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大きさは僕らの(海里の、言うべきだろうか?)ヨットと同じくらいに見えたが、微妙にデザインが違っていた。
船室の入り口を覗き込んではみたものの、ちょっと後込みした。白骨化しているならまだいいが、そうなる過程の最中だったらどうする? ぼくどざえもん、って感じで「それ」に挨拶されたら?
いや、もちろん怖かったさ。だが当時の僕は好奇心の塊だった。死体も財宝も同じくらい価値があるような気がしていたんだ。どっちであれ、映画でしか見た事がないようなものを見つけたら大喜びしていただろう。「スタンド・バイ・ミー」みたいにね。
まあ、結論から言うと死体はなかった。宝箱一杯の金貨もなかったし、大ダコとか人食い鮫もいなかった。水中に没して浸食の洗礼を受けたキャビンがあるだけで、動くものの気配はない。
僕らのヨットと同じ豪華な作りだが、艶のある木材を多く作ったデザインはやや回顧主義的だ。木造船時代のイメージを狙ったのだろうか。棚の酒瓶は流れて行ってしまったのかすでにほとんどなく、残されたものも水中をゆらゆら漂っていた。
望んだものは見つからず、ちょっとがっかりはしたものの、とにかく好奇心は満たされた。戻ろうとした時、円形のガラスが頑丈なボルトで固定された窓際に目が行った。
木製の台座で家具に直接固定された瓶があった。横向きになっており、栓はされていない。中身は空っぽだった。つまり、ボトルシップはない。かと言って僕らの船のように、誰かの故郷が入っているわけでもなかった。
指を口に突っ込んでみても何も起こらない。首を傾げ、僕は船を出た。
一度水面に上がり、想像以上に遠い場所にまで離れていたヨットに泳いで戻ると、足場に這い上がった。その途端、今まで忘れていた体の重さに利子付きで返還を要求された。
血と鉛が入れ替わったのかと思ったよ。水中ではほとんど疲れを感じなかったのに、その呪縛は確実に体を取り巻きつつあったんだ。ただ気付かなかっただけで。脱ぎ捨てたままになっている服を掴み、ヘトヘトになって甲板に上がる。
海里に今見たものを話そうと思ったが、そんな元気はなかった。彼女も酔いが回ったのか、顔に帽子を被せた格好のままぴくりとも動かない。
とにかく船室のシャワーを借りる事にした。階段を降りてキャビンに入り、目に付いたドアを片っ端から開けて回ると、居間を抜けたところにユニットバスがあった。風呂はつかれるほど広くない。純粋にシャワーを浴びる為だけの部屋のようだ。




