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第11歩 夜叉丸-3

夜叉丸編の3話目です。戦闘シーンはなく、行き当たりばったりで登場させてしまった8人衆との闘いに向けての状況設定です。

だんだん、ゾンビ物から遠ざかってますが……気長にお読みいただければいづれ元の路線に戻りますんで、暫くの間お付き合い下さいませ。


それと……女たらしの魔猫ドロンジョちゃんの存在を忘れてしまってましたが……きっちりとくるみちゃんの膝の上に座ってますのでご安心下さいませ。

サイゾーの骸を道路横の草むらに横たわらせ、キャデラックに積まれいた無線機を取り外し、一行は中野巡査の自宅に車を向けた。


しかし、昨日、取り乱して錯乱してた人物と同一とは思えんな!この実力なら木刀一本でも、のろまなゾンビなら100体くらいは簡単に殲滅出来る腕前じゃないか?


サイゾーさんが言ってた平成の女十兵衛ってなんなんだろう?


中野巡査のギャップに疑問を感じながらも近藤は先を急ぐことを優先することにした。


中野の提案で、大人しか車の運転が出来ないと、今回のような事態に陥った際に援護も脱出も出来ないことになることを避けるために、残りの行程を香が練習がてらに運転することになった。


本来ならば、年上のくるみと言う流れであったが、香自らが立候補したのである。香なりに全体の戦闘力を考え、一番戦闘力の低い自分が役立つ方法と判断したのであった。


更に、香の自己申告では、長野の祖父の牧場で夏休みなどに遊びにいった際にお手伝いで牧場内(公道ではないという理由で)を軽トラックを運転したことがあるとのことであった。


助手席に近藤が座り、香に指導しながら小高い山道を車は登っていった。


「そう!その調子で、ハンドルは今のタイミングよりちょっと遅いめでも大丈夫だから……じゃぁ、ちょうど直線みたいだから、もう少しスピードをあげようか?」


近藤の指示に対して素直に操作する香であった。


「香ちゃん、結構上手じゃない!流石に無免許運転経験者じゃん!いい感じだよ!ねぇ?中野さん?」


とくるみが後部座席から声をかけていた。


中野も軽く頷きながら


「そうね。無免許運転経験者だってことは、多目に見てあげるしかないわね。まぁ、既に法治国家としては機能してないしね。香ちゃんが運転出来るとなると心強いわ」


「む、無免許って言わないでよ!」


頬を膨らませながら香がバックミラーで2人に照れた表情を見せていた。


「そこの大きなカーブを曲がって100メートル程のクリーム色の家だからね!」


カーブを曲がったところで近藤が車を停止させた。


「車が止まってる。中野さん、知ってる車ですか?」


中野の家と思われる家の反対車線に大型の4WD車が止まっていた。


「純也!」


中野が車を見るなり名前を発した。


「従兄弟の車です。心配しなくて大丈夫ですわ。」


「でも、ゾン」


くるみが心配を口に出す間もなく


「裏柳生の現、頭首ですし……本人もですが、多分隣に核爆弾みたいな娘がくっついていると…」


中野の言葉を信じて車を進め4WD車に車を横付けしたところ、2名の男女が乗車しており、運転席側の男性がこちらに向かってにこやかに微笑んでいた。


2台は揃って移動し、数分後には全員が中野の自宅のリビングに座っていた。


「純也は何しに、こんな混乱した状態の中、奈良くんだりから来たのか説明して貰えるかな?」


普段の優香らしくない突き放した言い方で会話が始まった。


「相変わらず愛想がねぇなぁ、優香姉ちゃんは。婆ちゃんがさ、優香姉ちゃんの封印を解いてこいって……うるさいんだよ。自分が封印したくせによ。」


「封印?」


近藤が思わずに呟いてしまった。


「ええ、実は私の実家が柳生の分家にあたるんです。

本来、この純也が柳生を継がなくっちゃいけないんですが……

剣技の方に今ひとつ本気にならないと言うのか、どちらかと言えば裏柳生と言う体術…にのめり込んでしまって」


「当麻兄ちゃんに憧れただけだよ。それに、剣技じゃ優香姉ちゃんにはかなわなかったし…

優作叔父さんも、俺には裏柳生の方が合ってるって……」


口を挟む純也を睨み付けて黙らしながら優香は説明を再開した。


「純也の話しに出た、優作はあたしの父親で当麻は兄です。

元々、分家の父が裏柳生を継続させ、本家が柳生を継いでいくのですが………

純也の母親が純也を産んで直ぐ他界してしまったので、赤ん坊の時からあたしの母が一時的に母親代わりになり引き取っていたんです。

だから、純也は小さい頃から兄の修行を見ながら育ったんです。あたしと兄が6つ違い、あたしと純也が2つ違いでした。

兄当麻は、裏柳生に関しては天賦の才を持つと言われてまして……物心がついた頃から純也はずっと兄にくっついて修行を積んでいました。

その兄が21で治療法の無い不治の病を患ってしまい、半年で他界してしまってから、純也が勝手に裏柳生を継ぐ気になって………しかも、兄と変わらぬ才を持ってたんです。

裏柳生は原則一子相伝で、それ以外には高弟を6名しか採らないんです。この点は柳生も同じなんですが………

で、本家の柳生を継ぐ者がいなくなったんです。

そんな時のために、柳生の3つの分家では産まれた子供は全員が柳生の修行を15までは行わなくてはならない決まりなんです。


あたしが17の時です。他の2つの分家からの伝承者候補達と併せて5名で伝承者選びが行われる運びになったんですが……………

過去から冷遇されていたと不満を抱いていた一つの分家の伝承者候補が、自身の兄を筆頭に他の候補を闇討ちし始めたんです。結果1名死亡、1名植物人間、もう1名も右手と左足をなくしました。

最後にあたしも襲われたんですが……完全にキレていたあたしには記憶がないんですが……

あたしが襲われている現場にかけつけてくれた父と純也の話しでは………

あたしが木刀で、伝承者候補と荷担した高弟5名を斬り殺していたらしいんです。」


「凄かったんっすよ。木刀なのに……うちの家宝の『村正』の斬り口と寸分変わらない程だったんですよ。

ただ……キレた優香姉ちゃんを止めるのに……裏柳生の頭首の優作叔父さんと俺が2人がかりで………

結局叔父さんの右腕を引き換えにしてやっとだったんだ…………

で、本家の婆ちゃんが優香姉ちゃんの『危険な本性』『村正に魅入られた力』だとか言って……その力を封印したんです。」


説明中、あまりにも荒唐無稽な話しに口をあんぐりと開けていた3人は純也の話しの後に思い出したようにお互いの顔を見回した。


「申し訳ないが

一子相伝やら伝承者争いやら…柳生やら裏柳生やら………

北斗の拳に柳生一族の陰謀みたいな世界をいきなり聞かされても……


そんな世界が現実にあるなんて………なかなか頭ん中の整理がつかねぇわ。

まぁ、ゾンビが闊歩する世界も信じられないていっちゃ、信じられないんだが………」


「柳生とか裏柳生の人って普段は何をしているんですか?優香ちゃんみたいに警察官なんですかぁ?」


香が素朴な質問をした。


「説明してもいいけど……余計混乱するだけになるかも知れないけど構わないかい?」


純也は困惑している3人に優しい笑顔を振りまきながら優香の顔色をうかがい、許可が出たと判断した純也はあとを続けた。


「柳生は政府要人の影の護衛を専門にしてるんだ。我々の護衛対象者は、選挙の度にすげかわる政治家ではなく実質的に日本を動かしている次官などの実務者なんだ。原則は対象者にも知られずに近づく危険人物を排除するのが主な役割なんだ。裏柳生は主に公安関係政府機関のうち対外的に非合法な任務を行っているんだ。簡単に言えばスパイとか諜報員とかって言えばわかりやすいのかな?

ただし、柳生も裏柳生も実質的には6名しかいないので自衛隊や警察から適当にスカウトした部下で成り立っていたんだ……………」


少し話しにくそうに純也は自身の隣に座る女性にチラリと目をやった。


「この先は純也では説明し難いので、あたしが説明します。」


話しを継ごうとした優香に純也と連れの女性はびっくりした様子をしていた。


「柳生も裏柳生も時代とともに、なかなか、なり手や人材を確保するのが難しくなってきてたんです。まぁ、日本が豊かになっていったという証明みたいなものですけど………

しかし、見かけの平和はあくまでも見かけでしかなく、情報戦や諜報戦は日々激しさを増していき、とても柳生や裏柳生だけでは手に負えなくなってしまい父の先代の時に風魔(歴史的には風間党)と協力して、国内に残存し外国の諜報機関と関係を深めていった黒脛巾組、根来衆などの忍者組織を一掃し、柳生は風魔と組んだのです。

その証として、父の代より裏柳生の頭首は風魔より嫁をめとることになったんです。

あたしの母も風魔の頭首の長女でした。もちろん、純也の隣の女性も風魔最強と言われる大角の次女、子虎です。」


「えっっ〜、優香姉ちゃん!私は虎じゃなく、猫だよ〜。子猫って言ってよ!」


「何言ってんの!SAS(イギリスの特殊部隊)との訓練で、オリエンタル・アトミック・ボムとかアジアン・タイガーなんて渾名を貰ったお転婆が!

あんたが参加して以来、SASが訓練に呼んでくれなくなったんじゃないのよ!」


「え−っ?私のせいじゃないよ。コネリー大佐が賭に乗らない奴はSASの訓練には参加させないって言うからだよ〜。」


「だからと言って模擬戦で8名も半殺しにしてどうするのよ!」


「だって、『賭』の対象が………私の貞操だったんだよ?

初体験が外人で、しかも特殊部隊のゴツい男の上に弱い奴だなんて……超サゲサゲって感じじゃん?無いって!」


言い訳を続ける子虎に対して、更に説教を続けようとする優香に対して


「てか、優香姉ちゃん?もしかして、封印解けてね?」


純也が先程の自身が怪訝に感じた疑問を尋ねた。


「あー、封印ね。多分、『危険な本性』『村正に魅入られた力』以外は解けたみたいね。剣技の感も完全に戻ってるし…………

ゾンビに襲われて、道場の教え子があたしを守り通しながらもゾンビになっちゃって…………錯乱したみたいなの。錯乱したことで封印の一部が解けたみたいだわ。

…………………………………………………………………………………………………………………………もっと早く解けたくれてたら…助けられた人がたくさんいたんだ。情けないないね。」


目に涙を溜めながら悔やむ優香にくるみが


「でも、近藤さんと私や香ちゃんは助けてもらいましたよ。

そんな事を言ったら、近藤さんや私も……藤井さんや石井さんを助けられなかったし……

でも、悔やんでも悔やんでも……仕方なったんだなって。その時には、そこまでの力しかなかったんですよ。

そう思わないと生き延びるだけで、どんどんと背負わないといけないものが増えちゃって…生きるのが苦しくなっちゃいますよ。

私は…最初に久しぶりに再会した幼なじみに助けられたんです。だから、彼の分までは生きようと思ってます。」


「俺も、その通りだと思うな。助けらなかった命の数だけ悲しみを背負いこむんだったら……生きるのが辛いだけになると思うんだ。

生きて、生きて、生き抜いた時に答えがわかると信じている。それまでは、精一杯生きるしかないんだ。」


近藤の言葉に一同がそれぞれの想いを抱きながら聞いていた。


「ところで、柳生はこの状況をどうやって打破するつもりなの?」


「うん。実は、うち(裏柳生)は、3組から6組が海外で活動中なんで国内には2組しか残っていないんだ。海外組とは連絡がとれてないから状況は不明。

国内では、1組は、柳生の4、5組と合同で東京で実務者達の安否確認と保護をさせているんだ。

2組は風魔に向かわせてる。着き次第、大角の親父さんの指揮の元にゾンビの殲滅活動に入る予定なんだ。ただ、無線からの連絡によると走るタイプのゾンビがいてるらしくて、奴らは群れで狩りをするようなんで…遭遇すると排除するのに時間がかかるみたいで厄介な存在なんだ。

それに、風魔の総数と合わせも150名程度なんで、大角の親父さんは自衛隊の装備品を入手するつもりで既に20名程を一番近い基地に向かわせてるらしい。

柳生は、奈良の本家の警備に1組を充ててる。親父や優作叔父さんや引退組が張り切って全面に出ようとしてるんで困ってるけど、実質的は2組で警備している状況かな?1組は優香姉ちゃんの代役の静香さんだから年寄り連中も上手く扱ってくれると思うよ。

6組はいつも通り皇族についてる。

3組は風魔の新米の訓練で北海道なんで、向こうの自衛隊の再編成を手伝ってる。

2組の正人んところが休暇中だったんで、まだ全員と連絡がとれてないんだ。携帯が使えないんで………作戦合同中の組は無線があるから連絡がとれるんだけど、休暇中の柳生の丸腰メンバーでは走るゾンビはキツいかもしれない。」


「走る奴らはほんの一握りだから、運次第ね。本家を静香さんが指揮を取ってくださってるのなら安心だわね。今の状況なら、あんた達2人がいなくても当分の間は大丈夫よね?」


「えっ?まぁ、数日位なら大丈夫だと思うけど・・・・・・なぁ、子虎?」


「えぇぇ?優香姉ちゃんの顔みてみぃや!絶対にろくなことにならんで、厄介なことに巻き込むつもりやで!」


小声で純也に返事をしている子虎ではあるが、狭いリビングの中、その声は全員に聞こえていた。


「お前なぁ、優香姉ちゃんに丸聞こえやで?」


優香の口元は涼しげに微笑んでいたが、その眼はまるで子虎を射抜くように鋭い狩人そのものであった。


「怖っ!」


子虎は純也の影に隠れるように優香の視線から逃げようとした。


ザッーザッー…ガッ・ガッ


いきなりサイゾーのキャデラックから取り外してきた無線機が音を発し始めた。


「夜叉丸の通信だ!みんな静かに!」


近藤が無線に飛びついてボリュームを上げた。


「田中っす。・ま、サ・ゾーさんの車、…発見」


「チャ・ネル7に」


通信状態が悪いからなのか?他に聞かれたくないからなのか?チャンネル変更の指示が聞こえてきた。


カチカチと指定されたチャンネルに変更した途端に鮮明な声が聞こえてきた。


「サイゾーさんの車を発見しました!回りにサイゾーさんは見当たりませんが……えっっっと……刀で斬られたゾンビが10匹程いてます。」


「たった10匹?サイゾーがそんな数のゾンビに遣られるはずがないでしょうが!てめぇら薬をキメてんじゃねぇだろうな!」


「ナ・ナンシ-さん!俺たち、薬も何もやってねぇっすよ。ナンシ-さんに嘘つく奴なんかいるはずないっしょ?

ジで、ゾンビが10匹斬られてんですよ!」


「周辺をきっちり探しなさいよ!本当にサイゾーは何処にもいないの?」


「すみません。辺りはもう真っ暗なんで…探しようがないっすよ。それよりもいつゾンビが現れるかも知んないんですよ。」


「だ!誰や!」


「どうかしたの?」


「だ、誰かに回りを囲まれてるみたいっす。暗くて全然見えへんけど……確実に何かいてます!クルクルと周りを回ってます!こら!鈴木!止めとけってっ…近寄んなって!バット持って近づくなって!

あっ!す、鈴木がいきなり消え・・・・ぎゃぁぁぁぁあく!く、来るなぁぁぁぁ--ぎゃぁぁぁぁあ!」


「田中?田中?・・・・・・・・・わりゃぁ!返事せんかぁぁぁあ-」


それっきり無線は黙ったままであった。


無線のボリュームを下げながら


「あの辺りにはまだ走るゾンビがいてるみたいだな。くそっ!行動範囲がわからんが、ここも無事とは言い難いかも知れないな。」


近藤がG36に手をかけようとした時、またもや無線機から通信が始まった。


「ウラジミールだ!今の通信で俺、ナンシー、田中の無線を三角測定してだいたいの場所は特定出来た。

今、A県N市に展開している自衛隊の後方だ、3~4時間で双子がこちらに到着する予定だ。到着次第、自衛隊に奇襲をかけて装備を奪う。奇襲と殲滅に2時間。移動に6時間。明日の朝6時~8時には現地に到着してサイゾーの件はこちらで確認をする。

先程捕まえた自衛官を痛めつけたところ、詳しいことはわからないが……どうも新手の走るゾンビが各所で確認されているらしい。サイゾーや田中を襲ったのもそいつらかも知れない。生け捕りにしたら、ドクターやボスが喜びだろうぜ。」


「ウラジミール!場所の座標を言いなさい!あたしが今すぐに行くから!」


「おい!おい!手柄を独り占めするつもりかい?

ボスは、あんたにお尋ね者を捜して、男の方は首を。女の方は生け捕りにしろ!って言う、最優先命令があるんじゃないのか?

命令違反をしてると『ロン』!が枕元に現れるぜ!せいぜい、頑張んな!じゃぁな!」


「ウラジミールッ!ウラジミールッ!糞ロシア野郎め!次、会った時はただじゃおかないからね!」


無線の会話を聞いていた、優香はニッコリと微笑みながら


「さっきの話しだけど…このロシア野郎と双子。を始末したら、奈良に帰ってもいいわよ。良かったじゃない、チョチョイとやれば半日仕事じゃない?

知ってる情報だけは話しておくわね。ロシア野郎ってのは身長2メートルの元ロシア特殊部隊の伍長。

双子は琉球空手の達人らしいわよ。」


「身長2メートルの元ロシア特殊部隊の伍長でウラジミール?それって……根来の?」


子虎が、何とも残忍な笑顔を見せ、ニヤリと笑った口元にはいつの間にか尖った八重歯が2本ニョキリと生え、まさしく虎、いやサーベルタイガーのようであった。


「子虎!何、牙を出してんの?あんたが牙を出すとろくな事になんないんだから!今回は綺麗な仕事にするんだよ!」


「優香姉ちゃ~ぁん、牙じゃないってば!八重歯!ヤ・エ・バ!」


「暴れる時だけに、ニョキリと生えてくる八重歯なんかあるもんですか!普段は八重歯なんかないくせに!あんたのは、牙!キ・バ!って言うのよ!

ところで、純也!根来ってどういう意味よ?お爺様の代で潰したんじゃなかったの?」


「何か、婆ちゃんたちの封印ってぇのも信用出来ねぇよな。封印されていたのに子虎の牙のことを覚えていたりしてんだから。

まぁ、そんなこたぁ、どっちでもいいけども、優香姉ちゃんが封印された後のことで婆ちゃんたちの命で優香姉ちゃんには伝えてなかったんだけど、どうも、黒脛巾組も根来衆もいづれ国内組織は我々に壊滅的打撃を受けると踏んでたみたいで……密かに海外で組織を構築していたらしいんだわ。

で、馬鹿なロシアが9年前に活動し始めたんで当時の1組と風魔の遊撃隊で潰しにかかったんだ。ウラジミールはなかなかの使い手だったんだろうね。風魔の遊撃隊の4名を返り討ちにして行方を眩ましたんだ。

だから、子虎にとっては一族の敵って訳なんだ。牙が出るのもしょうがないよ。遊撃隊には、子虎の幼なじみの娘のお兄さんがいたらしいし。

それに、この牙だけは婆ちゃんも封印出来ないそうだから……しかも、俺も初めて見るくらい伸びてるし…」


「優香姉ちゃん、ウラジミールは頂戴ね。ついで双子も引き受けるから!」


満面の笑みでニコニコとしている子虎の八重歯こと牙は更に数センチ程伸びていた。


人間の歯って?気分で伸びるものなの?(くるみ)


きっと、全て夢なんだよね。もう少ししたら目が覚めるんだよね?ね?みるみるうちに歯がのびるなんて(香)


う~ん。もう暫くしたら陸奥園明流とか範馬刃牙とか勇次郎とか、拳史郎なんかも出てくるんじゃないか?いやいや、もしかしたら仮面ライダーとか聖闘士星矢か?

本来のゾンビ物なら忍者なんかじゃなくB.O.W.(Bio Organic Weapon-生物兵器)とかが一般的なのに…なんなんだよ?この世界観は?(近藤)


三者三様に頭の中の疑問符を何とか整理しようとしているあいだに、優香は夜叉丸について、8人衆について純也と子虎に説明を始めていた。


ひとしきり話しを聞いたところで、純也と子虎が難しい顔をし始めた。


「な、何?あんた達が難しい顔をする相手が混じってんの?」


「いや。そのロン(龍)ってのが少し気になるんだ。この数年来、きな臭い話しの裏に必ずと言って出てくる名前なんだ。でも、そんな人物がたかが暴走族の用心棒ってのはなぁ?」


純也の言葉を子虎が引き継ぎながら


「て、言っても、その暴走族の用心棒に風魔の遊撃隊の4名の隊員を殺すだけの実力があるウラジミールがいてて、無線の会話から判断するとそのウラジミールが、ロンとそのロンが主従しているボスに対して明らかに服従しているんだから・・・・・・・無視は出来ないような気がするんですよね。」


「優香姉ちゃん、ちょっと静香さんとも相談したいんでちょこっと中座させてもらうわ。

まだ、お連れさんとはお互いに自己紹介してないけど、ちょっとの間失礼させてもらいます、先に食事でもしておいて下さい。」


純也は、優香と近藤やくるみ、香に笑顔で挨拶をして子虎とともに部屋から出て行った。


「何か、キツネにつままれたみたいな感じだが、心強い実力者が味方になったみたいだし・・・明日に向かって英気を養いましょうか?くるみちゃん、銃のクリーニングを説明しようか。優香さんと香ちゃんは食事の用意をお願いできますか?

警戒の方は、裏柳生や風魔の方が2人もいてるんだから特別視しなくても大丈夫ですよね?」


優香は微笑みながら


「休憩としましょうか。お茶でも用意しますわ。」


一行は、しばしの休息の時間をむさぼることとした。



ご意見、ご感想 お待ちしております。


今回より、簡単に次話予告を………


第12歩

純也&子虎VSウラジミール&双子空手家

壮絶な闘いの中……子虎の慎ましい初恋が披露される。のか?

極楽温泉に立てこもる由美子・由真・由紀のその後が明らかになる。のか?


全ては、夜叉丸編の皆様方の評価で決まります。

さて、どちらの今後がはっきりするのか?


一部知り合いからは町内会長のその後を!と言うマニアックな意見もある中……


次話 乞うご期待?てか?

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