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祓火の番 ―火種は怪異の死骸、灯火は己の命。常冬の帝都に沈む謎を、ハズレ者が焼き尽くす―  作者: ミスミシン
第一章 常冬の帝都と、焼き払う灯火

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第十話 氷の懸念、最初の一歩

「宗一郎様、こちらは深神(ふかみ)の資料でございます」

「ありがとうございます、沙弥さん」

「どうしたものかしらねぇ~。夜住(よすみ)大発生の原因を探るって言っても、何か策とかはある?」

「そうですね……」


 沙弥さんが深神家の刀持ちと白服の人数を書いた書付を渡してくれて、それを眺めながら思案する。

 ご当主様の出してきた試練の条件は、あまりにも漠然としていて曖昧だ。

 他の三家の協力を得られるとはいえ、範囲としてもあまりに広すぎる。

 それに、これからは夜も寒くなってくるだろうから、あまり遅くまでの活動はできない。


 帝都の冬は、寒い。

 ただでさえ常から寒いというのに、何故こんなにも冷え込むのかと思ってしまうくらいには、冬になると一気に霜が降りる。

 そのありさまはまるで、帝都全体が凍ってしまったかのようだ。

 吐息が凍るだけではない。

 空気そのものが凍結し、夜住が喜んでいるようにすら感じるのだ。

 

 その寒さは、刀主の中ではいっとう寒さに強い俺にもかなりこたえる。

 となれば、他の連中も寒さで動きが鈍るだろうし、女性陣なんかは余計だろう。

 もしかしてご当主様は、そんな時期的なものも見越してこの時期に試練を出したのだろうか?

 ひとつひとつの条件が、試練達成への大きな障害だ。

 たぬきジジィめ、なんて思わず声が出かけて、ぐっと飲み込む。


「とりあえず、刀持ちたちに確認して、今までの発生場所を確認しようと思います」

「今までの発生場所?」

「発生場所に何か法則性があるかないかでも、違いますから」

「なるほどねぇ。いいんじゃないかしら」

「では、深神の者たちにも通達してまいりますね」


 深神の2人が協力的に頷いてくれることにホッとする。

 この帝都には火族四家(かぞくよんけ)の領域が存在しているから、明神での情報だけではどうしようもないのだ。

 かといって発生場所の情報を集めたところで、意味はないかもしれない。

 

 だが今は、動かねば。

 死者が増えているのもまた、現実なんだ。


「わ、わたしも! わたしもやる!」

「じゃあハル、御神苗家の書付は頼むな」

「わかってる」

「なんで!? わたしがやるって言ったのにぃっ」


 和穗がむぅっと頬を膨らませたのを見て、霧子さんが妖艶に笑った。

 まだ若く元気のいい和穗は、緊張感のある場所でもいい具合に空気を破壊してくれる。

 霧子さんはそんな和穗が気に入っていて、燈老議会との会合なんかに和穗を連れて行っているのだと聞いたこともあった。


 こんな言い方をしてはいけないかもしれないが、同じ年頃の日向子とは真逆の性格をしている。

 和穗に慣れているせいで、大人しく座っている日向子への反応にちょっと困ってしまうくらいだ。

 日向子はまだ、神風さんの隣で緊張に固まったまま俯いている。

 それでも羊羹をちびちび食べているのは、彼女の前に置いた神風さんと、勧めた俺への配慮だろうか。

 ちょっと申し訳ないことをした、かも。


「……そういえば」


 こっそりと日向子を盗み見ていたのを察されたかと思うくらいの折に、神風さんがふと顔を上げてこちらを見た。

 多分俺と日向子は、同じくらいビクッとしただろう。

 神風さんが不思議そうに首を傾げる。


「どうかしたかい」

「いえ、なんでもないです。えっと、何か思いつきましたか?」

「あぁ、いや。実際に比較をしたわけではないのだが……」


 ここ三ヶ月ほどで急激に、負傷者が増えているような気がするんだ。

 神風さんの言葉に、日向子もハッと顔を上げた。

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