2∶はじめまして異世界③
※誤字脱字や文章が読みにくい点などあるかもしれません。
今回はかなり短いです。
しばらくは戦闘もなく、平和な日々が続きます。
「でもさーせっかくのお茶会が中止になっちゃったのは残念だなぁ。葵ちゃんが作ったお菓子とか食べたかった……」
「あなたは本当に花より団子ね」
「ちゃんと景色とかも楽しんでましたー」
(……お姉さま方の声……)
奏と愛の朗らかな談笑に、葵の意識が浮上する。目を覚ました葵の目に見知らぬ天井が映り、自らが気を失ってしまった事に気付く。
(お姉さま方と一緒に出掛けて、途中で不思議な光に導かれて……それから──)
記憶を辿っていくとひとりの男性が浮かび上がり、葵の意識は一気に覚醒する。
「奏姉さま!愛姉さま!?」
「ふえっ!?」
すっかりお喋りに夢中になっていた愛の肩が跳ねた。奏も驚いた拍子に眼鏡が大きくズレた。姉ふたりが振り返るのと同時に、ベッドから下りた勢いのまま葵が飛び付いた。
「奏姉さま、愛姉さま……!」と涙混じりの声で何度も名前を呼んだ。奏と愛はとりあえず彼女が落ち着くまで抱き締めて頭を撫でることにした。一先ず起きてくれたことに安堵する。
時計の短針がひとつ刻んだ後、目を赤く腫らしつつも葵は落ち着いた。
「それじゃあ葵ちゃんにここまでのことを話そっか。といってもそんなに長くはないけどね」
ふたりは葵が気を失っていた間の出来事を話す。
第一印象が良くなったリヴァインが実は敵ではなかったと聞いて当然ながら葵は大変驚く。けれども信頼のおける姉の言葉だとしても、やはり戸惑いは隠せなかった。
「これから……どうしますか?」
まだ少し掠れた声で奏と愛に尋ねる。うーん、と腕を組んで愛が言う。
「どうにもこうにも今はリヴァインさんの下で保護されとくしかないね。ここの人たちの様子を見る限りぼくらがこの世界へと来た事に関して思い当たる節があるみたいだし、粗雑な扱いは受けないっしょ」
「【予言の少女】っていかにもな呼称を口にしていたものね」
「保護するって事はそれだけ価値があるんだろうね。神さまに直々にお呼ばれしたくらいだから。それに、何となくだけどぼくらに何かあったら精霊たちが怒りそうな気もする」
「実際に怒られてたわね」
「そういやそうだった。叩かれてたわ」
苦笑を交えながら話す奏と愛。そんな姉ふたりに葵が目を瞬かせる。
「あの……」
「ん?」
「どうしたの?まだ眠い?」
「いえ、そうではなくて……。何故そんなにも落ち着いていられるのですか?」
思い返せば奏と愛は一切取り乱していない。泣きじゃくるばかりであった葵は不思議に思う。特に愛は現状を楽しんでいるようにさえ見えた。
愛が困ったように笑う。
「あー……まあ悲観してても仕方ないし、元々こういう性分だし?奏姉はぼくと違って色々考えての事だと思うけど」
葵と奏を巻き込んでしまったという罪悪感は残りつつも、興奮と沸き立つ高揚感を隠し切れていない程度には楽しんでいると愛本人も自覚していた。
奏の方はふ、と目元を緩めた。
「私も愛と似たようなものよ。それに、落ち着いていられるのはあなたたちがいるから」
「奏姉……ぼくの隣、いつでも空いてるから」
「結構よ」
「うえぇ!?なんで?」
ハグ待ちする愛を奏は手で押しのけた。ふたりを見て眩しそうに目を細めた後、葵は俯く。
「わたしも……お姉さま方のようになれるでしょうか」
せめてふたりに迷惑がかからないように。そう切実な思いを口にする。
健気な妹の頭を愛が梳くように撫でた。
「葵ちゃんはそのままで良いんじゃない?」
「そうね。愛みたいに無闇に首を突っ込もうとする訳でもないし」
「ぐぬぬ……今だけは何も言い返せない……」
奏からの厳しい言葉にぐうの音も出ないと言わんばかりに愛は苦い顔をする。勿論、今回の件は含まれていない事は解っている。単に心当たりが有り過ぎるのだ。
「葵も気負わなくて良いよ」
奏も葵の肩をぽんぽんと叩く。
「……はい。ありがとうございます」
葵は顔を上げた。逆に慰められてしまうも、心地の良い優しさに微笑む。
漸くいつもの調子を取り戻しつつある三姉妹の元へ、タイミングを見計らったかのようにノックが響いた。「どうぞ」と一声かけると扉が開かれた。
「大変お待たせしてしまいましたね。リヴァイン様が書斎の方まで御出くださいとの事です。ご案内致します」
「わかりました」
これが正式な挨拶となるだろう。そう三姉妹は気を引き締める。
(大丈夫。悪い人ではないとお姉さま方が言ったもの……)
出会い頭の彼しか目にしていない葵の両手が微かに震える。情けない程に怖がりな自分に葵は気落ちしそうになるが、不意に重ねられた手に顔を上げる。
大丈夫だと愛が頷く。
「行こう、葵ちゃん」
「はい」
葵は気持ちを強くさせた。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!




