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4-7

 彼女は死んでいなければならなかったのだろうか。本当の津田海里は、いったいこの世のどこで何をしていたのだろう?



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 夜が明け切る前に家に帰った。

 自分の部屋の淀んだ空気は、少しずつではあるが僕に馴染まなくなりつつあった。僕の方が変わってしまったからに違いない。体が受け付けなくなっている。

 何故か? 当然、あのヨットの上で浴びる風を知ってしまったからだ。そして、それに含まれる海里の息吹も。



 前までは海里の前にいると居心地が悪かった。気まずくて、居づらかった。だが今となっては逆転し、この部屋こそ牢獄のように息苦しい場所になりつつあった。

 ボトルを手に取り、ネックから胴へ至る滑らかな曲線にそっと指を這わせる。この部屋に無いものは、僕が欲しかったものは、みんなこの中にある。

 海里のところへ行く時は必ず夜中から明け方にかけてにしている。他の時間帯だと僕がいない事を母親に悟られてしまい、面倒な事になりかねない。



 まあ、当然というか何と言うか、この頃の僕の年代の男の子ならみんな経験しただろうけど、母親は僕の部屋にノックせずに入る権利が当然あると思ってたらしいから。最初のうちは、まだ僕がここまで無気力になる前まではいちいちその事を指摘していたんだが、何度言っても向こうが聞き入れる気がまったくないとわかってからは、もう放っておいた。

 君らが当時の僕に近い年齢なら、わからないだろうな。だって僕の、あるいは君の母親が思春期の頃にだって、間違いなく同じ思いをしたに違いないじゃないか。例えば部屋でラブレターを書いたり読んだりしてる瞬間に親がノックなしで部屋に入って来たら、手元の花瓶を投げつけたくなるくらいイヤだったに違いないよ。



 自分がいつか親になったら絶対にそんな事はしない、きっと子供の部屋に入る時はノックをしようって誓った筈なんだ、絶対に。何故忘れてしまったんだろうな?

 何故か人は成長するにつれて、そういったものをどこかに置き忘れて来てしまうらしい。僕もずっと後になってわかった事だけど、就職やローンの支払ってのはそのくらい大変な事なんだ。大人になるのはいいことばっかりじゃない。



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