エピローグ
あの後の事を今も思い出す。
ドレスデン公爵は爵位をはく奪され、絞首刑となった。
ベッセル様とリリーナの二人は婚約破棄を認められず、それぞれ騎士爵として一応下級貴族になる位に免れたが領地は北方の遠くへ飛ばされた。
辺境過ぎて麦も生えない不毛な土地で生活しているという話を聞いている。
――とはいっても命までは取られなかったのだからまだ寛大な扱いだろう。
「どうしたんだい?」
「いえ、何でもないです」
エドウィン様が私の頬に触れると高い歓声が響いた。
城の上から下を見れば人しか見えない。
それも皆が祝福してくれる。
あれから学校の卒業を待って、私はエドウィン様と結婚した。
陛下は私とエドウィン様が結婚した直後に、エドウィン様に王位を譲ったのだ。
そして、今は戴冠式の後、群衆の前に立って手を振っている。
新しい若き王の誕生に王国中の民が盛り上がっているのだ。
「あああ、ルティシア。なんて美しい……っ! お前が私の娘で良かった」
後ろの方で背後霊のように陰から顔だけ出しているのはグレイグ父様だ。
もっと堂々としていて良いのに。
娘の晴れ舞台ですよ?
全く。
――ってあら?
ふと上を見れば何やら雲行きが……。
直後。ざっと雨が降ってきた。
さっきまで晴れていたのにどうして!?
強い雨は一瞬だけだったようで、すぐに止んで晴れた。
「戴冠式に雨とは……前途多難だな」
「いいえ、きっと祝福の雨ですわ。だって、わたくしもあなたも雨に濡れたおかげでこんなに魅力的になりましたもの」
私がそういうとエドウィン様は一瞬あっけに取られてから、すぐ楽しそうに笑った。
「君は相変わらずだな」
「当然です、だって――」
私はとっても前向きな公爵令嬢ですもの。
――完
こちらで完結となります。
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最後になりますが、ここまで読んでいただきありがとうございました。




