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それともそんな素振りを見せて、海里の事を本当に心配しているんだとアピールしたいのか? そうする事で、彼女の好意が欲しいのか?
このうちのどれか一つだけが正しいとは言えなかった。色んな理由がコーヒー牛乳みたいに複雑に混ざりあっているから。
様々な疑問の詰まったボトルを台座に置き直し、僕は家を出た。足取りは軽いとは言えなかった。
この時、僕は中学三年だった。前にも行ったっけ? 十五歳なわけだが、今こそ告白しよう、僕は一人で電車に乗った事がなかった。親と一緒か、あるいは小学校の遠足の時だけだ。
最寄り駅は早朝だけあってごくわずかな人しかおらず、まだ半分眠っているような顔で改札へと吸い込まれて行く。
さて、どうやって切符を買えばいいのか。いやいや、あの自動販売機みたいなのにお金を入れたらいいって事はわかる、定期券を持ってない人はみんなそうしてるんだから。だけどあのボタンは何だ、何で駅名とかが書いてないんだ? どのボタンを押せばどこまで行けるんだ?
駅員に聞くという選択は避けたかった。世間知らずのバカだと思われたくなかったんだ。
しかも港区の駅に行くには乗り換えという高等テクニックを駆使せねばならない。出足でいきなりつまずいた僕は、しばしちょっと離れた場所から自販機を睨んだ。
ふと、焦点の位置を下げて全体像を捕らえると、自販機の上の方にでっかいボードがかかっている。それには色んな駅名が書き込まれていて、乗り換え地点の駅の名前もあった。二百八十という数字も……に、二百八十……秒で、着くのか?
その時、僕の中の名探偵コナンが目を覚ました! あの数字と自販機のボタンの数字が対応しているに違いない!
コインを数枚、機械に流し込んでボタンを押し、無事切符を購入した僕は堂々たる気分で改札を通り抜けた。「こんな事は出来て当然じゃないか」という表情を周囲に振りまきながら。
切符の買い方を修得出来ただけでも外に出た甲斐があるというもの。さあ、電車に乗ろう。
しかし再び新たな関門が僕の前に立ちふさがるのだった。階段を上がって二つの線路を跨ぐ渡り廊下みたいなとこに出たのだが、奥と手前と両方に下り階段がある。どっちへ行けばいいのか?
もし間違った方向に乗ったらどこか見知らぬ土地に連れて行かれ、警察に捕まるに違いない。




