傭兵が辞めた後の世界状態
旅が終わった。
キルキアリー・オードの使命は果たされた。彼の命によって。
だがしかし、実際にはどうなのだろうか。彼は「柱」のための存在。命というのは、彼にとっては道具だったのかもしれない。でも、そんなことがあったら……。
今更だ。聞きたいことがたくさんある。知りたいことがある。でも、知ったこともある。
「残念だったね……お気の毒に」
「ありがとう、おばさん。最期まで母の近くにいてくださって」
「いいや、これくらいしか私にゃ出来んのさ」
母が死んだ。病によって床に伏していたらしい。手紙を届けなかったのは、それが不治の類だったからだとか。とにかく、母は私に報告するのを嫌がったらしい。
「久しぶりです、リガルトンさん」
「レスイートか」
母が死んでから、私は孤児院に金を寄付するようになっていた。そのために、再び猟師になった。傭兵は辞めた。成長期の子供には食料が必要だ。気がつくと、狩った動物も与えていた。毒性を持つものが少ないため、院長も喜んでいた。
「何故はるばるここへ?」
「はい。リガルトンさんに、キルからの伝言を」
「伝言? 彼がか?」
オード一族ということもあって、私は彼には少しきつく当たっていた。今思えば、なぜそんなことをしたのか自分でもよく分からない。羨ましかったのかもしれない。はっきりとした使命を持った彼が。
「あと、彼が最期に言った言葉を届けようかと」
「そうか……わざわざすまない」
「いえ。そういえば、探し物は見つかったんですか?」
「……ああ、見つかったよ」
これは、傭兵の物語。旅を辞めるとともに見つけた答え。
彼の遺言とも解釈できる言葉を胸に刻む。
故郷に帰って、「世界」を知った。
亡き母よ。あなたこそ、私のたった一つの世界でした。