休憩~第三歩
2011年の第1弾は田中さんにゆずりましたので、親父は第2弾で投稿させていただきます。
今回、初めて名前が出てきます。
ご愛読の程宜しくお願いいたします。
「なぁ~、俺たち付き合ってもう2年になるじゃん!17歳で経験してないカップルって校内でも少数なんだぜ。なぁ、今度のクリスマスには・・・なっ!
そんな、無視するなよ!可愛い顔が台無しだぜ。俺だって、操を立てるって言うか・・・
コンパや飲み会でのお持ち帰りのチャンスも全部けってるんだぜ!」
「H・H・H!会えばエッチがしたい、したい、したい、ばっかりじゃん。雰囲気も何もなくて女の子がそんな気分になるわけないじゃん!今の君の顔って・・・盛りのきた猿みたいな顔になってるよ。」
「そんなこと言うなよ。この間だって手前まではいったし、お前も結構濡れてたじゃん。あの時のお前の顔が忘れられないんだよ!な!今度のクリスマスあたりで、結構洒落たラブホも友達に聞いてあるんだ。」
「もう・・・離してよ!重たいってば!ゾンビに追いかけまわされていうのに・・・・何呑気なこと考えてんのよ、馬鹿!
きゃぁぁぁぁ~出た・出た・出た!そこの角から一杯出て来てる!いやぁぁぁぁぁ~~っ」
「に・逃げるぞ!走れよ!」
「駄目!腰が抜けて動けないよ!助けて!おぶってよ!」
「や・やだよ!てか、お前をおぶったら走れないじゃん!追いつかれたら喰われるんだぜ!ごめん!俺逃げるわ!お前も何とか切り抜けろよ!」
「あ!ヒロ!ヒロ!・・・・・・女の子を残して逃げるなんて最低!誰か助けてよ・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「早く逃げないと危ないじゃないか!何をやってるんだ。直ぐそこまでゾンビが来てるんだぜ!・・・・・胡桃ちゃん?・・・・・」
「誰?」
「あっ!やっぱり胡桃ちゃんだ。俺!工藤信一!ほら、幼稚園の時の」
「えっ?工藤君って小学校の時に引っ越したんじゃなかったっけ」
「用事で今日来たんだけど、思いっきり変なことに巻き込まれちまって!バットが手にはいったんで何とか無事だけど、ほら立てるか?」
「工藤君!後ろ後ろ!」
「てめえ~!くたばれ!くたばれ!胡桃ちゃん逃げるんだ!」
「はぁはぁはぁ・・・ここまでくれば何とか・・・・いや!また来たぞ!ヤバイあっちからも・・・胡桃ちゃん!俺の肩に乗って!早く!早く!電信柱によじ登るんだ!早く!」
「工藤君は?」
「俺は、胡桃ちゃんが登ったら直ぐに続くから・・・・・早く」
「工藤君!工藤君!早く登って!早く!」
「ごめんな!一人じゃ電信柱の登り棒には手が届かないんだ。出来るだけ、やっつけるから、誰かが助けに来るまで頑張るんだぜ!久しぶりに会えて良かった。最後までくじけるなよ!
おーーーーーら!かかってこいや!バケモノども!!殺ってやら~~~」
「工藤くん!工藤くん!いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~」
「たっく!アンタが仕事!仕事!を言い訳にして、家の中のことを何もしないから子供たちが真似るんだわ。いい加減にしなさいよ!」
「俺が仕事をしているから、みんなが飯を食えてるんじゃないか!」
「ハン?『金』だけ持って帰ってたら子供は育つって言うの?食事の用意をしたり、勉強を教えたり、主婦をなめるんじゃないわよ!そんなに、仕事をしているのが偉いのなら、私だって主婦業をしているのよ、見合う給料を出しなさいよ!」
「ハァ?そんなの出っこないじゃないかよ。毎月だってギリギリだろが!」
「誰が遣り繰りしてると思ってんのよ!全部、私がやってんだからね!足りなかったらパートにだって行ってるし、アンタ、一度だって私に働いて下さいなんて、頭下げたことある?何時だって私が先々を考えているから家がなりたってんじゃないの!ぼけぇ!」
「ほら、都合が悪くなるとすぐに黙りこくるばっかし、そんな姿を子供に見せるから子供も真似するのよ!いい加減にしなさいよ!黙ってるんなら出で行きなさいよ!役立たずが!」
「叩くなよ!叩いたって、何の解決にもならないじゃないか!」
「きぃぃぃぃぃぃぃ!悔しい!悔しい!アンタなんか死んじゃえばいいのよ!」
「工藤くん!工藤くん!工藤く~~~ん!!!」
「痛い、痛いってば」
「ん?」
俺は、寝てたのか?おおっ!このぷよぷよしたのは何だ?えっ?女子高生?えっ?俺、女子高生に手ぇ出しちゃったの?
「痛いって!」
女子高生の奴、寝ぼけて男の名前を叫びながら叩いてきてやがる!
「あっ!そうか!昨日はゾンビ騒ぎで・・・・・この子を助けたんだけ!」
痛いって?死んだら痛いかどうかわからないじゃない!痛いのは生きてる証拠だよ、工藤くん!生きてて良かった。あんな奴にバージンをあげないで良かった!工藤くんにならあげれるよ!く・ど・う・く・ん(ハート)
「くん。え・えっ!工藤くんは私の目の前でバケモノに食べられちゃったんじゃ?誰?・・・・・
いやぁぁぁ。どこのおじさんなの!」
少女は、いきなり夢から覚醒し、ベットの隅に飛んでいくように逃げながら
「誰ですか?何で私と同じベットにいるんですか?って言うよりか、やったんじゃないでょうね?」
少女はいきなり、スカートを捲り自分のパンツの中に手を入れた。
「大丈夫だぁ~~。
でも、私のパンティーと違う!お・じ・さ・ん!何をしたんですか?
えっ?何を笑ってるんですか!失礼じゃないですか!」
「いやいや!笑ってすまない。昨晩は、お漏らしに、よだれ顔に・・・・今朝はパンツに手ぇつ込んで・・『大丈夫だぁ~』だろ、思わず笑っちゃって・・・・失敬・失敬。」
思い出したようだな。少女は真っ赤な顔をしてベットの隅でモジモジとし始めた。
「あの~昨晩は助けていただいてありがとうございました。で、寝ぼけて叩いちゃったみたいで・・・・すみません。」
「まぁまぁ、気にしないで!あんなむごい経験すれば、誰だって嫌な夢の一つや二つ見ても当たり前だよ。
そういえば、自己紹介もまだだったね。俺は、近藤雄一<こんどう ゆういち>。一応結婚もしてるし、娘も2人いてる。こんな状況だから、信用しろとは言いにくいが・・・一応は紳士だからね。」
「私は、根本胡桃<ねもと くるみ>17歳です。鈴蘭台高校の2年です。」
「くるみちゃんか!鈴蘭台だったら3年生に近藤由真<こんどう ゆま>って知ってる?上の娘なんだけど」
「近藤さんって、生徒会の書記で・・・・背で高くてポニーテールにしている人ですか?」
「そうそう!その父親!」
と無邪気に雄一は自分を指さしていた。
何か、無邪気なおじさんだな!悪い人ではないそうね。そうよね、昨日もわざわざ助けてくれたんだから。その上、ここまで連れてきてくれたし。
少女は、にっこりと雄一に微笑みかけた。
いいなぁ~美少女の笑顔は、しかも巨乳だし・・・よこしまな親父と化している雄一であった。
「まずは、食事だな。その後に情報が入手出来ないか検討しよう。さっきはすまなかったね。君をベットまで運んだまでは記憶があるんだが・・・・そのまま、俺もバタンキューだったみたいだ。
もし、今晩もここに篭城するんなら、俺は部屋の隅で寝袋を使うから。」
それから、俺たちは手分けして作業に取り掛かった。くるみちゃんは、1階の店舗で、ポテトやから揚げを作るといって降りて行った。
彼女が食事を作ってくれている間に俺は、窓から外の様子を確認したが、やはり昨日のことは夢や幻ではなく現実のことであったことを痛感できるように、そとには多数のゾンビが闊歩していた。
相変わらず携帯電話は不通で、俺は1階にある固定電話から発信が出来ないかと確認をしたが、110番は混線しており、携帯電話にはやはり不通であった。警察署への直通電話番号も混線の状態らしく、寒々しいアナウンスが流れるだけであった。
テレビは、殆どのチャンネルがテロップで各地域の避難場所を流しているだけであった。その中で唯一生の情報を流しているのが、あるFMラジオ局であった。
そのラジオ局は、県庁所在地の中心街にあるガラス張りのビルの4階と5階に局を構えているらしく、緊急放送用に2週間程度は放送を維持出来るように、人員や設備や備蓄品を備えているらしかった。また、ガラス張りのおかげで早くに異変に気づき局内への通路の防火扉を作動させたため職員30名ほどが無傷で残っているらしかった。
「では、今までに確認出来た内容を整理します。街を徘徊しているバケモノは映画や小説のゾンビそのものと思われます。よく聞いて下さい。むやみに外出は避けて下さい。
まず、ゾンビに襲われて死亡した場合は100%ゾンビとして生き返ることになるみたいです。
噛まれたり、引っかかれたりして傷を受けても、数時間で死亡してしまいゾンビになってしまいます。
ゾンビは、頭部への打撃で脳を破壊するか、頚椎や背骨を折るか破壊しない限り死ぬことはありません。
市内の大学病院の観察医に先ほど電話が繋がり、ゾンビが生物科学上で餓死などで死亡するかと聞いてみましたが、死体が歩き回ること自体の説明がつかないことと、食した人肉をどのように消化してエネルギーとしているかの構造が不明なため、検討もつかないとのことでした。
常識で考えた場合、血液の循環がなくなることよって身体は死後硬直と言って硬くなるのですが、ゾンビは腐乱していくだけの様子です。
また、通常は人間として身体の各機能、特に筋肉などはある程度の負荷がかかる場合に力を弱める本能が人間には備わっていますが、ゾンビはその本能のリミッターがない様子で非常に強い力を持っているそうです。
え~、今、偶然に○○市に出ていた中継車でゾンビから逃げることに成功して車の中で篭城しているクルーから連絡がはいりました・・・・・・・・
えっ?これ?こ・これを読むんですか?・・・・・・・・いんですか?
失礼しました。あまりにもショッキングな内容だったので、本当にこのままお伝えしてよいのか判断に苦しむのですが・・・・・
中継車のクルーによると、近くの避難所に向かっていた自衛隊と警察の混成部隊がゾンビと対峙して全滅し、さらに全滅した部隊の警察官や自衛官がゾンビとなり避難所の避難民を襲い始めたということです。クルーは取材で同行しており、1名被害がでましたが幸運にも逃げることに成功したそうです。
政府は、自衛隊を再整備しているとの情報も未確認ですが届いております。
また、先ほどスタッフがインターネットで確認したところ、この現状は日本ばかりではなく、欧米やアジア、アフリカ大陸でも発生している模様です。
では、電源の確保の為に一旦放送を中止し、次回は20時に1時間状況をお伝えします。
なお、感度がよければですが、唯一被害のない北海道のFM局が不定期ですが、政府の発表を流しております。○.○Hzでご確認下さい。」
なんてこった、全世界で発生だ?てことは、アメリカの援助は期待出来ないってことだよな。在日米軍はどうするんだろう?今更、本国に戻っても間に合わないだろうし、火力や戦力から言えば自衛隊なんかとは比べ物にならないと思うんだが、たしか、在日米軍の司令官って、親日家で奥さんも日本人だったよな!日本に展開してくれていたらありがたいんだが、沖縄や横須賀の状況次第ってことかな。
俺は、念のために北海道のFM局に周波数を設定したが、この時間に放送がないのか?受信出来ないのか反応がなかった。一応、何かを受信できた場合を想定して音量を落としてそのままにしておいた。幸いこの地域の電力は活きているようなので、電気の心配をする必要はなかった。
そうしている間に、彼女が料理を用意して持って来てくれた。フライドポテトにから揚げを揚げて、電子レンジで煮物にお米をチンしてボリュームたっぷりの朝食を用意してくれていた。
朝食といっても、2人とも起き出したのが11時近くなので実質的には昼食だった。
食事をしながら、現在までに判明した状況を彼女に説明した。泣き叫ばれたりしたらかなわないところであったが、なかなか頭のいい子のようで、置かれている状況をそのまま受け止めてくれた。
「これからどうするんですか?」
「このコンビニをベースキャンプみたいにして、まずは近隣で武器になりそうな物を確保しないといけないな。今の装備では俺1人分だしな。」
「近藤さんは、どこかに行かれる予定ではなかったんですか?それより由真先輩とかご家族はどこにいらっしゃるんですか?」
「ああ、家族ね、俺が風邪を引いて寝込んでいることをこれ幸いにS県の極楽温泉に旅行にいっちまいやがったんだ。そこにもゾンビが現れたらしいが、自衛隊の救助が来て客と従業員と自衛隊で旅館にバリケードを築いて篭城しているらしいんだ。
まぁ、行けるかどうかは分からんが一応父親なんでね、救助にと思って家を出たところなんだ。
普通に考えたら、到着出来るはずはないんだけど。俺って、ゾンビマニアなもんで、こんな時にも対処できる装備とか持ってるし・・・・もし、生き残った暁に再開でもしようもんなら、助けに来なかったと3日は文句言われるからな。」
近藤さん笑いながら言ってるけど、家の中では虐待されてるんだぁ。普通はお父さんが風邪ひいてたら、旅行なんかいかないもんね。結構かわいそうなんだ。
でも、もしかしたら、浮気とかして家族に相手にされてないのかもしれないわ。そしたら嫌だな。当分2人っきりかもしれないのに・・・・・どうしよう
「なんで、家族にそんな仕打ち・・・・・。風邪引きで寝込んでいるのに放っておかれるんですか?由真先輩ってそんなに冷たい人には見えないんですが?」
いやぁ~ やさしい娘さんだなぁ~ 心配してくれてるんだ。俺は、有頂天に家族といかに、嫌、家族というより嫁と不仲になったかを延々と10分近く喋ってしまっていた。
なぁに!ドン引きの内容じゃん!私は昼のテレビのみの ○ん○じゃないんだから、私に喋ったってどうしようもないじゃんか!
でも、なんか、悪びれず喋っている近藤さんって憎めないなぁ。結構かわいい感じだな!
「奥さんと不仲って・・・てっきり浮気かと思っちゃって!違ったんですね。良かった!」
「何が良かったのかは分からんけど、こんなおっさんが浮気なんかできるかよ!」
おかしいぃ、鼻を鳴らして自慢してる。子供みたいだな。でも、結構シブ面でいい感じと思うんだけどな?でも、私ってファザコンの気があら・・・・かな?まぁ、いい人みたいだから安心し~~ようっと
「どころで、くるみちゃんのご家族は?」
「私のところも、お父さんとお母さんと弟が北海道に旅行に行ってるんです。本当のお父さんじゃないんですけど・・・・弟も・・・・でも、北海道は安全なんですよね。ちょっと安心できました。」
「ごめん。悪いことを聞いたみたいだね。」
「いえ、全然問題ないです。義理ですけど真面目でいいお父さんです。弟も10歳も離れた小学生なんで結構かわいいですし・・・・なにより、お母さんの幸せそうな顔が見れるのが一番です。
私はバイトもあるし、クリスマスも近いんでデートとかもあったで・・・・
でも、デートの相手・・・・結構イケ面で格好いいんだけど何かあると『やらせろ』とかエッチばっかりが目的みたいな奴で、あっ!まだ何にもしてないですよ。ゾンビを前にして一人で逃げちゃったんです。
その時に、偶然に幼稚園の時の幼馴染が助けてくれて・・・・・・・
グスン・グスン・・・・・私を逃がすために電柱に登るのに肩をかしてくれたんです。自分一人では登れないのを承知の上で。最後は電柱に近づくゾンビに・・・・・」
少女は途中から嗚咽を鳴らしながら、その幼馴染が命がけで電柱に逃がしてくれたことを説明した。
「そうか。
でも、男が女の子のために命をかけたんだから本望だと思うよ。悲しいかな、ゾンビになっちまったら自分が他の生存者を襲う羽目になるんだから辛いけどな。その彼が徘徊せずに死んでることを祈るよ。」
「グ・グスン。大丈夫です。彼は誰も襲うことなく・・・・最初に襲った・・・その・・・近藤さんに・・・・」
その先は大粒の涙・涙で少女は声が続かなかった。
「そうか、電柱の時の学生君か。彼を目で追っていたから俺にも注意することができたんだ。
悲しいことだけど、彼が他の人を襲って犠牲者を増やさなかったことがせめてもの救いだよ。ほら、泣いてばかりいたら駄目だ。月並みだけど、その彼の分まで生き延びなきゃ!
この先はまだまだ長いんだ。湿っぽくなるのはこれで最後にしよう。
さっ!早く食べて体力をつけて、明るい内に近隣、出きれば警察署の状況や武器の入手など、やらなきゃならないことは山ほどあるんだ。元気だして!」
近藤さんは家族を探しに行くんだから私は邪魔者だよね。早く何でも自分で出きるようになって近藤さんに迷惑がかからないようにしなきゃ!くるみはこの先、自分が置いて行かれることを覚悟した。
「はい。・・・・・・・・そうですよね。頑張って生き抜かなきゃだめですよね。
近藤さんもS県にご家族を救い出しに行くんでしょ?私は足手まといだから・・・・当面はここにいれば食べることはできるし・・・・気にしないでS県に行ってくださいね。」
「おいおい、つれないこと言っこなしだぜ。まぁ、家族は家族で助けに行くことには変わりはないんだが・・・・正直一人ではキツイと思っているんだ。くるみちゃんに会う前にもゾンビと対峙したんだが、やはり後方とか死角があるんで単独行動ではS県まではむりだと思っているんだ。ただ・・・」
「ただ?・・ただ、何なんですか? 」
少女は、置いていかれない様子に安堵したのか、若干首をかしげながら雄一をジィッと見つめた。
いやいや、そんなに見つめられると困るんだが・・・・下手なアイドルよりかわいいじゃないかい!これが、萌え萌えってやつか?
「この惨状がいつまで続くのか全然検討もつかないんだ。このまま、無傷の人達が自宅で篭城して2~3日や1週間位でゾンビが餓死するかも知れないし、もしかしたら、逆にゾンビは餓死はせずに篭城している側が食料がなくなり、外に出てきて一気にゾンビに襲われてゾンビが大量発生するかも知れない。
このコンビニでなら太陽光発電があるから最低限の電力はあるし、水も食料もたんまりとあるから一人や二人なら数ヶ月でも篭城できるだろう、つまり、直ぐに死ぬことはないんだが、S県に行くとなると死と隣り合わせになるってことなんだ。
自衛隊も再編成されているらしいから、ここで篭城していれば助かる確率は動き回るより高いだろう。だから、君にS県まで一緒に行こうとは言いにくいわけなんだ。
冷たい言い方かも知れないが、俺だって・・・・家族に連絡が取れずならしばらくここに篭城する方を選ぶさ。だがS県に居てるのが分かってるんで行かざるを得ないだけさ。
S県のことについては、俺と来る来ないは君の判断に任せるよ。当面、そうだな今日明日は警察署の確認や武器の確保があるんで、ここを根城にするから・・・・その間は付き合ってもらうよ。今後の君のための武器なんかも探さなきゃいけないしね。
さぁ、残りを食べよう。せっかくの飯が冷めちまう。」
「あの、私が付いていくと迷惑ですか?足手まといになりませんか?一人でここに篭城するなんて・・・・・耐えれません。連れて行ってください。お願いします。」
俺は、真剣な顔の彼女にこれ以上危険な真似はさせたくなかったが・・・・彼女の眼に負けてしまった。
「分かった。俺は全力で君を守るが・・・・後は『運』次第だぞ!」
「本当なら・・・近藤さんが気づいてくれなかったら・・・私は今頃外に居てるゾンビの一員でした。でも、今はこうして生きています。近藤さんのおかげなんです。」
「ニャン!!!!!」(ボヤッキーじゃなくて、アタイがアンタを見つけたんだよ!)
ドロンショ様が忘れるなと猛然とPRをしながら、ここが自分の居場所とでもいうように、くるみの膝の上に飛び乗り、ゴロゴロと喉を鳴らした。
食事も終了し、明るい内に警察署の状況を確認すべく俺たちは駐車場に降りていった。
「くるみちゃんは何か運動とか武道とはやってたのかな?」
見た限りは、運動をしているようには見えなかったが『人は見かけによらない』という諺もあるので、念のために確認をしてみたところ
「最近はやってないですけど、小学1年から中学3年まで剣道をやってました。一応初段で県大会でも、個人5位なんです。ね!結構二の腕に筋肉があるでしょ?」
といいながら、細い腕を俺の前に突き出していた。その腕で木刀が振れるのなら、俺の嫁さんなら電柱を振り回せるんじゃないかと思うほどだった。
「ほら、触ってみてくださいよ。」
無邪気にくるみちゃんは、俺の右腕に身体をぴったりとつけて自分の腕を俺の左手で触らせようとしていた。
正直に言えば二の腕の筋肉より、俺の右腕に押し付けられたプヨプヨの丸い弾力のある物体の方に気が行ってしまった。また、これが柔らかいんだわ。若いってのは、いいねぇ。
「経験者なら、この木刀を持って動いてもらおうかな。」
俺は、担いでいた鞘に入った木刀を外して彼女の目の前に突き出した。彼女は、木刀を鞘から引き抜き、軽くブンブンと素振りでもするかのように木刀を扱った。
「普通の木刀より重いですよね。芯に何か金属でもしこんでいるんですか?でも、結構いい感じのバランスじゃないですか。近藤さんも剣道の経験者なんですか?」
そうなのか?俺は剣道やらの格闘技については殆ど経験がなく、自己流のゾンビ格闘戦用の練習しかしたことがなかった。(といっても、自分がどんなにバランスを崩してても相手の足を払ったりバランスを崩させたりして、とにかく相手をひっくり返す、亀さん仰向け起きれません殺法なんだが・・・・)
あの親父の自身ありげな顔は、自慢の一品を作れたことだったみたいだな。そう言えば、社長の奴無事に生き残ってるのかな?
S県で家族の安否を確認したら、社長の工場(兼自宅)に様子を見に行こうか、帰り道だしな。てか、自分で言うのもおこがましいが、またまた無事に帰る気満々だな。
「いや、俺は経験者じゃないんだ。対ゾンビ兵器として有効そうなんで知り合いに作成してもらったんだ。かなり加工しているんで、簡単には折れないということだから思う存分ぶった叩いても大丈夫だと思うぞ。」
「わかりました!何か、忍者みたいですね。『セーラー戦士!くるみたん』って感じですか?
てか、セーラーじゃないてブレザーですけど・・・・」
う~~ん。これがまさしく萌え萌えってんだろうな。おいおいクルクル廻るなよ!スカートが捲くれて・・・パンツ見えてんぞ!まぁ、見えても自分の娘のパンツじゃ萌えないわな。
「おい!クルクル廻ってっとパンツ丸見えだぞ!さぁ、出発するから車に乗って!」
駐車場の扉が開き、俺たちは安住の場所から危険な街中へと車を走らせた。
「これが、このコンビニの見納めなんてことにはならないですよね?」
少し切なそうにくるみちゃんがコンビニに振り返っていた。
「大丈夫。と信じるしかないさ。こんな状況になっちまったら、信じれるのは自分だけさ。まぁ、俺達の場合はお互いが信じあい助け合うことさ。」
「そうですよね。生き残れますよね・・・・・・どうせ死ぬのならお風呂に入っておきたかった。それに・・・・・(バージン)のままでは死にたくないですから、頑張ります!」
「えっ?何のままでは死にたくないって?ごにょごにょじゃ、わかんねぇよ!」
「気にしないで下さい。私の問題ですから。」
もしかしたら、このおじさんが初体験の相手だったりして・・・って考えすぎかな?でも、完全に白馬の王子様と同じ状態だし、このままずっと一緒だったら・・・きゃぁ~~、エッチ!
「おいおい。何を顔を真っ赤にしてんだ?しょんべんなら早めに言ってくれよ!女の子は男と違って場所を選ぶからな!」
「近藤さん。女の子に向かって『しょんべん』はないでしょ!それってセクハラ発言ですよ!」
突然車が蛇行して、くるみはとっさにダッシュボードにしがみついた。
な・何があったの?ゾンビ?
ご意見・ご感想 お待ちしております。