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祓火の番ー二十年の因縁と、封印された伝説の魔物。ハズレものの最強師匠に拾われた俺が、真実を焼き出す眼に覚醒して帝都の闇を焼き払うー  作者: ミスミシン
第四章 陰謀、反抗

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第三十六話 凍土の鉄拳、あるいは灯守の矜持

 ジリジリと、眼球が裏側から焼かれているかのように痛む。

 こんなこといままで無かったのに、目を開いていられないほどに、熱い。


「明神流華炎(かえん)術──」


 その熱は、どれだけ刀に体温を移しても変わらずに頭の奥にある。

 この熱のせいなのか、どうなのか。

 痛む目を細めて見る世界の中には、まるで夜住が2種類居るかのように見えた。

 真っ黒なヤツと、うっすら透けているヤツだ。

 どちらも同じ夜住なのは分かるが、多分真っ黒な方が強いのだろうと、わかる。


 実際には、勘だ。

 真っ黒い方に武器を持つ夜住が多いから、勝手にそう思っているだけ。

 これだけ数が居ると、最早それしか判断材料がないんだ。


 武器を持った夜住(よすみ)が、刃毀れしている刀を振り下ろしてくる。

 キィンッ

 甲高い音は耳の奥から脳にぶつかって、ビリビリと指先から抜けていく。

 冷たい指先はその振動だけで刀を取り落としそうになるが、落としそうになった刀は順手と逆手を持ち替えることでなんとか手の中に戻す。

 この真っ黒い武器持ち夜住は、力が強い。

 筋肉という概念が失せているからこその攻撃の重さ、なのだろう。

 そんな事、今まで考えたこともなかった。

 

爛打(らんだ)っ」


 もう一度攻撃するために刀を振りかざす武器持ちたちに、刀と炎を連続で叩き込む。

 一撃目で刀で斬り、二撃目に炎を乗せ、翻した刀をもう一度ぶつけ、最後に火花で煤を散らす。

 多少雑に打っても複数居る武器持ちどもの誰かには当たるくらいには、武器持ちたちは多かった。

 この量の武器持ちたちの攻撃を一度に受けたら、危なかったかもしれない。

 額に、ぬるい汗が滲む。


 ギャリッ

 爛打の一撃を逃れた武器持ちの刀が振り下ろされて、嫌な音を立てた。

 刃毀れしているどころじゃない。

 すでにカビと錆でボロボロの、持ち手が今にも崩れ落ちてしまいそうな刀だ。

 それでも、何度も連続で振り落とされれば、厄介だ。

 

 踏み込んでいた足をそのまま横に滑らせ、足元についた横一文字の足跡に、炎が宿る。

 ボッと立ち昇った炎は壁になり、夜住が怯んで武器を下げて一歩下がる。

 戦場で武器を下げるなんて、脳みそがあればまずしないことだ。

 切っ先を地面につけた刀を思い切り踏みつけ、動けなくしてから二の腕あたりから身体を両断する。

 二の腕から肋骨で一度止まり、隙間を狙ってさらに力を込めて、振り抜いた。

 

 血液のように、煤が地面に跳ぶ。

 その煤は、散った火花が燃やしてすぐに見えなくなった。

 足元の炎も、目も熱いのに、身体はどんどんと冷えていく。

 緊張と、術式使用の反動。

 口から吐き出す息も、段々と白から透明になっていくのがわかる。


「おーい三人とも、こっちこっち。全部相手しなくていいよー」


 緊張を帯びていた身体に、いつの間にやら随分と遠くまで行っていたらしい先生の声が聞こえてくる。

 先生を見上げようとして、視界の端を日向子が殴った夜住が吹っ飛んでいった。


「こっち、結界あるから。相手はそこそこでいいよー」

「放置しておいていいんですか?」

「どっちにしろ、神守(かみもり)の敷地からは出られない。そういう風になってるから」


 おいでおいでと先生が招いているのは、廃墟の中で唯一残っている倉だ。

 かなり古い形式の倉は、足元が一段高くなっていて、まるで雪国のそれのようだ。

 俺は、日向子の後方にいた神風(かみて)さんに視線を向けてから、先生の方を見る。

 先生の居る倉まで行く間にも、夜住はまるで道を塞ごうをするようにヨロヨロと歩いていた。


「日向子、頼めるかい」

「はいっ! お任せ下さいっ!」

「えっ、いや俺が……」

「直線上に行くなら、君より日向子の方が得意だ」


 なんでもないことのように言う神風さんに、にっこりと微笑む日向子。

 彼女は笑顔を浮かべながらも、背後から近付いてきていた夜住を後ろも見ずに煤と散らしていた。

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