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開幕

起きたら家族は旅行。1人取り残されたが…街にはゾンビ!

いざ!尋常に!尋常に!

冴えない中年親父の呆けかまし活劇の始まり!

は・じ・ま・り--


徘徊の田中さんも応援してます。

「へっくしょん!ブェックション!」


俺は、止まらない咳に苛立ちながら、枕の横のティッシュBOXから乱暴にティッシュを数枚引き出して乱暴に鼻をかみ、そのティッシュを開き自分の風邪の悲惨さに途方に暮れていた。


どうやったら、こんなに汚い鼻水が出るんだよ!医者の薬もまるっきり効きやしない。


トイレにも行きたいし、水分も補給しなけりゃ…と重たい身体を無理やり引き起こして、階段をとぼとぼとリビングに降りて行った。


45歳になり、女房と娘2人(18歳と16歳)がいてるが、仕事、仕事にかまけている間に完全に家族との間に隙間が出来てしまっていた。


女房は、この世のすべての悪いことは全部俺のせいだと言わんばかりに責めたて、娘2人も完全に女房の味方と言う始末。

木曜日から寝込んで、早3日がたとうとしていた。


3日間の内、2回だけ次女がペットボトルにお茶を入れて部屋に来ただけで、飯さえ用意されない始末。多分、生死の確認に来たんだろう。大した期待はしてないから人生こんなもんだと割り切れるんだろうか?


典型的な駄目オヤジさ。

リビングに降りたが、はて?誰もいてる様子がない。リビングにポツンと置かれたクリスマスツリーを見て、もう少しでクリスマスだと気づいた。

机には昨日の夕刊が置かれたままになっている。今日って朝刊の休刊日か?


「買い物でも行ってんのか?」


話す相手もいないのに誰に聞いてんだか…


冷蔵庫からスポーツドリンクを引っ張り出して、なみなみとコップに注ぎ込んで一気飲みほした。

その目先にあるカレンダーに記され赤丸を見つけて、家族が不在の理由が分かった。子供達が冬休みに入り、ボーナスもたんまりと出たんで2泊3日の温泉旅行に行ったみたいだ…


風邪で3日も寝込んでいる親父をほったらかして……相変わらずだ……


仕方なく、トーストを焼き、インスタント珈琲をいれて、木曜日の朝刊から順番に読み始めた。


『S県で怪奇現象!人喰い発生!』


てか、俺はスポーツ新聞じゃなく、それなりの一流紙の朝刊を読んでるんだが?


詳しく読むと、S県の山あいの町で、熊に襲われたか何かの死体を新聞配達人が見つけ交番に飛んで行き、警官と二人で戻ると消えていた。


血溜まりがあるので、何がしかの事件があっとみて警察の鑑識が調べたの結果、A型とO型の血液が検出された。と……


自分の背中がゾクゾクとするのが分かった。


かく言う、俺は生粋の『ゾンビ』フリーク。


下手くそだが、コミュニティーではゾンビ小説も連載してるんだ。


しかも、いつでも世紀末に対応出来る用品まで準備万端なんだぜ!


まぁ、興味のない人や…いやいや多分マニアにも引かれる程の凝りかただが……好きなもんは仕方がねえじゃないか!


まさしく、事実は小説より奇なり!か?


急いで夕刊から次の日の朝刊とさらに今朝の朝刊まで読み進んだが、残念他の記事はなかった。


まぁ、当たりまえだのクラッカーだわな。(若い人は誰の台詞はネットででも調べてくれよな)


無意識の内に2枚のトーストを平らげていた。


人間の集中力ってぇのは凄いもんだわ。


新聞記事を見て以降、身体のテンションが変わったみたいで、あれほど苦しかった鼻づまりも嘘のようにナリを潜めている。


ふと、時計を見ると19時を回っていた。カーテンと雨戸で覆われた窓にすっかり時間感覚が麻痺していた。


まぁ、前後不覚で爆睡してたら時間感覚が麻痺してても当然なのかもしれない。


起きているにも関わらず連絡もないと非難されたらたまらないので、女房に電話でもと携帯を開いたところ、大量のメールと着信の嵐。携帯電話の留守電も一杯になっていた。


珍しいこともあるもんだと着信履歴を見ると、女房に長女に次女に職場の上司に同僚、挙げ句に普段連絡のない妹に大学の同期に知り合いの近所の交番勤めの巡査部長と10件以上!


ホイホイ。本当にゾンビでも出たんじゃないかな。と思うほどだ。


留守電1 長女 10:00

「お父さん!風邪大丈夫。私達は予定通りにS県の極楽温泉に着いたからね。連絡先はメールしとくよ。」


留守電2 女房 11:30

「お父さん。私です。起きたら電話もらえる?てか…まだ寝てるん?今、旅館の放送で緊急事態とかで部屋に鍵をかけて出るな。とか流れてるんやわ。念の為、此方に迎えに来る用意しといて、軽自動車は家の駐車場に置いてあるから。

本当に、折角の温泉旅行が台無しやわ!」


留守電3 次女 12:12

「お父さん!助けて!旅館の周りに血だらけの人が20人くらい居てて…玄関を叩いてるねん!テレビ見たら、全国で発生してるって……

今、旅館の放送でみんなで大広間に集合してバリケードを作るから集まれって、3人で大広間に避難するから助けに来てな!」

後ろで女房や長女がバタバタとしている音がしている。


「本気かよ」


背筋をゾッとさせながら4つ目の留守電を確認した。


留守電4 14:45

「拓さん!鈴村(巡査部長)です。まだ発表はされてないんですが…あちらこちらで奇病が発生してて…それが拓さんの得意分野のゾンビとまるっきり同じで、外出禁止令と非常事態宣言が16時に発表になります。私は署に全員参集がかかって…」録音時間一杯で途中で途切れた。


慌てて女房に電話するが、電話口から聞こた声は女房ではなく無情な声のアナウンスだった。


「只今、回線が非常に混み合っております。暫く経ってからもう一度お掛け直し下さい。」


勿論、家の固定電話も同じ結果だった。


連絡がつかないことをあれこれ考えても仕方がないので……


「まずは、腹ごしらえと武器だな!」


レンジでチンする食材を適当にレンジに放り込み、3階の自室に戻りクローゼットの中のスーツの奥にある大型のバックパックとその隣のバットケースを引っ張り出した。

2階に運び終えたところでレンジが出来上がりを知らせていた。


ピラフと焼そばをほうばりながら、テレビをつけてN○Kにチャンネルを合わせると……


頼りないおっさん(一応、内閣総理大臣って言われてるが…ね)が非常事態宣言と外出禁止令の宣言をしているVTRが流れていた。


直ぐにアナウンサーが現れ、首相をはじめ政府首脳は洋上の海上自衛隊の艦艇に移り臨時政府を設けたらしく、野党を中心避難声明が続出し国民を裏切る行為と受け止められても、仕方がない対応だと説明していた。


画面は切り替わり、自衛隊の展開について、飾りの一杯付いた制服の自衛官が説明をしていた。

張り出された日本地図を見たところ、北海道以外の地域に発生している様子だった。


S県には自衛隊の駐屯地もあり、温泉地も比較的近いので大丈夫にも見えるが…如何せん戦闘したことがない軍隊だからなぁ。


それから30分に渡り、自衛隊の基本的な作戦行動と、現時点で把握出来ている奇病の説明があった。


説明を聞けば聞くほどゾンビそのものじゃないか!


それでも、日本人(政府?自衛隊?)はゾンビと認めてないところが空々しいほど脳天気だ。


その時いきなり、メールの着信音が部屋に響いた。


通話は駄目みたいだが、メールは何とかなってるみたいだ。


15:30 長女


『自衛隊の人達が救助に来てくれた!

自衛隊も救助に出た半数の部隊と連絡が不通になってるらしくて、ここに来た自衛隊の人達も三分の一がやられたらしい。で、基地に戻るのは諦めて旅館に立てこもることになりました。電話は全然つながらないのでメールします。

いつ頃来れそう?』


メールも到着するのに数時間近く経ってやっとみたいだな。リアルタイムの情報は諦めるしかないみたいだ。


しかし、自衛隊の部隊が半数もやられているのに、個人の父親がどうやって簡単に其処まで行くんだよ!普通にお迎えに来て貰うような簡単な言い方すんなよ!と毒づきながら


『今、19時45分メールを受信した。そちらに向かう。期待はするな。自衛隊すらかなわん相手に父ちゃん1人でS県まで行けるか検討もつかん!』


とりあえず、送信ボタンを押した。


「おい、おい…嘘だろ?」


送信中にアンテナの表示が一本ずつなくなり、結局、送信出来たのか出来なかったのかわからない内に圏外になってしまった。


お約束のライフラインが無くなってくるパターンだが……早すぎないかい?まだ発生して数時間じゃないかよ。


国内の通信インフラってぇのはそんなに脆弱なのかよ?


念の為に携帯電話を充電器に刺して、予備の電池やなんやらを引っ張り出し机に並べた。


サバイバルショップで購入した黒色のタクティカルスーツを着込んだ。


タクティカルスーツには通常のエルボー(肘)・ニー(膝)パッド以外に、手首から肘にかけての部分に薄いチタン鋼板を防刃繊維のケプラーを3重で覆ったサポーターのような対噛み付かれ用パッド(と言っていいのか?)も特注で作って貰った。が縫い付けられている。それでも予算の関係上左腕分しかないが……

店主も生粋のゾンビフリークだったので、商売抜きに楽しんで作ってくれたみたいだった。

流石にジャパンオタクは力強い。


更に、刃渡り15センチのサバイバルナイフを右胸上のケースに装着し、右腰の少し後ろ側に3段伸縮の特殊警棒を差し込み、その他のポケットやらにタバコやジッポライターやらフラッシュライトやらをねじ込んだ。


次は長物か。

時代劇さながらに鞘(特注品だぜ)に鉛芯入りの木刀を入れて肩かけにし、同じく鞘に入った刃渡り刃渡り60センチの蛮刀マチェットを鞘ごと右足の踝から膝にかけての部分に括りつけた。

この蛮刀は、近所の鉄工所の親父さん(社長)に無理をお願いして、軍用の官給品と同じ炭素鋼で作ってもらい、勤めている元岐阜の関の刃物職人に何度も焼き入れをして貰った刀身が肉太の一級品で防錆加工にオリーブドラブ色に塗って貰った奴だ。しかも、『突き』が出来るように先端の折り返し部分にも特別に刃を入れて貰っているんだ。

更に、バンテージを巻いたソフトボール用の細身のバット。(これも、鉄工所の親父さんに加工して貰い、内部に強化用の軽量の粘着ジェルを流し込んで貰っているんだぜ。なんせ、人を殴る用途に作られたもんじゃないから、独自改良ってやつだ)


更に、お次は飛び道具だ。

ボウガンやアーチェリーはあまりも捻りがない。俺が用意したのは、スリングショット。早く言えば、『ばちんこ』テレビCMできゅぃぃ!きゅぃぃん!って言う18禁のじゃなく。

子供の頃に遊ばなかったか?Y字形の木に輪ゴムを何重にも巻いて、ビー玉や小石を飛ばすやつだ。

飛ばすのは、18禁のパチンコ屋からパクってきた(正確には1円で借りた)銀玉だ。簡単に補給できるし、小石でもOK!対してかさばらないのも好都合なんだが……

結構、銀玉がジャラジャラと五月蝿いのが玉に傷ってところかな。

だから、一応は玉は音がしにくいようにした平たい缶ケースに50発ずつ5箱ほどある。力一杯引いて撃ち込めば何とかなるんじゃぁないだろうか?


しかし、既に20時15分。

窓から見る限り、今日は曇り空だったのか?明日が曇るのか?空一面にどす黒い雲が覆っていて格段に視界が悪そうな夜だ。


鴨がネギを背ってなんとやらだな。


おや、おや……お向かえの親父が既に……血だらけでヨタヨタと歩いてるじゃないか!

手に光る赤色棒を持って歩いてるってぇことからして、お決まりのゾンビは生きていた時の習性にそった行動を取るは事実と言うことになりそうだ。


う〜ん。ゾンビ小説もバカにならんな。


窓から外を眺めてる場合じゃなかったな。


都心から電車で30分のこの辺りまでゾンビがいてるってぇのは、かなり広範囲に被害は拡大してるってことだな。


まずは、順ちゃんがいてる可能性のある警察署からクリアーして行くか!

俺の長い旅の始まりだった。




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