今度はなんだい?」
「僕が仕事を途中で投げて帰っても大丈夫なのか?」
「大丈夫ではないけれども、君が現地に行った時点でボクに事前報酬が入る契約でね。完了報酬は惜しいけど事前報酬だけでも十分な量だ」
「それ、僕が抜けたら契約違反になって報酬も返さないといけないんじゃないのか?」
「君が途中で仕事を投げてもボクが報酬を返却する必要は無いよ」
「ん?そういう契約なのか?」
「違う違う。君が抜けたら彼女達は死を待つのみだ。死ぬ者達に返却する必要は無いだろう?」
「そんな話を聞いたら辞めれないだろうが!」
思わずコイツのふざけた返答にまた語気が荒くなった。
そして、夢の住人は悪びれた様子も無くあの耳まで割けたニヤニヤ笑いを作り楽しそうな口調で語りかけてくる。
「君が気にする事はないよ。君が依頼を受けなきゃどうせ助からない娘だ。君が現地に居る間少しだけ命が延びるんだ、今すぐポックリ死ぬよりは良いと思わないかい?」
「それを、気にするなって言っても無理な話だ」
「そうかい?ボクは気にしないけどね」
どうにも夢の住人とは価値観が合わない。
恐らく死生観が僕とは大幅に違うのだろう。
「それに君なら、もしかしたら短期間で依頼完了条件を満たせるかもしれない」
「それは買いかぶり過ぎだ。僕はただのゲーム好きの高校生だ。例えDGの知識や経験が流用できるとしても、実際それ等がうまく現地で使えるとは限らない」
「まぁ君は自分の本質を……」
夢の住人が諭すように語りだした時だった。
ギッ!!
一瞬不快な音が流れた後に、視界がブレた。いや、違う。
この部屋の存在がユラユラと揺れているのだ。
そして、ユラユラと揺れながら存在感が薄くなって夢の世界が消えていく。
僕が辺りを見回してる間にも、次々と視界の端から壁が消えていき壁の向こうには暗黒の空間が広がっていた。
「フム、依頼人の限界が近いようだ。そろそろ回答を貰って良いかい?」
部屋の現状に驚愕している僕に影で構成されている体がほぼ消えかけた夢の住人が答えを求めてくる。
「依頼人の限界ってなんだ?この状況と何か関係があるのか?」
「それは仕事を請けてくれればそのうち説明するよ。早く回答をしてくれ!」
夢の住人の口調は余裕がないのか早口になり語気も強いものになっている。
もしかして、この夢の住人の余裕の無さは、もうすぐこの夢は終るという事なのだろうか?
「んー現実ならこんな危険で重い事情の仕事は破格の給料でも受けないだろうけどね。まぁ、続きを夢で見れれば面白いかもな」
「つまり、今君が生きている世界では難しいが、他でなら仕事を請けるという認識で良いかい?」
偶にコイツは良く分らない言い回しをする。他というのは夢の中という事だろうか?
その点を突っ込んでも良いが、夢の住人も急いでいるようだ。
いい加減にコイツとの会話も飽きたので突っ込まないでさっさと会話を終らせよう。
それに、最初は突拍子も無いと感じた夢の住人との会話だが仮想の話と思えば中々楽しめる話だった。
会話を楽しませてくれた礼に最後くらいコイツに気を使って良い返事をしてやろう。
「あぁ、そう言う事になるな」
どうせ、もうすぐ終る夢の話だ。
どんな返答をしても現実に影響が有る訳ではない。
次に夢を見た時にこの仕事の夢だったら面白そうだとは率直に思う。
「契約完了だ」
夢の住人は、嬉しそうな声で一言そう言った。
黒い部屋は着実に消失を続けている。
残っているものは僕と、王冠以外ほとんど見えなくなった夢の住人と消えかけた床のみになっていた。
「で、話を聞いて回答したんだからこの夢は覚めるんだよな?」
「ああ、君ハ間もなク目を覚ます」
「そうか、じゃあ、お別れだな中々楽しかった。後、不気味なんて思って悪かった」
「ああ、別にそんな事は気にする事ないヨ。ボクと初対面だと必ずそういう印象を持つことにナる」
「不気味に見えるってことか?」
「その通り。だから君は気にしなくて良イ。それに君が今からする苦労ニ比べればこちらが申し訳ないくらいだ。大変ダと思うが、まぁ死ななイ程度に頑張ってくれ」
「ん? ああ、この仕事の話か? 続きの夢を都合よく見れれば頑張るよ」
フッと床の感触が消えた。
「ドウヤラ、時間切レノヨウダ。続キハマタ度ニシヨウ。さらばダ」
また?また夢にコイツは現れるのだろうか?それに喋り方も何か変だ。
その事について聞き返そうとしたが、別れの言葉を告げた夢の住人はもう王冠を残して消失していた。
僕の体も霞のように消えていき意識が薄れていく……
最後に見えた物は王冠に輝く赤い宝石のみだった。
中心には黒い物が見えまるで、赤い眼のようだった。
時刻不明――――――――名無しの遺跡3層
頭が痛い――――
目を覚ました僕が最初に感じた感覚は頭の痛みだった。
それに続きいつもの寝起きとは違う違和感を感じた。
僕が寝ていたのは、いつも僕が使っている柔らかいベットではなく冷たく硬い石の床の上だった。
体を起こして周囲を確認する…………現実では有り得ない状況が確認できた。
僕の足元には黒い石の床があり、その床には巨大な魔方陣らしきものが描かれていて定期的に紫の光を明滅させている。
壁も一枚の黒い石の様な物で構成されており、松明が取り付けられていた。
まるで先程まで見ていた夢の部屋のようだ。
だが先程の夢の部屋とは違いこの部屋からは東、西、南、に一本ずつ通路が有った。
そして、通路が無い北側の壁の前に人影があった。
僕から壁までは2メートル程有り、そこには真紅のドレスを着た紫色の髪の少女が居る。
少女は唇の端から一筋の血を滲ませ、呆然とした表情でこちらを見ている。
少女が呟いた……
「騙されたどうして、人間なんかが来るんだ……」