第六歩 無力
第五歩の藤井巡査部長の装備が途中からG36に変わってしまってました。
近い内に修正します。
やはり、私の小説はなかなか話しが進みませんね。
のんびりとお付き合いくださいませ。
近藤とくるみはお互いに背をつけるような距離に接近して、互いに180度の範囲に現れるゾンビに対して夢中に銃弾を浴びせていった。
最初は、正確にゾンビの頭部を破壊する射撃が出来ていたが、あまりのゾンビの数と焦りからか徐々に命中率が下り、あれだけ用意したマガジンもすでに数本を残すのみとなっていた。
なんて数なんだよ。このままじゃ、数分で囲まれちまう。どうする?どうする?一か八か賭に出るか?やるしかないか?
「くるみちゃん!一か八か、突破するからな!合図するまで出来るだけ入り口辺りのゾンビを排除しててくれ!合図したら、一気に入り口に走るんだ!」
くるみの返事も待たずに、近藤は自分の正面にいるゾンビの群れに対してマガジン2個分60発の弾丸を下半身に向けて横殴りに銃口を左右に振りながら乱射した。群れの先頭にいるゾンビ達が膝から崩れ落ち、その後ろのゾンビ達の行進をわずかに遅らせた。
空になったマガジンを交換もせずに肩に掛けながら、レッグホルスターからMPー7AとショルダーホルスターからP46を引き抜き、くるっと方向転換しくるみの横に並ぶなり
「走れ!」
くるみは指示された通りに、周りを無視して入り口を目指して一直線に走り出した。
半歩先を行く近藤は、正面約30度の間とそのギリギリの目の端に入るゾンビだけに引き金を弾き、ただ、ただ入り口に向かって走った。僅か15メートル、時間にして4秒とかからない筈だが、掴みかかろうとするゾンビを撃つ・避ける、時間は何倍にも感じられた。
気付いた時は2人とも、警察署の入り口から30メートルほど外に出た後であった。
すぐそばに駐めてある車に向かい、後ずさりしながら息を整え、入り口から溢れ出るゾンビの頭を次々に撃ち抜き、お互いが3回リロードしたところで、入り口から溢れ出るゾンビがいなくなった。
正確には、いなくなったのではなく、正面出口で撃たれた150体近いゾンビの死体がまるで土嚢のように入り口を塞いでしまったのだ。
「は・は・は…一体、警察署ん中にどんだけいてるんだよ。ったく…」
車中に戻った2人は、喉を潤した。
だが…藤井巡査部長や石井巡査長を見捨てた気まずさにお互いに何も言えず、ただ、警察署の正面玄関を眺めていた。
「仕方がなかったんですよね。」
くるみがボソッとつぶやいた。
「仕方がなかったが……仕方がなかったが、全ては俺の責任だ!
もっと…もっと注意深く1階の安全確認をしてから単独行動に移るべきだった。そうすれば2人は助かっただろうし、3階にもたどり着いたけたかもしれなかった!全ては俺の判断ミスだ!」
近藤は激しくハンドルを叩き、そのままハンドルに突っ伏し、激しく肩を揺らしていた。
「こ………」
何とか励ます声をかけたかったが……同じように見捨てたくるみに言える言葉はなかった。
2人が…後悔の念に駆られていようがいまいが、ゾンビ達の食欲には関係がなかった。
いつの間にか、車の辺にかなりの数のゾンビが近づきつつあった。
ぼお〜っと、警察の正面出口を眺めていたくるみの目にバックミラーから近づきつつあるゾンビの姿が映った。
慌てて、車の周りを見回すと正面と左側以外の方向から、正面出口で退治した数より多いゾンビが車に向かって来ていた。
「こ・近藤さん!右と後ろに凄い数が来てます!」
言いながら、MPー5を手に持ち、マガジンを引き抜き残弾を確認し、新しいマガジンの確認にポウチに手を伸ばし残りを確認したくるみは……
「クソッタレめ。悲しむ暇もないのかよ。」
エンジンを掛けボヤキながら車を出そうとし、バックミラーを見ると、くるみが困った顔をして、MPー5のマガジンを1個握りしめていた。
「それが最後?」
くるみの頷く姿を見て、近藤は車を武道場に向けて急発進させた。
「空のマガジンに弾を詰めるんだ!」
はっとした、くるみは、荷台に身体を突っ込み、9ミリバラベラム弾の包みと5.56ミリ弾の包みを数個ひっつかみ、無造作にシートに放り出した。
「自分の9ミリから詰めるんだ。」
そう言いながら、近藤は開いたサンルーフから身を出して、MP7Aを構えスコープを覗きながら、300メートル程離れたゾンビの集団の先頭から順番にヘッドショットで撃ち殺していった。
先頭の20体を撃ち殺し、次に近づいてきているゾンビにスコープを合わせると、撃とうとする度に頭が上下してなかなか撃つことが出来なかった。
「どうなってんだ?進化して弾を避けれるようになったなんてオチは無しだぜ。」
助手席に置いてある双眼鏡を取り、ゾンビを覗いたところで理由がハッキリした。
何故だか分からないが、現れたゾンビ達は下半身、特に足に激しい損傷を負っている個体が多かった。
偶然とは思えないな。あれだけの数……だもんな。アレをやった奴らはかなり根性があって冷静な奴だなぁ、多分組織化してて20・30人はいてるんだろう。
ただでさえ遅いし鈍いんだ。襲う方の人数が多ければ足さえ潰せばそんなに脅威ではないわな。
しかし、それが簡単に冷静に出来ないから警察署ですらこの有り様なんだ。
ただ、止めをさしていないのは何故なんだ?止めがさせなかった?いや!いきなりの何十だったら分かるが…どう見たって見事に組み合わせがバラバラだから、たまたまここに引き寄せられただけなんだろう。まさか?ワザとか?殺せるのに殺さずに楽しんでいるのか?そんな奴らがいるとしたら…女連れ、しかも女子高生となりゃ…少しばかり、ゾンビ以外にも気を回さなきゃだめだな。
近藤は、色々と考え事をしながらも討ちつづけたが、考えがまとまったようで、射撃を中断して運転席に戻った。
「くるみちゃん。マガジン幾つできた?」
近藤は、近づいてくるゾンビを凝視しながら尋ねた。
「6本出来ました。もう直ぐ7本目も出来ます。」
「OK!くるみちゃんはそのままマガジンに装填しといてくれるかな。
近づいてくるゾンビ達だか、みんな足や下半身に損傷があって頭部を狙うってのが厳しいんで、車で突破するから少し揺れるけど…我慢してくれな」
くるみの返事も待たずに車は軽やかに進み出した。
近藤は器用にハンドルを小刻みに動かして、ゾンビを跳ね飛ばすように車を進めた。
数分でゾンビの群れを抜け出した近藤は、最初に来た時のように警察署の駐車場に車を進めた。
黒い特殊部隊のバンの前で止まり。周りの安全を確認しながら、バンの荷台から弾の入った箱を数個選び出して後部座席に乗せ、数個の木箱の蓋を開けて幾つか銃器を荷台に積み込んだ。
「流石に、これ以上は入らないな。でも、全部はヤバいよな。警察の方も再度3階から決死隊が来るかもしれないし……容認しないといけないリスクってところだな。よっしゃ、くるみちゃん。移動するぞ。」
車は警察署を出て、コンビニとは逆の方向に走り出した。
「近藤さん。コンビニには戻らないんですか?逆方向ですよ?」
車が進む方向を不思議に思いながらくるみが尋ねた。
「まだ確証は無いんだが、さっきのゾンビ達を見てね。
かなり、頭が良くて、冷静で、組織化された部下かなんかを持った奴らがどこかにいてるような気がするんだ。もしかしたら、最悪に冷酷非情な奴かもしれない。」
「何故?そう思うんですか?」
「1つ目に、ゾンビの足や下半身を集中して攻撃していること。普通、ゾンビに襲われたら頭を砕くかなんかすると思わないか?
もしかしたら、無力化しやすくするために足をへし折ったのかも知れないが、なら止めをさすだろ?また襲われたくないからね。
2つ目は、やはり頭への攻撃の方が遣りやすいはずなんだ。下半身への攻撃だと、攻撃側は中腰か、もし立って攻撃してるとしたらゾンビのあの突き出した手をかいくぐる必要があるだろ。
あの力は半端じゃないし、誰だってゾンビに掴まれたく無いはずなのに、危険な戦い方をまかっていてやっているように思える。
3つ目なんだが…自分達には危害が及ばないように……危害が及ばないとは言い過ぎかも知れないが、わざわざ足を狙えるだけの技量か人手があるのに…殺してないだろ。
逆に普通のゾンビより見た目に気味が悪いよな。つまり、あの程度のゾンビなら自分達には脅威にはならないが、弱者には視覚的に『怖さ』『不気味さ』がある反面、身体的には、ただでさえ鈍いゾンビが更に鈍いんだ。一か八か!走り抜けるとか何とかなりそうにも見えるだろ。
こんな状況の中で、それを楽しんでやってるんじゃないか?って思えるだけなんだがな。」
「だから、わざわざバンに戻ったんだ。最初は、俺達が使える量だけの銃器と弾薬だけにして、他にも武器を探しに来た奴や警察に残してと思ってたんたが……
もし、そんな奴らがいて銃器を手に入れたら?とてつもなくヤバくないか?だから、銃と弾がセットにならないようにしたんだ。
ただ、警察の決死隊の件もあるから、拳銃と9ミリ弾だけはそれなりに残して来たんだ。
後は念のために遠回りしてるだけさ。遠回りしている間に、空のマガジンに装填も出きるしね。」
怪訝そうな顔をみせているくるみに対して
「どうかしたのかい?」
「近藤さん。夜叉丸っていう暴走族知ってますか?」
「夜叉丸?聞いたことがあるような気がするけど…ごめん。名前すらこんなレベルだ。で夜叉丸がどうかしたのかい?」
「夜叉丸ってこの周辺の8県程にまたがってるんです。総長って人がこの街の出身なんです。
凄く頭がいいんですけど……冷酷なくらいに冷静なんです。多分、人の命なんか何とも思わない奴で…人殺しのクセにのうのうと生きてるんです。近藤さんの言うイメージにピッタリ当てはまります。」
くるみの目の奥にどす黒い光を感じた近藤は
「詳しいみたいだから、コンビニに戻ったら教えて貰おうかな」
近藤の話しはくるみの耳に届いてはいかなった。くるみは、手が白くなるほど強くMPー5を握りしめていた。
夜叉!見つけたら、何が何でも蜂の巣にしてやるからな。絶対に忘れないからな!
くるみの様子がおかしいことには触れずに、ゾンビを倒す方法や、ハンドシグナルの説明などをし、たまに進行上に邪魔になるゾンビを排除しながら後1時間ほどで夕闇が迫るという時間になったところで車をコンビニに向けた。
「何か、カーチェイスでもあったのか?派手に車が突っ込んでんな。いくらゾンビが出たって言っても、こんなのは今までなかったぞ。」
近藤の運転する車は数時間前に、夜叉丸の連中に追いかけ回されて、中野、高橋両巡査がカーチェイスを繰り返していた一角に差し掛かっていた。
「近藤さん、今、突っ込んでた車のステッカーみました?さっきの話しの暴走族の夜叉丸の車みたいです。」
「なら、注意が必要かもしれないな。銃の用意は大丈夫?」
「はい、近藤さんのデッカいライフルのもマガジンを10個作ってます。助手席に置きますね。」
いきなり車が急停車し、ゆっくりとバックで道を戻り始めた。
「中野巡査の車のナンバーって覚えてる?」
くるみは首を振って知らないことを伝えた。
「たしか…『む 526』だったと思うんだか…」
ゆっくりと車を進めながら、3台の車が黒焦げになっている場所に到着した。
「あまり、見かけないタイプの車だったから…まさかとは思うが……」
車は黒焦げでナンバーは確認出来なかった。
周りにゾンビがいないこと確認して、車を降りた近藤は周りを調べ始めた。
車のサンルーフから見張ってたくるみは銃を構えて周辺に注意をむけながらも、3台の内2台の車のシルエットが改造車であることに気づいていた。
暫くして近藤が車に戻り、コンビニに向けて車を発進させた。
「改造車は暴走族の車みたいだった。近くに鉄パイプと、釘を打ちつけたバットが落ちていた。後これも……」
近藤の手には小さな回転式の拳銃が乗っていた。
「M37エアーウェイト。通常、警察官が持ってる銃だ。間違いであって欲しいが、珍しい車に、この銃、さらに近くには割れたライオット・シールドもあった。結局誰も助けることが出来なかったと言う訳だな。つくづく、無力な自分が情けないな…」
近藤とくるみの目から一筋の大粒の涙がこぼれ落ちた。
ご意見・ご感想 お待ちしてます。
おーい お待ちしてるが、誰も感想を書いてくれないからてつまるの心は乾燥してます。
誰か!感想書いたってや!
おもろい?くどい?
みんな どう思ってるんか 教えてえなぁあ~