6.ホームレスに海里の事を聞きに行く
翌週のゴミの日まで、僕は毎日海里に会いに行った。もちろん本を山ほど持ってね。小説もそこそこあったけど、漫画が多かったかな。
ある日、僕が持ってきた本の山をサイドテーブルに積んでいると、彼女は寝椅子から身を乗り出して、そのうちの一冊を手に取った。ぱらぱらめくりながら、文字の羅列に眉をしかめる。
「何の本?」
「永野のりこ。読んだ事ない?」
「知らない。面白いの?」
僕はちょっと考え、そして正直なところを答えた。
「胸が痛くなる」
「何それ?」
訝しげに笑う彼女に、僕は「電波オデッセイ」の一巻を渡した。
「最初から読んでみるといい」
その日は並んで一緒に本を読んだ。僕は何か小説を読んでたんじゃなかったかな。スティーブンキングだったと思う。
海里は集中力があまり持続しないらしく、最初の頃は頻繁に話しかけて来たのだが、本の半ばまで来るとそれも減っていった。終盤になると完全にお喋りは途絶え、本を閉じると二冊目に手を伸ばした。
「なるほど」
彼女は呟いた。
「胸が痛い」
「この世に誰か一人でも、わかってくれる人がいるのって……」
多分聞いていないだろう思って言った事だったが、海里はちゃんと横目で僕を見ていた。ちょっと恥ずかしい台詞だったので僕はいったん言葉を切ったが、このまま飲み込む事も出来ず、結局口にしてしまった。赤面しながら。
「嬉しくない?」
「どゆこと?」
「えーと……」
僕は空っぽの人間だ。人付き合いも出来ず、勉強も出来ず、人に自慢出来るような事も何もない。道ばたを転がるビニール袋みたいな人格の持ち主で、自分の意見なんか何にも持ってなかった。ただ風に流されるだけだ。




