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物知りとは…

 明確な敵意を感じた。

 中庭でリプシーとご飯を食べながら先日の事を考える。

 あの三人の伯爵令嬢共が私をあまり好きではないというのは前から知っていた。

 因縁はあくまでも子供の頃の話であり、学校に入ってからは私にあまり関わってこない。

 先日のは私から関わっていじめを非難したから逆恨みもあってという理由だろう。


 決して関係は良好ではないが明確な理由があるから分かる。

 ただ、リリーナという少女がどうして私を嫌っているのか。

 ベッセル様に近しかったり、どうやら何かと口出しをしているようだ。

 主に私への悪意を振りまいているみたいで。


 でも、私と彼女は大して面識がないはずだ。

 それに三人の令嬢共……もとい三馬鹿と違ってどうして。


 リプシーが隣で冷たい果実を食べているのを横目で見る。

 この子はさっきサンドイッチを3つも食べたのにどうやって更にお腹に物を詰め込めるんだろう。

 こっちは真剣に考えてるのに。

 全く……。

 リプシーの頭を撫でてあげるとリプシーは、もごもごしている口元を手で隠しながら首を傾げる。


 どうしました? とでも言いたげだ。

 可愛いこと。

 それにしても昨日のエドウィン様を見てベッセル様はどうも不自然だった。

 やけに気を使っている感じだったというか……一体彼は何者なんだろう。


「そういう表情は私にも見せてもらいたいものだね」


 声の方を見ればエドウィン様が立っていた。

 やけに私の所にやってくるわね。

 もしかして気に入られてるのかしら?


「先日はありがとうございました、おかげで私が悪いことにならずに済みました」


「いやいや、私は正しき者の味方だからね、当然の事だよ」


 軽口を叩くエドウィン様は言葉が悪いが少々胡散臭くてつい、冷ややかな目で見てしまう。


「……それで、何か御用ですか?」


「いや、態度の変わり方! 勿論君の様子を見に来ただけだよ」


「…………」


「はぁ……お二人絵になりますね」


 どうやらリプシーはベッセル様を嫌いのようだがエドウィン様の事は好きなようだ。

 子供の頃からちょいちょい会ってるけど、わたくしこの人の事よくわからないのよね。

 何でもお見通しってお顔がちょっと……。

 今は丁度いいけど。


「エドウィン様、わたくしとっても気になっている事があるんですけど」


「何についてかな?」


「この国で流通している宝石の産地はどこなんでしょうか」


 質問をすると、エドウィン様は一瞬あっけに取られたような表情をしてから目を細めた。


「それは私に宝石をプレゼントして欲しいという事かな?」


「全く違います」


 軽口をぴしゃりと否定するとエドウィン様は、楽しそうに笑った。


「今流通している宝石の大部分がドレスデン公爵家の領地からの産物だな。鉱石を宝石に加工しているそうだ。ドレスデン家は三世代前から王家にも宝石を送っていたりしている名家で宝石加工技術も高い」


「そうだったんですね」


 ドレスデン公爵家はそんなに宝石の元となる石が取れるのかしら……。


「そんなに領地が広いんですか?」


「広いと言えば広いし鉱石が取れる山も持っているが……」


「どうしました?」


「異常な程に良い石が取れすぎている。とても腕の良い検石師がいるという話を聞いたことがある」


 検石師……山を削っている途中の土や石の変化を見て宝石となる鉱石がどの辺りにあるかを正確に見抜く人だという。

 凄いわね、私の前世の頃にはそんな神業が出来る人なんていなかったけど。


「私は物知りだからね。何でも聞くと良い」


「ではあのリリーナ・エレベレン子爵に関しては何か知っていますか?」


「知らないな」


「…………」


 物知りじゃなかったのかしら。

 なんだこいつという目で見ているとエドウィン様が肩を竦める。


「新興貴族に関しては詳しくない。ドレスデン公爵が推挙したらしいがそういう家は他にいくつもいるからな」


「エレベレン家でしたら外国との交易をしているそうですよ」


 思わぬところから情報が出てきた。


「リプシーがどうして知っているの?」


「先日お父様にエレベレン家の事を聞いたら存じておりましたわ。父の友人がブール商会の評議委員をやっておりましたので」


「そうだったの」


 ブール商会は王国一大きな商会だ。

 餅は餅屋。

 商人の情報なら大きな商会の幹部の方がそこらの貴族より詳しい事が多い。


「外国とはどちらの国に行っているのかしら」


「そうですね。確か……プレタやレビット国という話を聞いています……が、どうしました?」


 瞬間。

 エドウィン様の顔色が変わった。


「何かお分かりになりまして?」


「いや、少々用が出来た」


 エドウィン様は、急に真顔になって歩いて行った。

 何かあったのかしら? あの二つの国って……どんな国だったかしら?


「そういえばルティシア様は来月のパーティには参加するんですよね?」


「パーティ?」


 ああ、確かこの学校の創立100年を祝う記念パーティだったかしら。

 校内一広い講堂を派手な装飾で煌びやかにして美味しいものを食べたりする盛大なパーティ。

 近隣の有力貴族も集まるし、国王陛下も来るって話を聞いている。

 それなら行かない理由がない。


「勿論、参加しますわ」


「そうですか。ならルティシア様の側に立つ者として、恥ずかしくないよう着飾らないとですね」


リプシーはほわほわと微笑んだ。

次は明日更新します

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