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第9歩 夜叉丸-1

う~ん。ゾンビ物のはずなんですが・・・・少し脱線してしまっています。

まぁ、冒険活劇なんで何でもありありという事でご勘弁下さい。


予定では、1人1話のつもりなんですが・・・・・1話分の戦いなんてかけるんでしょうか?

激しいスキール音と衝突音や爆音が鳴り響き、近藤達は無理やり眠りから引き剥がされた。


「な、なんだ!」


「な、なに?」


飛び起きた近藤は枕元のG36アサルトライフルをひっつかみ、いそいそと予備弾倉の詰まったベストやらの装備を装着した。


隣の部屋に頭だけ突っ込んで、くるみに装備の用意を指示して、コンビニの正面玄関に面する部屋に移動し、カーテンの隙間から外の様子を窺った。


また、ランニングゾンビじゃねぇだろうな?


そこには、スポーツタイプの自動車と高性能セダン車が7~8台、コンビニの広めの駐車場でジムカーナ大会よろしく、数台ごとにタイヤを軋ませながらカウンターをあて走り回っていた。


籠城がバレたのか?


心配しながらも、もっとよく見渡せる位置に移動した近藤の眼に映ったものは……


グルグルと円状に回っている車の中をゾンビに追い回されている数名の人々であった。


「どうです?」


いきなり隣に、くるみと中野が現れた。


近藤は黙って駐車場を指差した。


「!」


「あれって!夜叉丸?だわ」


中野が鋭い眼で車を睨み付けていた。


「間違いなく夜叉丸なんですか?」


くるみは車と中野を交互に見ながら聞いた。


「間違いないわね。ほら見て!駐車場の入り口の真っ赤なアウディ!

夜叉丸の親衛隊長の車よ!

あいつが出てきてるってことは……

隣の黒いベンツが総長かも知れないわね!なぶり殺しにするつもりよ!」


「近藤さん!」


くるみが今にも飛び出しそうな勢いで近藤に指示を求めた。


「見捨てる訳にゃいかんが……

助けても、こちらの車には乗せれる人数じゃないぞ!」


近藤はしばし考えた後に


「中野さん、香ちゃんと昨日運び込んだ荷物と、食料と水を適当に車に運んでもらえます?

で、エンジンはかけたままで、用意が出来たら呼びに来て下さい。

その間に、香ちゃんには空のマガジンに弾を詰めさせて!くるみちゃんと俺は一旦部屋に戻って、ありったけの予備弾倉を持って!」


「分かりました。」


中野とくるみはきびすを返して部屋から飛び出した。続いて近藤も残りの弾倉を取りに戻った。


全員が揃った部屋で、皆が無言で頷きあい、それぞれが持ち場に移動した。


「くるみちゃんは、MP-7で、まずはゾンビを無力化してくれ!」


「俺は夜叉丸を叩くから!出来れば、セダン車は無傷で手に入れたい!」


「了解!」


2人は勢いよく、扉から飛び出した。


店舗正面の2階部分の通路に陣取った2人は、銃撃を開始した。


「まだ、2人は助けられそうです!」


最初に見た時は5名程逃げ回っていた人々も今は2名に減っていた。


慎重に狙いすまして、くるみは8体のゾンビを準々に射殺していった。


横では近藤がスポーツカーのタイヤに向かって、G36をバースト(3点射)で打ち始めていた。


ゾンビと違い、そこそこの高速で動く自動車のタイヤを狙うのはなかなか骨が折れたが、近藤の計算通りにタイヤを撃ち抜かれて動けなくなったスポーツカーが邪魔になりセダン車も徐々に動きが取れなくなり始めた。


既に2台のセダン車からはバットやゴルフクラブを握り締めた若者が飛び出してきていた。


そこに、激しい音に引き寄せられたゾンビ達が四方から集まりだしてきて、若者達がバットで応戦し始めた。


「車の中に逃げ込んで!」


くるみの叫ぶ声に気づいた2名はセダン車に向かい走り出した。


あと少しでセダン車にたどり着くという時、2名の内の1名の首が高々と血飛沫を撒きなから宙に舞った。


「あっ………」


頭の無い、首から血を吹き散らかした死体はビクビクと痙攣しながら地面に崩れ落ちていった。


その後ろには、日本刀を携え鮮やかな緑色の巻き髪に不気味なメイクをした、ゴスロリ衣装を着た長身の女が立っていた。


刀身についた血を下品に伸ばした異様に長い舌で舐めながら


「な~に?邪魔しないでくれる、折角の楽しい催しなのに~~

殺して欲しいのぉ~~」


と言いながらケタケタと笑っていた。


なんじゃ?あのデカい変な女。しかも、あのメイクは?………筋肉○女隊とかの大槻なんたらをえげつなくした感じじゃねえかよ!薄気味悪りぃやっちゃな~。近藤世代にしかわからないメイクの解説であった。


「いやぁぁぁ!離してぇぇぇ~~」


新たな悲鳴に、近藤とくるみが顔を向けると……


顔じゅうのあちらこちらにピアスを付けた、坊主頭にウサギ耳をつけ、金色のボディコンを身に纏った男?がもう1人の生き残りの女性の髪を掴み引きずっていた。


「五月蝿いわね!」


ボディコン男は、徐に女の頭を踏みつけた。


「ぎゃぁぁあ」


鋭い悲鳴とともに女性は動かなくなった。


「あら~やだぁ!刺さっちゃったわ」


女性の頭には、ボディコン男の履くピンヒールが深々と突き刺さっていた。


「変態!」


大きく叫んだくるみは、MP-7をボディコン男に向けてフルオートで撃ちだした。


しかし、銃弾は地面を削り、殺された女性に突き刺さっただけであった。


数メートル横でボディコン男は口笛を吹いていた。


「えっ?」


外れる筈がないと思っていたくるみは茫然としてしまった。


「なんで…弾をよけれるのよ」


ダダダダダダ………


ボディコン男に銃弾の嵐が襲いかかった。


「弾を避けたんじゃない!撃つ前にくるみちゃんが叫んだから予測して動いただけだ!」


10発ちかい5.56ミリを受けたボディコン男は、それでも起き上がってきた。


「ハァァァァ。ゾクゾクするわぁ~エクスタシーだワァァァ!

アバラが折れたみたいよぉ。嬉しいわねぇ。あんたを切り刻む理由が出来たわよぉ。」


ニタァァァァァと笑いながら、ボディコン男は近藤に向かって、舌なめずりをしながら右手中指を突き上げながら叫んだ。アメリカ人の大好きな相手を馬鹿にする仕草である。


「糞ったれ!あのボディコンは防弾仕様か!?」


「最新式なのよぉ~~」


とボディコン男は言いながら、両手をスカートの端に這わせた途端に、マジックのごとく、左右の指に6本の投げナイフ挟んでいた。


「死ね!」


叫びながら、ナイフを投げつけた。


「あまいな!こっちは射撃姿勢のまんまだぜ。」


飛来するナイフにG36の銃口を向けて5.56ミリの銃弾で6本すべてを粉砕した。


「う~~ん。殺り応えがある。いい男ねぇ~」


ボディコン男はクネクネしながら近藤にウィンクをした。


「ありがとうよ!なぜだか、昨日から人生最大のモテ期みたいでね。相手に不自由はしてないんだ!よ!」


近藤は、言うや否や、G36を肩にかけホルスターからP46を引き出して、ボディコン男に狙いをつけた。


ボディコン男はまたまたどこから出したのか、鳥の羽根でできた扇子を持ち出して頭部を隠し


「拳銃なんかじゃ、あたしは殺れないわよ!なにせ、痛みを感じないんだからねぇ。しかも最新式のボディアーマーでしょ?負ける要素がないじゃな~い?」


扇子をヒラヒラとさせながらボディコン男は笑い飛ばした。


「なら、喰らってみな。H&K作、対ボディアーマー用の4.6mm×30弾だよ。GSG-9の御墨付きだぜ」


パン!パン!パン!パン!


近藤は4度引き金を引いた。


1発目はボディコン男自慢のボディアーマーの腹部を貫いた。


2発目は左肩を撃ち抜き扇子が地面に落ちた。


3発目、4発目はそれぞれ左右の膝頭を撃ち抜き、ボディコン男は膝から地面に落ち、まるで許しを乞うような姿勢になった。


「なんで?なんで、あたしのボディアーマーを撃ち抜けるの?」


ボディコン男は、信じられないといった驚愕の顔をして撃たれた腹を両手で押さえながら近藤を見た。


その目に真っ赤なレーザー光線が当たり


「悔い改めな!」


パン!


5発目の4.6mm×30はボディコン男の右目から頭に入り、脳みそに壊滅的に損傷を与え頭の後ろに大きな穴を贖って飛び出した。


「ざまぁみろってんだ。」




「もう!」


くるみが隣で癇癪を爆発させていた。


くるみは、近藤がボディコン男と対決している間、ゴスロリ女に対して必死にMP-5で銃撃を行っていた。(MP-7より手馴れてたマシンガンに切り替えていたのである。)


ゴスロリ女の衣装も防弾の様子で、身体に弾が当たってもケロッとしていたので、頭や剥き出しの手足を狙ったが、ことごとく刀で銃弾をはじかれていた。


パン!パァァァ-ン


車のホーンが鳴り響いた。


「ボスがお呼びだわ。今日は勘弁しておいてあげるわね。ウサギ禿の変態を倒した程度で浮かれないでねぇ。あんなのは雑魚だからね!」


ゴスロリ女は、悠々と真っ赤なアウディに向い大股で歩き去っていった。


ゴスロリ女は車に戻りながら、進路を邪魔するゾンビやそのゾンビと戦っている仲間であろう若者達を関係なしに容赦なく斬り捨てながら進んだ。


「酷い!」


くるみが顔を背けた時


タ-ン!と1発の銃声が響いた。


アウディの手前で迫りくるゾンビを斬ろう振り上げた、ゴスロリ女の刀が鍔のところで真っ二つに折れた。


「そっちこそ。油断大敵だぜ」


近藤がG36のスコープ越しに返事を返した。


「チッ!予備を持ってやがるのか。」


ゴスロリ女は、折れた刀を地面に捨て、慌てた様子もなく背中から新たな刀を抜き、迫り来る数体のゾンビを簡単に斬り捨てアウディに乗り込み、黒いベンツと共に走り去っていった。


その後をバットやゴルフクラブで武装した仲間達数名が走りながら追い掛けていった。


走り去る車に向かって、MP-5に装填されている残弾をフルオートで全て撃ちきったくるみが


「逃げられちゃいましたね。」


と言いながら、空になったマガジンを外して新しいマガジンを装填していた。


「ああ。これからが大変になりそうだな。あのゴスロリ女みたいのが何人もいたら、かなり厄介なことになるぞ。それより、この騒ぎで寄ってきたゾンビを何とかしなきゃ・・・・車で突破できる数じゃねえぞ!」


コンビニ前の駐車場には、ゆうに100体近いゾンビがうようよし、そのうちの半数ほどがコンビニの2階にいてる近藤とくるみに気がつき、コンビニに向かい始めていた。


「仕方がないな。くるみちゃん、中野さんと香ちゃんを呼んできてもらえるかな?車のエンジンは切って、そうだな・・・・・・装備はMP―5とUSPでそれぞれ10本ずつ予備マガジンを・・・・

あっ、それとG36と予備を3マガジン取ってきてもらえるかな?

この際だから、下のゾンビの排除を兼ねて2人に射撃訓練をしてもらおう。」


くるみが2人を呼びに行っている間、近藤は『夜叉丸』について考えを巡らせていた。


どれぐらいの規模なんだ?

なんで、あんな変な奴が混じってんだ?

あのゴスロリ女が忠誠を誓うボスってのはどんな人物なんだ?

それに・・・・・なんで防弾仕様の服なんて持ってるんだ?


考えれば考えるほど、謎ばかり増えていく「負」の連鎖に、近藤は無理やり考えることを中断した。


まずは、中野さんと香ちゃんが銃をまともに撃てるようにしなくちゃ!この先、身動きが取れなくなっちまう。このコンビニも、今晩は使えそうにないし・・・・・・・・・

新しい休憩場所も確保しなくちゃなんねえな。どこかにいい場所はないだろうか?


近藤が必至に頭の中の地図を捲っている間に、装備を用意した3人が戻ってきた。


答えの見つからないままに、近藤は中野の香にMP-5やUSPの取り扱い方や撃ち方を説明し、中野は近藤が、香はくるみがつきっきりで射撃を教え始めた。


両名が10本のマガジンの全てを使い切って練習を行ったところ、香はほぼ7割程度の命中率(但し、ゾンビに当てるだけなので、致命傷を与える命中率に至ってはよくて4割である)で及第点であったが、中野に至っては4割に満たない命中率であった。


なんで?レーザードットが当たった瞬間に引き金をきくだけなのに?どうやったら外すことが出来るんだよ!


近藤は、顔には出さないように愚痴っていた。


中野には致命的な弱点があった。何度教えても、引き金を引くときに、力一杯に引くために、銃口がブレてしまうのだった。


これ以上は、弾の無駄使いだな。残りのゾンビを始末して・・・・・新しい隠れ家を探さないと、このまま夜を迎えると厄介なことになるぞ。昨晩の走るゾンビもいつ現れるか分からんしな。早いとこ、ここからズラかる方がよさそうだ。


「よし!3人は戻って、装備の再点検と空マガジンへの補充。それと、出発までに簡単に食べられる物を2~3食分見繕ってくれ。

俺は、下のゾンビを全部始末してから降りるから、それと、くるみちゃん机の上に小型トランシーバ-があっただろ?チャンネルは6番にしてある。持っていてくれ。充電式だけど数時間なら近距離の連絡手段にはなるだろう。

さあ、夕方の4時過ぎには新しい隠れ家を探さなきゃならんから、急いで行動するんだ。」


それから10数分後、全員で装備の再確認を行い、運転席に中野、助手席に近藤。後部座席にくるみと香が乗車した。


「さぁ、開けるぞ」


扉の上がり具合に合わせながら、軽自動車がスルスルを駐車場を滑り出た。


「ちょっといいですか?」


中野が、返事も待たずに『夜叉丸』達が乗り捨てた、車に向かって軽自動車を進めていった。


「あっ!あれあれ!」


1台のセダン車の中を覗き込んでいた中野は何かを発見したらしく、唐突に車を止め、車を飛び出しセダン車の中に潜りこんだ。


慌てた近藤も飛び降りて、P46をホルスターから引き抜きながらセダン車にもぐりこんだ中野をバックアップできる位置に走りこんだ。


同時に、くるみはサンルーフから身を乗り出して、MP-5を構え周囲に向かって注意の目を向けていた。


「中野さん!安全確認もぜずに車に乗り込んだら駄目ですよ!」


「ごめんなさい!これが欲しかったんだ!」


車から這い出して来た中野の手には、二振りの木刀のような物が握られていた。

「木刀なら・・・・車の中にあ・・・・」


近藤の言葉を遮るように、中野はその木刀の柄の部分を引いた。


それは、木刀ではなく日本刀であった。中野は抜いた日本刀の刃を四方から眺めて


「ふーん。結構、いい代物じゃん!・・・・・・・

あっ!ごめんなさい・・・・・・・・・

私、銃が下手でしょ?でも、これなら皆の足を引っ張ることはないわよ!少なくとも接近戦なら十分な戦力になれるわ。さあ、いきましょ!」


マイペースな中野巡査に引きずられるように、近藤は車に戻った。コンビニ駐車場の出口で中野が


「5キロほど離れたところに私の自宅があるんですが?メゾネットタイプでお隣は未入居ですし、駐車場は簡易ですがゲート式の扉もついてます。車も燃えちゃったんで入ってませんし・・・・・

食糧もそれなりにありますし、女性用の着替えも手に入れられますよ。」


「現時点で、贅沢など言ってられません。是非お願いします。」


近藤の一言で、中野巡査の自宅に向かうこととなった。


数分の沈黙を破ったのは近藤であった。


「中野さんは『夜叉丸』については詳しいんですか?」


中野は前方をしっかりと見つめ、下手な破片などを踏みタイヤがパンクすることのないように慎重に運転を行っていた。


「ええ、たぶん署内でも詳しい方だと思います。生活安全課で4年。交通課で2年の付き合いになりますから・・・・まぁ、ある意味警察官になってから今までずっとの付き合いなのかもしれません。」


「よろしければ、『夜叉丸』について教えていただけますか?」


「わかりました、この近くに見通しのいい高台があります。ちょうど戻る途中なんで、そこで少し休憩を取りながらの説明でもよろしいですか?こみいった部分もあるので、運転しながらというのも・・・・」


「わかりました、そうしましょう。見晴のよい場所なら周囲を警戒しながらお話を聞くことも可能でしょう。」


更に数分上り坂を上がったところに中野が指定した高台があった。高台は民家から離れた位置にあり、下りきるまで他の民家もなく周辺にはゾンビがいる気配もなかった。この場所しか知らなければ、街中に人肉を求めて徘徊しているゾンビがいて、人々が死にもの狂いで逃げまとっているとは信じられないであろう。


「夜叉丸はもともとこの街にできた小規模な暴走族だったらしいです。設立されたのは10年くらい前だそうです。

変化が現れたのが、私が警察官になって生活安全課の少年係に配属になった前年だから7年前だと聞いてます、それまでは小さなやんちゃな暴走族で構成員も30名足らずだったんですが、総長が変わった途端に、急に武闘派として過激集団化していき、わずか2年で近隣8県の名だたる暴走族を配下に収めたんです。圧倒的な暴力支配で・・・・・・。

ただ、拡大しただけでなく、対抗していた暴走族のリーダーの数名が行方不明にもなっており、単なる暴走族の抗争事件以上の可能性もあると、各県から選抜された刑事課や交通課や少年係が捜査を開始しました。我々の署は地元であった為、交通課と少年係は総動員でした。我々は全員でその総長と言われる人物の特定に奔走したのですが、名前を確認することすら出来ませんでした。勿論、何らかの形、別件逮捕などでの突破口すら見つからなかったんです。

唯一の手がかりが、その総長が入ってくる直前に家庭事情で引退した特攻隊長が残した言葉だけです。その家庭事情というのは、付き合っていた少女の妊娠でした。その少女も、自身の家庭不和で深夜徘徊を繰り返す少女でして、私の担当だったんです。

『2年間は我慢して見守ってきたが、危険な方向に進んでいる後輩達に活を入れに行ってくる。中防の糞餓鬼にいい様にされやがって』と言葉を残して単身で集会に乗り込んだらしいんです。

その後彼は行方不明です。当時私は他県の応援で長期不在だったので、私の先輩が相談を受け、先輩と少年の奥さんが当時の仲間や後輩に尋ねまわったんですが・・・・・・・3週間後に、奥さんは監禁の果てに暴行・凌辱を受けて・・・・・身体中の穴という穴に瞬間接着剤を注入されるという惨たらしい方法で殺害されました。2歳になる息子さんも首を絞められて・・・・・・・

ほぼ、同じ時期に先輩は・・・・・ひき逃げに会い即死でした。ひき逃げに使われた車は盗難車で遺留品なども見つからずです。

その後、県警本部長や県の公安委員会のメンバーの身内や捜査関係者の身内に、偶然では済まされない事故が多発して・・・・・いつの間にか自然と捜査は打ち切り・・・・・関係者は口をつぐむようになってしまいました。

当時の上司が、その後に組織犯罪対策部に異動になったんですが、近隣8県の暴力団や一部広域指定暴力団すら夜叉丸に歯向かうどころか、その配下のごとくにこき使われているが判明したそうです。現在は、組織犯罪対策部長の特命で7名の捜査官と5名のサポートメンバーが極秘で専従捜査を行っています。私もそのサポートメンバーだったんです。

1週間前にようやく、リーダーの名前が判明しました。現在の名前は、影丸一馬。21歳です。丁度当時の年齢が中学生です。」


一気に説明した中野は、ペットボトルのお茶で喉を潤していた。


「影丸?もしかして影丸知事の?」


近藤が信じられないという顔で尋ねた。


「そうです。父親は影丸知事。祖父は影丸元総理ということになります。

ですが、この影丸一馬。巧妙な手口を利用していますが影丸性を名乗るまでに少なくとも3回の養子縁組で性を変更していることが判明しています。つまりは、影丸家の養子ということになってます。

影丸性の前が、高柳性でした。ご存じのとおり高柳家はこの地方一体に広大な土地を持つ大地主です。その前が山崎性です。山崎性は有名ではありませんが、隣街の総合病院の理事長一族です。」


突然、くるみが会話に割って入ってきた。


「その前は、高須性ですよね?

高須健一、るみこの長男。

高須健一は事故死。

一馬は実母や実妹への過度な暴力行為が認定されて保護矯正施設に入所、しかし1週間で脱走。その後行方不明?違いますか?

ついでに言えば裁判所命令により、実母や実妹は新戸籍に異動し移動情報は抹消?ですよね」


くるみが、MP-5の銃杷がミシミシと音がなるほど握りしめていた。


「そ・・・・・その通りだけど。なぜくるみちゃんが知っているの?・・・・・・・えっ?もしかして?くるみちゃんが?」


「その、悪魔のような男の妹です・・・・・・・・

私が10歳だった時です。お父さんは、あいつに殺されたんです。当時、お父さんが発明した研究結果が欲しかっただけで・・・・・私やお母さんを人質にとって、何か月もお父さんを追い込んでいったんです。

そして、忘れもしません。あいつは、笑いながら・・・・・笑いながら国道にお父さんを突き飛ばしたんです。誰にも見つからないように細心の注意を払っていたんでしょうけど・・・・・・普段から馬鹿にして空気みたいにしか感じていない私が見ていたことには気づかなかったんです。

高校を卒業したら、警察官になって・・・・・拳銃であいつを撃ち殺すって誓ってたんです・・・・・・

でも、3年間入院して、4年前に再婚したお母さんが2年前からやっと笑顔で笑えるようになったんですよ。だから・・・・・決心が鈍っていたんです。でも、許せません。」


「でも、くるみちゃん。今の『夜叉丸』は単なる暴走族じゃないのよ。暴力団や海外の犯罪組織とも関係があるのは間違いないの。もしかしたら、国家の秘密機関なんてところとも関係があるかのしれないのよ。

私たちがつかんでいる情報だけでも、異常殺人を常にしている護衛みたいな取り巻きが8名もいてるの・・・・・・

禿頭のオカマのナイフ投げ、琉球空手の達人の双子兄弟、身長2メートルの元ロシア特殊部隊の伍長、人切りサイゾーと飛ばれた九州の暴力団員、ゴスロリ衣装のオカマのナンシーと呼ばれる関東No1暴走族の元リーダー、一馬の頭脳と呼ばれる闇医者上がりの40台の男、それと正体不明の『龍』(ロン)呼ばれる20台の男。龍は一馬の寵愛を受けて夜伽までしているそうなの。

でも、この情報を入手した、公安の捜査員はあまりにも深く関わりすぎて未だに組織から抜け出すことが出来ていないの。」


夜伽よとぎってなんなんですか?」


緊張した会話の中でくるみのいきなりの質問に、近藤と中野はおもわずズッコけてしまった。

「近頃の高校生はこんな言葉も知らないの?……内容が内容なんで近藤さんから説明して頂けます?」


中野巡査に話しを振られた近藤はドギマギしながら


「お、俺が説明すんのか?女性からの方がいいんじゃないかい?

そうだ!中野さんは少年係だから…若い子たちに説明するのは慣れているんじゃない?」


「私がですか?近藤さんってこの娘たちくらいの娘さんがいらしたんじゃなかったでしたっけ?何事も経験ですよ。ほら、頑張って!」


近藤は、中野巡査に押し切られる形で渋々と説明し始めた。


「もともとは女性が男性の相手をして共寝することなんだが…共寝っていうのは 一緒に寝ることの添い寝ではなく…つまり、そのだな、夜のお相手をするってことなんだわ。」


「わぁあ!男同士ってことですか?いやぁ、不潔!超キモいんですけど…」


香が口を挟んできた。


「まぁ…嗜好ってぇのは、人様々だかんな。ほら、宝塚みたいなもんだよ!」


苦しい言い訳をする近藤であった。


「宝塚は女性同士だから、見た目も綺麗だから許せるじゃないですか!

男同士ですよ?松潤とはるな愛なら許せるけど…松潤とマツコDXとか松村とか出川じゃ、キモ・キモでしょ?」


「それは例える相手次第だろうが!松潤とキムタクとか竹野内豊とか小栗とかならありじゃね?

女性だって、久本とイモトとか山田花子とか泉ピン子とかならキモいだろ?」


「でも、久本とイモトだって後ろ姿ならありかもしれないですよ?」


近藤と香がくだらない言い争いを始めただしたところで、中野がわって入ってきた。


「もう。近藤さんってば、中学生の香ちゃんと同じレベルで言い合いしてどうするんですか?

そんなんじゃ、お家でも娘さん達にかなわないでしょ?大人なんだから、きっぱりと言い切らないと駄目ですよ。最近の若い娘は屁理屈が多いんですからね。

香ちゃんも、しょうもない疑問を持つんじゃありません!男同士って云うのもあるんです!」


中野巡査にピシャリと言われて、モゴモゴと口の中で反論をしながらも香は納得せざるを得なかった。

はむかえば、大目玉を食らうのは必須と言う顔を中野がしていたのである。


おお!久しぶりに嫁並みにこえぇ女性だわ!昨日、勢いに呑み込まれてたら……おおぉぉ、こわっ!嫁や娘達にバレたら、だだじゃすまねぇどころか、こっちも強いから・・・・挟まれたら命はないかも知れないな!


こっそりと自問自答している近藤であった。


「えっと…話しが大きくそれちまったが…夜叉丸とは既に一戦交えちまったからな。

8人衆?だっけ、禿頭のオカマのナイフ投げとゴスロリとは顔見知りになっちまったぜ。

ただ、禿頭は…ケバいボディコンスタイルで顔中にピアスしてた。」


「うさぎの耳もつけてました。」


ボソリとくるみが呟いた。


「そうそう、ありゃきっとバニーガール!そう!バニーちゃんのつもりだったんじゃねえかな」


中野に睨みつけられて、近藤は続きの言葉をゴクリと呑み込んだ。


「禿頭のオカマは…近藤さんが始末してくれました。ゴスロリには逃げられましたが…ゴスロリはオカマには見えなかったです。」


くるみがボソボソと情報を補正していた。


「既に8人の1人はやっつけた。と言う訳ね?」


考えこむ中野に対して、近藤が頭をかきながら情報を訂正した。


「正確に言えば…ゴスロリの刀を銃弾でへし折ったから……十分に恨みも買ったぜ。多分はらわたが煮えくりかえってると思うぞ。」


「逃げても追われると言うことですか?」


「そいつはわからないな。

まず、通信手段がないだろう?だから、8人衆がどの程度近い距離にいてるかだな。

それに、俺達を捜にしても、どうやって通達を出すかだな。身近にそんなにたくさんの兵隊がいるとは思えないんだが?

それと……無用な心配をかけたくなかったのと。タイミングがなかったんで伝えてなかったが…

ゾンビなんたが………どうも、のろまなタイプだけではなく、走るタイプもいてるみたいなんだ。」


既に何度もゾンビと遭遇しているくるみがすかさず反応した。


「走るって?スピードはどれくらいなんですか?」


「夜中にむかいのマンションを走り回るところを見ただけだが…結構なスポーツマンレベルだと考えた方がいいかな?

これだけたくさんのゾンビに遭遇してて初めて見たし、数もせいぜい7~8体だけだったから、走るランニングゾンビは全体の1パーセント以下くらいじゃないかなぁ。

しかし、1万人の住人がいれば100体はいてる計算になるから油断は出来ないな。


普通の、のろまゾンビは凄い数で押し寄せてくるし…

夜叉丸の兵隊に8、いや7人衆にランニングゾンビ……こっちは4人。逆立ちしたってかないっこないって感じだわな。よほど慎重に行くのと、悪運が強くなくっちゃ……な。」


少し青ざめた表情で中野巡査が言った。


「どっちにしろ。コソコソと逃げ回っても無駄と言う訳ですね。」


「ああ、この騒動は世界各地で発生しているらしいからな。警察は装備からみて役にはたちそうにないし、そうなれば自衛隊と在日米軍がどの程度統制がとれた状態で活動してくれるかが問題だ。

自衛隊は、今のところゾンビが発生していないらしい北海道で部隊の編成を実施しているか?本州を見捨てて爆撃でも考えているかだな。

どっちにしろ、情報が少なすぎるから・・・・・何とか情報を入手したいもんだ。

かれこれ、1時間はここの止まったままだが、夜叉丸にもランニングゾンビにも遭遇はしていないというラッキーな状態だし、すくなくとも尾行されていることもないわけだから取り急ぎは中野巡査の家にいくしかないな。

ここからだとどのくらいかかるのかな?」

中野巡査は、ギアをドライブにいれながら


「ここを下って、もう一度小高い丘を登った中腹なので、ゆっくり走って10分くらいだです。出発しますね。」


5分ほど下った後に、緩やかな坂道を小高い丘に向かって登り始めたところで前方に黒いキャデラックが止まっていた。


車に寄りかかりながら、煙草を咥えていた運転者らしき人物がこちらに向かって手を振りながら手招きをしていた。


「生存者だわ。こんなところで止まっているなんて、ガソリンが切れているのかしら?どうします?近藤さん?」


「キャデラックで着流しですよ?いかにも田舎のヤクザ屋さんじゃないですか?しかも、今日の流れから言えば・・・・」


「人切りサイゾー!?」


香が素っ頓狂な声を張り上げた。


「中野さん、7~8メートル離れたところで止めて下さい。俺が話しをします。」


キャデラックから8メートルほど離れたところに停車し、助手席から近藤が用心深く降り立った。無用な争いを避けるために、G36小銃は車に置いたままである。


「くるみちゃん。サンルーフは開けてあるから、もしもの時には加勢してあげてね」


心配そうに中野がくるみに声をかけた。


「はい。そのつもりで、向こうからは死角になるように中野さんの影に隠れてます。怪しくなったら声をかけて下さいね。」


くるには、MP-7のコッキングレバーを操作して初弾の薬室に送り込み、前部のハンドスティク立てて、後部のショルダーストックを引き出し、フルオートで射撃できるように準備を行った。


「どうかしましたか?この一帯は化け物がうろついているから危険ですよ!」


近藤は努めて明るい感じの声でキャデラックに寄りかかる男に声をかけた。


「ご親切にどうも。アメ車ってやつはいけませんね。燃費がわるうてガス欠なんですわ。JAFを呼ぼうにも携帯電話がつながらんのです・・・・・・・・・

その、お身なりからすると警察の特殊部隊のお方ですかい?」


「いえ、民間人です。この装備は緊急避難的処置ってことで・・・・」


「そうですかい。あっしは、人を探していましてね。あんさんと同じ様な格好をしてライフルを持ってて、若い娘さん連れをいなさるそうなんです。」


「その人が何か?」


「仲間の仇らしいんですわ。あっしは、機械が苦手でしてね。無線たら言う機械が一方的に喋りかけてきたんですわ。既に、仲間が1人殺されたそうですねん。」


まじかよ!人切りサイゾーで確定じゃないかよ!


「何故、そんな話しを私に?」


「そうでんな!あんさんの背丈に格好に装備に人相。伝え聞いてとるのとそっくりですねん。しかも、市内からここまで・・・・・丁度、程よい時間でっしゃろ?

あんさんに恨みはありませんが、これも渡世の義理でんねん。堪忍しとくれなはれ。」


てか、人切りサイゾーは九州の出身じゃないのか?まるで関西人じゃねえかよ?


「でも、俺の装備は拳銃。いわば飛び道具ですよ?貴方は見るからに拳銃などはお持ちのように見えませんが?」


「若いもんは直ぐに飛び道具に頼りますが・・・・あっしのこれがあれば、弾の一つや二つ、難なく弾き飛ばせますのや。何なら、試さはりますか?」


近藤は、この自身ありげな言葉に背筋に冷たい汗をかいていた。


ハッタリじゃなさそうだな?さて?どうする?






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