7-13
いや、わかってる。わかってるんだ。本当は、僕はわかってる。今こうして悩んでいるのは、というかそういうして見せているのは、「もう何もしたくない」という本当の欲求を覆い隠すだけなんだって。こうしてグズグズして、誰かが何とかしてくれるのを待ってるだけなんだ。
どうすべきなのか、どこへ行くべきか。そんなの、一つしかない。あの人以外に答えを出せる人はありえない。
だけど僕は部屋から出られない。
「希望が信じられなくなる」って言うのは、これまで何度も目の前で希望が死ぬのを見てきた人間にありがちだ。それはいつだって目の前にある。なのに蜃気楼と同じで、掴もうとすると手をすり抜けて消えてしまう。
小学校の頃は得意だった教科が、中学に入ると同時にまったく理解出来なくなる。友達だと思っていた奴が無視をする。楽しみだった修学旅行とか学園祭ってイベントが苦痛でしかなくなる。何にでもなれると思っていた自分が、実は何にもなれない脱落者だった事を知る。
なあ、希望がないんじゃないんだよ。希望が最初から何にもなければ、それはそれで生きていける。問題なのは、常にそれが目の前でチラつくって事なんだ。
今まで何度も裏切られながら、それでも愚かにも僕は光を目指して歩き続けた。どれだけ歩いても、いつだってそこにあるのは暗闇だけなのに。
海里だってそうだ。やっと見つけた僕の光なのに、結局、届かなかった。
その日は一度も階下に行かなかった。食事もせず、かといって眠る事も出来ず、うちひしがれたまま僕はじっと暗闇で息をしていた。
久々に朝起きたのに、やはり夜は眠れない。一睡も出来ないまま朝が来ても、体の内に降りた夜の帳は永久に明けないような気がした。
朝が来て、昼が来ても、体が泥のように重くて布団から出られない。なのに一睡も出来ない。どうしても眠れない。内蔵を掴み出されるような絶望が、僕を現実世界に繋ぎ止めている。もっと苦しめ、と言わんばかりに。
ふと、酒を飲んだら少しは楽になるだろうかと思った。実はあれから何度か海里と一緒に挑戦してみて、僕はその度に吐き出しちゃあ「あんたは味覚が向いてないんだって」と彼女に笑われたんだけど、今ならいける気がする。この陰鬱な気分が和らぐなら、あの不快極まりない苦みもきっと耐えられる。
布団から出ようとして、すぐにまた躊躇った。下には母親がいるじゃないか。どうやって冷蔵庫まで行くんだ。




