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第三歩 武器調達

小説の執筆を携帯からPCに変更して少し長めにしてます。また、その内に携帯からに戻るとは思いますが・・・出来ればPCから執筆するようにします。


蛇行する車にびっくりして、ダッシュボードにしがみついたくるみは、助手席から見える範囲にゾンビがいないことに気づき、運転席の近藤を見た。

近藤は、蛇行する車を何とか自分のコントロール下に置こうと、必死に慌しくハンドルを操作し車の態勢を戻そうとしていた。近藤のハンドル捌きのおかげか、車は何とか態勢を取り戻したので近藤は静かに車を徐行させた。


「な、何があったんですか?」


「ごめん、ごめん。道路が濡れていたんで・・・・てっきり、血かなんかだと思ってそのまま突っ切ったんだが・・・どうやらオイルか何かだったみたいだ。

何で、こんなところにオイルが撒き散らされているんだよ!ったく!。」


その時、くるみは少し離れたところに横転している巨大な車を見つけて指差していた。


「あ!あれ!あれって昨日の大きな車じゃないですか?」


くるみに指摘され方向を見ると、確かにダンプカーが横転していた。近藤は、慎重にゆっくりと車をダンプカーに近づけていった。


「昨日のダンプかどうかはわかんねぇが・・・・・タイヤには相当な血糊みたいのがついてんな。たぶんゾンビを轢き殺しまくって、タイヤが滑ったんだろう。

ほら、向うを見てみな・・・・凄ぇ数のゾンビが潰されてる。」


近藤が顎で指す方向を見ると、潰された人型が何十と地面にこびり付いていた。


「!・・・・・・。す・すみまぜん。どめて・・・・」


やべぇ!くるみちゃんの顔が、真っ青になってる!いや、今度は赤くなり始めているぞ!


慌てて、車を止めた近藤は、念のためにバットを手にしながら助手席を回ってドアを開けてくるみを車の外に出した。


「うげぇぇぇぇぇ~。うげぇぇぇぇぇ~。ごほっ!ごほっ!」


先ほど食べた食事が消化され始めた状況で、くるみの口から大量に吐き出されていた。


しまった!女の子なのに・・・・いきなり、アレを見せたのは不味かったなぁ。


周囲を警戒しながらも、近藤はくるみの背中を楽になるようゆっくりとさすってやった。


「ごめんな。いきなりは・・・・ショッキングだったよな・・・・・・いや、本当に申しわけなかった。」


近藤はオロオロしながらくるみに平謝りをしていた。


ひとしきり胃の中の物を吐いたくるみは、右手で近藤の言葉を遮りながら


「いえ。いいんです。近藤さんの・・・・ゲホッ!げほっ!・・・近藤さんのせいじゃありません。

私が弱いから・・・・ゲホッ!げほっ!・・・・・・・もう直ぐ、直ぐに落ち着きますから・・・」


数分後、くるみは少し落ち着きを取り戻し、近藤の差し出したペットボトルの水で口の中の苦くて酸っぱい味を消そうと口をゆすいでいた。


「ハァハァハァ・・・・やっぱきついですね。覚悟はしてたけど・・・・やっぱり怖いです。」


くるみはブルブルと震えだしていた。  


近藤は優しく、くるみを抱きしめ大きな手でくるみの肩をしっかりと抱き、ゆっくりと車に誘導し助手席に座らせ、自分は運転席に乗り込んだ。


「道のど真ん中だと危ないからね。車の中ならしばらくは心配ないから・・・・その・・・


何かを言いたたげな近藤であったが・・・・言い出すことが出来ずに、車中はしばらくの間静寂に包まれた。


静寂を破ったのは以外にもくるみであった。無理やりに、少し引きつった笑顔をつくり、ことさら元気そうな声をだして


「ごめんなさい。心配かけちゃって・・・・あのまま外にいたら、またゾンビに狙われるんですよね?それに比べれば・・・潰れた死体は襲ってこないんだから。

慣れなくっちゃいけないんです。さっき、近藤さんに言われたばかりなのに、私って・・・・

弱虫になっている場合じゃないです。」


かわいい顔に似合わず、芯の強い女の子だな。僅か30分足らずで何とか普通に話せるようになったじゃないか。

この娘となら、この先も乗り越えられるかもしれないな。


近藤は、くるみの精神力に感心していた。


「正直、これで駄目になったかなって思っちまったよ。でも、君は強いよ。大丈夫だ。俺が保障するよ。」


少しぎこちない笑顔を作りながら近藤はくるみを励まそうと声をかけた。


「ハイ。頑張って、生き残りたいです。頑張って、生き残れたら北海道に旅行に言ってるお母さんに会えますよね!」


「そうだよ!その意気。『生き残る』ことが大切だ。こんな世になったけど、希望を捨てちゃいけない。希望は一旦捨てちまうと、なかなか次に拾うチャンスが来ないんだ。

希望さえ持っていれば・・・こんな世でも何とかなるもんさ。

ある格闘家の、名言と、俺は思っているんだがこんな言葉があるんだ。


『人は歩みを止めた時に、そして、挑戦をあきらめた時に年老いていくのだと思います。

この道を行けばどうなるものか、危ぶむなかれ、危ぶめば道はなし、踏み出せばその一足が道となりその一足が道となる、迷わずゆけよ行けばわかるさ。』


何故、こんな世界になったのか、生物兵器なのか?奢れる人類への神の鉄槌なのか?そんな難しいことはわかんねぇ。

今の、俺達に出来ることは『生きる』ことだけなんだ。

生きれば、多分・・・・・何故こんな世界がいきなり現れたのか分かると思うんだ。いや!こんな世界でも生き残りことで抵抗出来るんだ。進むしかないんだ。

こんな、親父とのコンビで申し訳ないがね。生き続ければ、また違うパートナーと出会うだろう。普通の世界と同じように出会いがあるんだ。今は、ちょっと・・・非現実的な異常な状況なだけさ」


「なんか、わかったような、わからないような・・・・感じなんですが、要は『行くっきゃない』ってことなんですよね?」


近藤は、車のアクセルを踏みながら


「そう。進むしかないんだと俺は思う。警察署に向けて出発進行だ。」


くるみの胃の中は空っぽになったが、近藤との絆はいっそう深くなっていった。


やっぱり、運命の人なのかな?友達は初体験は経験豊かなおじさんがいいとか言ってたけど・・・・・あ~~こんな時に私ったら何考えてんだろ。ダメダメ!


何か、激しくブツブツと言ってるけど・・・・青くなったり赤くなったり、面白い娘だよな。娘達ともこんな感じで接することが出来りゃいいんだが・・・・どうなるんかねぇ。


二者二様にそれぞれに悩んでいたが、辻や街角から現れだしたゾンビが悩む時間を生き延びることに専念する時間に変えてくれた。


「右方向に、え~っと・・・・10・・・14いや13体。その後ろにもいてる!結構でてきましたよ!気持ち悪いのが・・・・」


現代っ子は頭の切り替えが早いみたいだな。人間ソナーみたいにゾンビを発見する度に数を数えて報告してくれるのはいいんだが・・・・報告されてもどうしようにもないもんな。もういい加減に返答の仕方がなくなってきちまったぜ。


「近藤さん!次の交差点を左に曲がったら、警察署の前ですよね。警察、どうなってるんでしょうね」


「まぁ、パターン的に言えば、避難者が傷を隠して避難所に入り発病して内部から崩壊していくってパターンが一番想定されるんだが・・・・順ちゃんが、俺の小説を読んでるはずだから・・・旨く行けば、避難者の受け入れは身体検査後ということもあるかもしれない・・・んだが・・・・」


ハンドルを切って警察署の正面が見えた瞬間に、悪い方に予感が当たっていることが判明した。

警察署の正面玄関は開け放たれていて、ところどころに血溜りや壁に血飛沫が着いていた。


「どうやら、悪い方のパターンの方みたいだな。さてと、どうしたものかな。」


俺は車を減速させながら、警察署を注意深く観察した。


「あっ!」


「あれって」


俺とくるみちゃんは同時に声を上げていた。


警察署の3階の窓から見える通路部分の途中に机か何かなんだろう、バリケードが作られていて警察官や避難者達が通路に存在するのが見えた。

同時に、バリケードには20体以上のゾンビがたかっているのも見えた。警察官達が慌てていないところを見るとバリケードは機能しているようにも見えた。


しかし、3階に俺達2人が助けに行くのは不可能だろう。20体なんて相手に出来る訳がない。

はてさて、どうした物かと考えあぐねていると、突然正面玄関から数名の警察官と避難者らしい一般人が飛び出してきた。どうやら3階に逃げ遅れたらしい。


「誰か出て来ましたよ」


隣でくるみちゃんも気づいたみたいだ。申し訳ないが、ここでくるみちゃんの判断能力のテストをさせてもらうとするか・・・・


「で・・・、助けに行くべきかどう思う。くるみちゃんは?」


「えっ!何で、私に聞くんですか?」


「いいから!くるみちゃんなら助ける?どうする?」


「う~~ん。」


くるみはジィッと、飛び出してきた人々を観察して・・・・


「駄目です。みぃんな。どこかしら怪我をしているように見えます。ゾンビに付けられた傷だったら・・・・私達も危険にさらされます。よね?近藤さん。」


「ご名答!多分、あの中の何人かはゾンビに傷をうけているんだろう。」


俺はくるみちゃんの冷静な判断力に満足しながら、車をバックさせていた。


「え?何故、後ろに下がるんですか?」


くるみは、逃げ出てきた人々から目を離さずに近藤に質問した。


「逃げてる奴らに気づかれたら嫌だろう?助ける訳にもいかないし、ゾンビみたいに轢き殺す訳にもいかないだろ。なら、気づかれないようにした方が、気が楽になるってもんだよ。」


言いながら、振り返るようにしながら車をバックさせている近藤に対して、くるみは肩を叩き


「もう、下がらなくてもいいみたいです。逆方向からゾンビが来て襲われてますよ。」


無言で近藤は更に数十メートル車を下げたところで停車した。


私に、悲惨なところを見せないように気を使ってくれたんだ。やっぱり近藤さんって優しいなぁ。


「さて、警察は使い物にならないということが判明した訳なんだが、くるみちゃんの覚悟が出来ているならもう一度行って見たいんだが・・・いいかな?」


「私は・・・・・近藤さんに付いて行くって決めてます。だって1人じゃ、10分も持たずにゾンビに殺されちゃいますよ。」


「よし!行くぞ」


近藤は再度警察署に向かって車を前進させた。警察署正面のロータリー型の進入路をゆっくりと進みながら、近藤はあるものを探していた。


「くるみちゃん。黒塗り・・いや真っ黒で窓ガラスも黒い車があるか周りを見ておいてくれないか?車の形はこれと同じで四角いBOX型か、もしかしたら前が少し突き出しているタイプかもしれない。とにかく、それに近い車を探してくれ。

ゾンビが近づき始めたから、俺は奴らの相手があるんで宜しく頼んだぞ!」


言いながら、近藤はグイッとハンドルを切り、ゾンビを跳ね飛ばす算段を頭に浮かべながら車を加速させた。


「黒い車で四角い車ですね。」


くるみは、前後左右にくまなく目を向けて該当する車がないか探し始めた。


何度目かの軽いショック(近藤がゾンビを跳ね飛ばした振動)の後、車が曲がる瞬間に駐車場の奥の方に黒っぽい車があったのが見えたような気がしたくるみは


「戻って下さい。駐車場の奥にそれみたいのが見えたように思います。」


近藤は、車を急停止してくるみの指差す方向を確認し車をそちらに向けて進ませた。程なく、駐車場の奥に到着したところ、近藤が指示した通りの車が止められていた。


「おっ!これこれ!出動前だったみたいだな。装備が積み込まれてたらいいんだがな・・・

くるみちゃん!車から出るけど・・・・いいか?出来るか?駄目なら残っていいからね。」


近藤が車のロックを外したところで、くるみは木刀を握る手に力を込めて、少し震える膝を左手で叩きながら


「私も行きます。何にも出来ないかも知れませんけど、近藤さんの目の代わりくらいにはなりますよね!」


近藤は、くるみの目をじっと見つめて・・・・・大丈夫だと判断した。


「よし!行こう」


2人はドアを開けて車を降り立った。


「くるみちゃんは、駐車場の入り口方向と・・・・そこの建物からの出入り口の方向を注意してくれるか?俺は、車の周囲を確認するから!」


言うや否や、近藤はバットを構えながら黒い車の後ろに歩いていった。くるみは駐車場の入り口と警察署からの出口を交互に見ながら、震えそうになる膝をこまめに足踏みをしながら耐えていた。


大きな音を立てて、突然建物のドアが開かれたと思ったら、近藤と同じ様な黒い服を着た人間が2人飛び出してきた。何か分からない言葉を発しながら手に持っていた拳銃を扉の奥の方に向かって構えた途端に


パン!パン!パン!と後ずさりをしながら撃ち始めた。


「あっ!あぶない!」


くるみが叫ぼうとした瞬間に、2人は車止につまづき、そのまま仰向けに倒れて後頭部をしたたかに地面にぶつけ動かなくなった。地面にはうっすらと血が滲み出していた。どうやら受身を取ることも出来ずに、後頭部を直撃して脳震盪を起こしている様子だった。


「どうした!銃声はどこだ?」


近藤はバットを振り上げながら車の後方から飛び出してきた。


「誰かが建物から出てきて・・・」


くるみの指差す方向には、タクティカルスーツに身を包んだ特殊部隊の兵士が2人倒れていた。


特殊部隊か?でも何で仰向けにひっくり返ってんだ?・・・・と、で・出た!出た!ゾンビが出てきたぞ!


建物から10体近いゾンビが、手を突き出しながらヨタヨタと出てき、5体ほどが倒れている2人に、残りがくるみに向かって近寄ってきた。


「ひぃぃぃっ」


頭では分かっていたが、くるみは思わず目をつぶってしゃがみこんでしまった。


「しゃがむな!立てぇぇぇぇぇ~!何でもいいからゾンビを木刀で殴れ!

おらぁぁぁぁぁっぁ~~!これでも食らいやがれっ!」


くるみの方に走りこんで来た近藤は、一番近いゾンビの頭めがけてバットを横殴りに振り下ろしていた。クリーンヒットされたゾンビは頭から血を噴出しながら数メートル吹き飛ばされていた。返すバットで他のゾンビの頭ううすくい上げるように殴り、弾き飛ばした。


「ぎゃぁぁぁぁぁ・・・・・」


断末魔の声が響った。


「近藤さん?」


しゃがみこんでいた、くるみは思わず立ち上がり、声の方向を確かめた。そこには2名の特殊部隊隊員がゾンビにたかられ無残にも全身に歯をつきたてられていた。


「こら!目ぇつむるな!」


近藤は3体のゾンビを相手の必死にバットを振り回して戦っていた。


私が・・・・私が、加勢に入らないと・・・行け!くるみ!行けくるみ!


くるみは自分を必死に鼓舞し・・震えをこらえながら立ち上がり、キリッとした顔で口を真一文字にひきしめて、ゾンビに向かって摺り足で素早く近づきながら


「きえっっっ!  つーきぃぃぃぃーーーーーー」


くるみが近藤を横から襲おうとしていたゾンビに渾身の突きを放った。木刀は見事にゾンビの後頭部を貫いていた。

くるみは突いた木刀を渾身の力で引き抜き、今度は自分に向かってきたゾンビに対して


「めぇぇぇぇぇ~~んんっ」


と飛び込むような姿勢でゾンビの頭めがけて木刀を振り下ろしていた。元々、ある程度の重みを持たせた木刀は経験者の見事な『面』でゾンビの頭を見事に粉砕していた。


「やるじゃないかよ」


残る1体を退けた近藤がくるみの横に現れ、2人で黒服を襲っているゾンビに対峙した。

近藤がおもむろにバットを左手に持ち替えて、蛮刀を引き抜きゾンビににじり寄っていった。ゾンビは喰らいつくことに必死になっており近づく近藤に気づいていない様子だった。


その様子を感じた近藤は、一気にゾンビの頭に蛮刀を突き刺し始めた。3体目のゾンビに蛮刀を突き刺したところで、残りの2体が近藤に対して手を伸ばし始めたが、近藤の逆方向で構えていたくるみの木刀に頭をくだかれていた。


「ハァハァハァ・・・・」


くるみは、膝を折り流れる汗のなか必死に息を整えようと足掻いていた。


まだまだよ。まだ来るかも知れない。早く息を整えないと・・・・・


優しく肩に手を置かれたくるみは


「まだ、まだ・・・ですよね。まだ来るかも知れないですよね。少し・・・・震えてますけど・・・直ぐに直りますから・・・・」


言いながら膝を震わし立ち上がり、まるでボクサーがファイティングポーズを取るように木刀を構えた。


「力を抜くんだ。緊張したら駄目だ。

良くやったよ!くるみちゃん。自信を持つんだ。大丈夫だ。2人で10体近いゾンビを殺ったんだ。大丈夫大丈夫。・・・・・

さぁ、こっちへ来て手伝ってくれ。」


近藤はくるみを黒い車に連れて行き


「申し訳ないが、車の前で警戒しておいてくれ!ゾンビが見えたら教えてくれ。」


ガシャッン!近藤は黒い車の窓ガラスをバットで叩き割っていた。割れたガラスをバットで払い、手を突っ込みドアロックを外し車のドアを開けた。


「よっしゃ!有る!有る!くるみちゃん、ゾンビは大丈夫か?」


「はい。駐車場のかなり先に何体かいますが、こちらには気づいていないみたいです。建物の中からも出てくる様子はないです。でも。さっき襲われた人達がゾンビにならないですか?」


くるみの注意はどちらかと言えば、先ほど襲われた黒服の2人組みに向いていた。


「大丈夫だよ。止めを刺してあるから、よし・・・・・こちらに来てくれるかい」


それから、近藤とくるみは数度、近藤の車と黒い車の間を行き来し、3箱の木箱と数個のダンボールを積み込んだ。


「くそ~。これ以上は積み込めないな。でも最高の獲得品だからこれで良しとするか。

くるみちゃん、車に乗って!」


車に乗り込み、お互いにスポーツドリンクで喉を潤すと近藤は狭い車の奥に移動し、工具をつかいMP-7Aと刻印がされていた木箱の蓋をあけ始めた。


「よっしゃ!これこれ!これがあれば百人力だぜ!」


箱の中には、自動拳銃より少し大きめの銃が3丁とパーツか何かのような部品が入っている箱が収められていた。近藤は口笛を吹きながら、黒光りする兵器を箱の中から取り出していた。その銃は、H&K社社製(ヘッケラー&コッホ)のPDW(パーソナルデフェンスウェポン)<個人防衛火器>MP-7Aであった。


※PDWとは、簡単に言えば自動小銃アサルトライフルと拳銃の中間に位置してサブマシンガン(サブマシンガンは通常の拳銃用の弾丸を使用する)より威力のある銃器であり、

小銃より携帯性に優れ、短機関銃のように片手でのとっさの取り扱いが可能で、短距離でなくともボディアーマーに対して効力を持つ銃器である。

代表的なPDWとしては、FN社ファブリックナショナルのFN P90が有名であり、MP-7AはP90に対抗してドイツのH&K社が開発したPDWである。4.6mm×30専用弾薬を使用し、15・20・40と3種類の弾倉が用意されている。また、ピカティ・レール(小火器用の規格化・システム化されたオプション取り付け台であり、光学スコープ、特殊スコープ、タクティカルライトなど、増え続ける小火器の付属品とバリエーションに柔軟に対応するため、オプション取り付けのためのレールシステム)が標準で装備されており、フラッシュライトやレーザーモジュールの取り付けが出来る様になったいる。


近藤は他の箱やダンボール箱を次々とこじ開けて行き、中身を確認していた。


それ以外の箱の中身は、ざっと以下の通りである。


G36KV自動小銃(ドイツ連邦軍に正式採用されているアサルトライフルで機動性と特殊任務での使用を目的とした銃身を短くしたカービン型でピカティニーレールと伸縮式兼折り畳みストックが装着されたモデル)3丁


MP5SD5(世界中の特殊部隊で利用されるサブマシンガンMP-5シリーズの内装式サイレンサー<消音装置>を装備した固定銃床モデルでバースト<3点射>モードが追加されたモデル)4丁


レミントンM870ショットガン(世界中の軍隊などで使用されている散弾銃)2丁


H&K P46自動拳銃(MP-7Aと同じ4.6mm×30弾を使用する自動拳銃)4丁


H&K UPS9ミリ自動拳銃(P8の名称でドイツ連邦軍に採用されている拳銃 9ミリパラベラム弾を使用)8丁


S&W M586 回転式拳銃(357マグナム弾を使用する回転式拳銃)4丁


上記、銃器の弾薬・弾倉・光学スコープ・レーザーダットサイト(赤い光で的に光を当てて照準を簡単にするもの)・フラッシュライト・予備パーツ・日本語の取扱説明書・ホルスター・弾倉ポーチ・タクティカルベスト等々・・・・・


「こんだけありゃ、取扱うことさえ出来りゃ、鬼に金棒だよな。と・・・・装填済みのマガジン(弾倉)はどのくらいあるんだ・・・・・・・

当座は、MP7AとUPSとP46でいいとして・・・・ほいと、MP7Aが40本にUPS用が10本とP46用が30本か、まぁ、当面はOKだな。空のマガジンもダンボール箱1杯分ほどあるし・・・

試射して、結果で警察署内に入るか検討するとするか・・・・」


近藤はMP7AとP46のピカティニーレールにレーザーダットサイト等を取り付けて2丁づつ引っ張り出して、それぞれのマガジンを10本づつもって運転席に移った。


「近藤さん・・・・・それって拳銃ですよね?何であの車にあるのを知ってたんですか?」


「ああ、くるみちゃんは知らないと思うんだけど、日本の警察にもSATって言う特殊部隊があるんだ。そのSATの中ではこの県の部隊は優秀でね。

丁度、来年の4月から装備の更新があるんで、各国の銃器メーカーと言っても国策なんだろうが、新型の装備をその国の特殊部隊の実地訓練付きで売り込みに来てたんだ。その評価をここのSATが実施しているんだ。

丁度、昨日から、ドイツのGSG-9って言う世界最高峰の特殊部隊が来てたんだ。だから装備があるはずだと睨んでたんだ。

誤解があるといけないが、俺って、説明したかも知れないが小説を書いてて・・・・その小説に適当に創作した装備なんだが、拳銃の予備の弾が入ったマガジンの装備方法が以外と好評でね。ここに勤める友達がそのSATの装備担当で、試験採用してくれてて、本来なら今日がテストでね。話しをつけて見学させてもらう予定だったんだよ。

おッと!ゾンビの野郎どもが近づき始めてるな。ちっとばかり、テストとしゃれこむか。」


近藤は、天井のサンルーフの開閉スイッチを操作し、サンルーフが開くと運転席の座席に立ち上がり上半身を天井の外に出した。


「くるみちゃんも練習してもらうからね。まずは、後部座席に移ってくれるかな?

まずは、そこにおいてあるスパーの買い物籠の小さめの奴に、座席に転がっているマガジン・・・黒い奴、そうそう。それを詰め込んでくれるかい。それを外にだして、底に磁石がついてるから天井に固定してくれる?そうだな場所は丁度くるみちゃんと俺の間の所に・・・・・そうしたら、一旦車の中に戻って。」


くるみが言われるとおりにした後に、車の中に身体を引っ込めると、近藤はなにやら拳銃を右の脇下に吊り下げていた。


「さぁ、これをもって。重さは2キロくらいだから。」


くるみは、近藤が渡すMP7Aを恐る恐る受け取った。


「まだ、弾は入っていないから大丈夫・大丈夫。心配しないで・・・・」


「これから言うことは、しっかりと覚えること!命にかかわるからね。OK?」


コクッと首を振るくるみに満足して様子で近藤は話しを進めた。


「まず、右手。くるみちゃんは右利き?よし。右手で銃を持って・・・そうそう。引き金は分かる?そうそこが引き金。引くと弾が飛び出すから・・・・その横に絵が書いてあるだろ?レバーがあるだろ、それが一番上の時は何も出ないんだ、一つ下にすると絵の通りに1発弾が出る。その下だと、引き金を引いている間弾がでるんだ。まぁ、マガジンに弾が有る限りだけどね。

で、引き金の上のレバーを下げると入っているマガジンを外すことが出来るんだ。

今度は左側を見てごらん右と同じ物がるだろ。左右とも同じ働きをする。その少し後ろに出っ張りがあるだろ・・・引いてみて・・・そうそう、マガジンをいれて最初の弾を拳銃の薬室って所に入れる操作をするレバーなんだ、一回薬室に弾をいれたらマガジンを変えるまで、撃つたんびに自動的に入れ替えされるから・・・・でも気をつけて欲しいのがその穴から空薬莢という弾が発射したあとの残りみたいな金属が飛び出してくるんだ、結構熱いから注意が必要だ。

それと、マガジンを入れたら・・・・絶対に人に向けないこと。ゾンビには向けてもらわないと困るが、『人』には向けないこと!暴発っていって、もしものことがあるといけないから。

次は、引き金の前に折りたたまれたグリップみたいなのが・・・そうそれそれ。それを前に出すようにしたらグリップになるから・・・・そして一番後ろの・・・そこ、そこを引っ張ると肩当のストックになるから・・・・

OK!OK!で横の出っ張りのスイッチを入れて、軽く引き金に人差し指を添えてみて、出っ張りから赤い光が出てるだろ?その光を狙ったところに当てて引き金を引くと弾がそこに向かって飛んでいって目標に当たるんだ。もしかしたら、調整が必要かもしれないが・・・・わかった?」


くるみは、言われたことを数度反復し、MP7Aと近藤を交互に見ながら


「な・何とか・・・・分かりましたけど・・・もしかして弾を入れて。ゾンビを撃つんですか?私が?」


「木刀で殴るよりは危険が少ないはずなんだ。まぁ、弾が機関部に引っかかるジャムって動作が発生することもあるから・・・100%とは言わないが、距離さえ取れれば。圧倒的に有利で安全なんだ。

勿論、弾切れもあるから木刀は常時持参だけどな。

論じるより慣れろだ!テストするぞ。」


「ハ・ハイ・・・・・」


くるみは、近藤の勢いに負けた感じで後部座席から身を乗り出した。


「おあつらえ向きに、40メートル程はなれたところに10体程いるな。くるみちゃん、多分銃声がしたら、他のところからもウジャウジャよってくるから・・・・その覚悟はしておいてくれよ。車に乗っている限り、直ぐに危ないってこたぁないからな。

では、そこの長いマガジンを取って長いのには40発の弾がはいっているから覚えとくんだぞ。・・・常に俺と斜めの位置に居てくれよ。後ろから頭を吹き飛ばされるのはかなわないからな。

マガジンを入れたら、さっきの出っ張り『コッキングレバー』を引いて、初弾を薬室に入れるんだ。

よし、そこまではOKだ。レバーを単発・・・・1発出るところにセットして・・・

おいおい!銃口がこっちを向いてるって!親指で下げるんだ。OK・OK!

では、ゾンビに銃口を向けてみて・・・・・赤いドット(点)が見える?

よし!見えたら、出来るだけ頭部に赤い点を・・・・そうそう、赤い点が頭部を達したら、ゆっくりゆっくりと引き金を引くんだ。力いっぱい引くと銃口が跳ね上がって上に飛んでいっちまうから・・・・

じゃ!やってみて。」


もう!近藤さんは簡単に言うけど・・・・そんな簡単に当たるはずないじゃない!私はおまわりさんでもなけりゃ兵隊さんでもないんだよ!


文句を言いながらも、どこかで近藤を信用しきっているくるみは、言われたとおりにゆっくりと引き金を引いた。


「タン!」


と音がして、肩に軽い衝撃が発生したと思った瞬間に、狙ったゾンビの頭が一瞬揺らいだと思った途端に、頭からピューッと血が噴き出してゾンビは地面に倒れて起き上がらなくなった。


当たったの?えっ?銃ってこんなに簡単なの?衝撃も殆ど無いし、結構簡単なんじゃない?・・・・・でも・・・・まぐれかも知れないし・・・もう一回やってみようかな?


くるみは、再度赤い点をゾンビの頭に重ねて引き金を引くと、同じようにゾンビは地面に倒れて動かなくなった。


「こ・近藤さん!まぐれじゃなくて!当たりました!これ、楽です!遠いからあんまし怖くもないし・・・・」


うれしそうに自慢するくるみを見ながら


どんでもない娘っ子だな。MP7Aで、いくらレーザーダットとは言え・・・・天性のもんだな!たまげた、たまげた。


「よっしゃ!その調子で全部任せたぞ。俺は、ちょっと遠いのに挑戦してみるから・・・」


そう言いながら、近藤は光学サイトの照準器で150メートルほど離れたところにいるゾンビを狙い始めた。


風は殆どなし!この照準器を信じてみるかな・・・っと


「タン!」


「ちっ!少し低いか!」


近藤の放った弾丸は。ゾンビの首元に命中していた。勿論致命傷ではあるが15センチから20センチは的が外れたことになる。


その後、近藤は同じ様な距離のゾンビ2体を利用してほぼ狙い通りのところに着弾できる世に照準器を調整した。


その頃に、くるみは1発も外さずに10体のゾンビを撃ち倒していた。


「近藤さん!全部当たりました!」


ニコニコと、近藤に褒めてもらえるのがうれしいとばかりにくるみは笑顔で戦果を報告した。


「凄いじゃないか!くるみちゃんは才能あるんだな。

少し移動するから・・・・くるみちゃんはそのまま待機しておいてくれるか?」


「ハーーーイ!了解です。隊長殿!安全装置もセットします。」


くるみはおどけて敬礼の真似事をしながらも、ちゃっかりと安全装置はセットしていた。


苦笑しながら、近藤は車を駐車場から出して、警察署の正面に向けた。正面には20体あまりのゾンビが音を聞きつけ署内から出てきているところであった。


「くるみちゃん!練習だからね!今度はフルオート。レバーを一番下にして左右に振るようにして撃ってみて、最初に当たったところを見て適当に銃口を調整するんだ。頭にこだわらなくていいから・・・・・マガジン交換の練習のつもりでやるんだ。」


「分かりました!」


答えながらくるみは、連射にレバーをセットしてゾンビに向かって引き金を引いた。最初に胴体を狙いながら徐々に銃口を上げ行き最後の数体には頭部に弾丸を命中させていた。カチッ と音がして弾が無くなったことを知ると、くるみは、習った通りにレバーを操作しマガジンを自分で抜き取り、新しいマガジンを挿入して、コッキングレバーを操作し初弾を薬室に装填して再度射撃を再開した。

最初の銃撃で動きの鈍くなっているゾンビは次の掃射で更に5体程が頭部に弾丸を浴びていた。


「くるみちゃん!次のマガジンで単発にして残ったゾンビに止めを刺してやって!それで、マガジンを換えるときは、仲間に分かるように『リロード』と大きく叫ぶんだ!」


「ハイ!リロード!」


前回と同じ工程でマガジンを交換したくるみは、単発にモードを切り替えて、残りのゾンビに再度の死をプレゼントしていた。


これだけくるみちゃんが使えるとなると、他の装備をチェックを試射したら、順ちゃんの救出を兼ねて署内に乗り込めるかも知れないな。














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