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1-5

 そんな僕をあざ笑うように、頭の芯は覚醒している。意識は淀み、常に呆然としているのに、どこかで何かが眠りを拒否している。

 結局は繰り返しだ。新しい明日が来ると思い込みながら、永遠に同じ日を繰り返す。何も築けず、誰とも会えず、何も出来ない今日が二十四時間ごとにやって来る。

 


 以上が僕の一日だ。いやはや、養鶏場のニワトリが聞いたら笑い死ぬだろうよ、「こんな生産性のない奴を育ててどうする気だ?」って。そりゃあニワトリたちは早かれ遅かれフライドチキンにされる運命だけど、少なくともそうして誰かの役には立つ。本人の意思はどうあれ。



 僕はどうだろう。この閉ざされた部屋というブロイラーでは少なくともニワトリよりは長生き出来るだろうけど、最終的に誰かの役に立てるだろうか。首を切られ羽根をもがれ、煮立った油の中に放り込まれるニワトリと僕、どっちが幸福だろうか。他人の目で見たら、どっちに価値を見い出せるだろう。

 僕は目を閉じながら考える。病気になったなら、どんなにいいだろう。体の奥底に癌が見つかり、余命数ヶ月で、自殺する手間すら省け、もう何も希望を持たず絶望もせずに済むなら、どんなにいいだろう。



 内藤涼くん、君は何故学校に行かないのかな? 何が嫌なんだい?

 僕は長い間、この質問に対する的確な答えを探しながらも、どうしても見つけられないでいた。

「嫌だから嫌だ」、これが多分一番近いと思うけど、こんな答えじゃ誰も納得しちゃくれないだろう。

 なあ、わかってくれ。僕は確かに勉強も運動もまったく出来ないし友達も一人もいなかった。集団に溶け込めなかったし、他人と足並みを揃えられず、何をやっても僕一人だけズレてた。

 教師や親に幾度となく「何でお前はそんな事すら出来ないんだ?」って聞かれたよ。僕はその度に答えようとした。僕の要領の悪さは、人付き合いの下手さは何に起因するのか、どうやったら治るのか? 何故僕は何をどうやっても人並み以下でしかないのか?



 この事に関してはとうとう「わからない」以上の結論は出なかった。そして今もそのまま放ったらかしになっている。だって、わからないんだからしょうがないじゃないか。こっちが聞きたいくらいだ。

 さて、中学二年になったある日の朝の事だ。僕はその日、学校に行かなかった。

 前からそう計画していたわけじゃない。ある日突然、そんな気分になったんだ。「もういいだろう」って。もういいだろう。あそこへ行かなくたって、もういい。そう決意し、布団から出る事すらせず、頭からタオルケットを被って息を潜めていた。



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