表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祓火の番 ―火種は怪異の死骸、灯火は己の命。常冬の帝都に沈む謎を、ハズレ者が焼き尽くす―  作者: ミスミシン
第一章 常冬の帝都と、焼き払う灯火

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/15

第八話 灰の雲、謀略の切っ先

「どうするの? お兄ちゃん」

「頭痛がする……」

「ご当主様、今回は結構いじったわよねぇ」


 源一郎様の部屋から辞した我々刀主4人は、灯守たちと共に客室で休憩をすることにした。

 俺も相談事があるし、相談もなしに彼らの切っ先を借りるわけにはいかない。

 疲れ切っているのは俺だけだが、家の者は菓子と茶と肘置きと、とバタバタと動き回る。

 

 霧子さんもため息を吐くくらい、今日のご当主様は挑発的だった。

 (つがい)の首筋にある刻印──あれは、刀主と灯守が契りを結ぶ時に灯守に浮かび上がる命の盟約のようなものだ。

 だからこそあれに触れられると思うと、灯守は命の危機を感じるというし、刀主もとてつもない危機感を抱く。

 己の番を奪われるのではないかと、思ってしまうのだろうか。

 アレはかつて灯守を持っていた元刀主の戯れだと、見ていてもわかっているというのに。


「君が動揺するからご当主にも遊ばれるんだ。もう少し、自信を持ちなさい」

「う……ですね。すいません」

「それに、我々としては今回の件の最低限の方針はもらっておきたいところだね。動きどころがわからねば何も出来ない」

「あらぁ意外ね。神風のお坊ちゃまが積極的に手を貸すなんて」

「最近の帝都の夜住出現率は異常と言えます。怪我人も増え続けて……このままでいいとは、私とて思ってはいません」

「……そうよね。ごめんなさい。みんなで頑張りましょ」


 にっこりと笑顔を見せる霧子さんに、全員で頷く。

 しかしすぐに、俺はハルに脇腹をつつかれて居住まいを正した。

 他人事じゃないんだ。

 今回主に動くべきは、何より俺なのだから。


 肘置きにダレていた身体を真っ直ぐ伸ばし、この場に居る一同を見回す。

 

 今帝都に出没している夜住(よすみ)は、2日以上間を空けることはない。

 毎日出没することも多く、刀持ちたちの中にも怪我人が増えているのが現状だ。

 そうなると困るのは、治癒の術を持っている灯守(とうもり)や刀主の手が、彼らを守ることに使われてしまうということ。

 現状で言えば、夜住による怪我を癒やすことができるのは、灯守では(とばり)先生と沙弥さん。

 刀主では神風(かみて)さんだけだ。

 

 この3人ともが戦力としても大きいだけに、彼らが後方に下がってしまうことは、大幅な戦力の低下を招くことにもなる。

 俺はそれを頭に入れた上で──各刀主たちが納得して動くような作戦を練り、動いてもらわなくてはいけない。

 当主任命のための儀式に、他の家の者の手を借りてはならない、なんていう決まりはない。

 特に今回はご当主様直々に「他の三家の助力は構わない」と言付けられている。


「お兄ちゃん、お茶もらったよー」

「あぁ、くれ。あと羊羹は一番デカいやつ」

「普通お客様に出すでしょ、大きいのは!」

「神風さんと霧子さんたちならともかく、お前とハルはもう客じゃねぇ」

「お前なぁ……」


 手を出しすぎるな、というのは、俺と共に刀を学んできた御神苗家の2人に対する牽制だろう。

 あくまでもこれは「明神の試練」であり、他の家の者は関与しすぎてはいけないのだ。

 かと言って、「帝都の寒冷の原因を究明し、巣食う夜住の親玉を討祓せよ」なんていう大きすぎる目標に対して「何もするな」というのは無理がある。

 帝都、という言葉の中には、明神の領域以外も含まれているのだから。

 

 呆れるハルも無視して、神風さんと霧子さんの次に大きな羊羹の銘々皿を取る。

 色々と考えつつも、糖分をとって少し息をついたからか、帳先生がまだご当主様の部屋にいることに頭が少し偏った。

 

 元々帳先生は俺が明神家に入る前から明神家で刀を握っていたというし、源一郎様も随分と可愛がっているように見える。

 さっきの様子を見るに、今回のことについても、特別なお達しがあってもおかしくはない。

 本当に、頭痛がする。

 番と故意に引き離されただけでこれじゃあ、実際に喪った時にはどんな衝撃があるというのか。


 ちらりと、神風さんとその背後で先程から必死に書き物をしている日向子を見る。

 羊羹と茶を彼女の邪魔にならない位置に置いてやりつつ、時折神風さんが何かを伝えているから、何か指示を書きつけているんだろう。

 

 ……ほんの少し前までは、神風さんの隣には彼女とは違う灯守がいたんだよな。

 そう思うと、我々のような夜住と戦う力を与えられた者とはいえ不死身ではないんだよなと思うしかない。


 だって神風さんの灯守は──人間に殺されたんだ。

■火族四家メモ


明神みょうじん

明神宗一郎:主人公。帳に認められて明神家の養子となった。22歳。

とばり:宗一郎の灯守で灯守連中のリーダー。謎多き年齢不詳の男。



御神苗おみなえ

御神苗和穗:次期御神苗家の当主に内定している17歳の少女。宗一郎の幼馴染み。うるさい。

ハル:本名は別だがみんな発音が出来ないのでこれでいいと思っている。宗一郎の幼馴染みの23歳。



神風かみて

神風直紹:神風家当主。当代の刀主たちのリーダーである25歳。口うるさい。貧血体質。

日向子:最近灯守に抜擢された秘蔵っ子の16歳。気が弱くおどおどしている。



深神ふかみ

深神霧子:深神家当主。色気ムンムンな未亡人の38歳。刀主の中で一番腕力が強い。

沙弥:霧子との付き合いの長い35歳の灯守。灯守連中の中で一番腕相撲が強い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ