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女は度胸

 どうしようと……? と軽くパニック状態になった私は周囲を見渡すと、ソウイチロウ様含めて生卵を貰った者たちは既に『卵かけご飯』とやらを食べているではないか。


「鮭やだし巻き卵をおかずにご飯をたべたものだと思っていたのですが、おかずだけ食べてご飯は卵かけご飯の為に残していたんですね。生卵だけ残した人はゆで卵にしてもらえるという事を説明し忘れていた事を思い出したわ。なのでもし『チャレンジしようと思ったけれどもやっぱり無理そう』と言う場合はゆで卵にしてもらうので言ってくださいね。けれど、ここの世界では初めこそ常識が邪魔をして一口目は勇気がいるかもしれませんが、意外と美味しいですよ? それこそ一度食べたら完食するまでスプーンが止まらないくらいには」


 そんな私を見てミヤーコが声をかけてくれるのだが、どうやら生卵をゆで卵にしてもらえるようである。


 その誘惑に負けそうになるのだが、私はシノミヤ家に嫁いだ身でありソウイチロウ様が食べている料理を『気持ち悪い』からという理由で拒否するなど言語道断。


 ええいっ! 女は度胸ですわっ!!


 卵かけご飯を食べたからと言って嘘の罪状をでっち上げられてパーティー中に晒上げられるかのごとく婚約破棄されるわけでもないのだ。


 そう思えば卵かけご飯を食べる事くらいなんてことない事のように思えてくる。


 そして私は意を決して卵を手に取ると皆がそうしたように机の角で卵にヒビを入れ、ライスが乗った皿(茶碗)の上で割り卵を落とし入れる。


「あら、結局食べる事にしたんですね。 初めは加減が分からないでしょうから私が醤油を入れてあげますね。あと、この赤パンダの魔法の粉や粉状にした鰹節、めんつゆ等をお好みで少し入れてみても美味しいですよ。もし卵かけご飯が気に入ったのならば次からは自分好みにそれら調味料などを使ってみることをお勧めします」


 そして私が意を決して生卵をライスの上に落としたところでミヤーコがショーユという調味料をかけてくれながら卵かけご飯に合う調味料などをおしえてくれるのだが、ショーユ含めてどの調味料も聞いたことがないものばかりで、どんな味の調味料なのかそれはそれで興味がそそられる。


「はい、どうぞ召し上がれ。 もし味が薄いと思ったのならば醤油を少しずつ足していって調整してくださいね」


 そんな未知の調味料についどんな味がするのだろう? と想像しているとショーユをかけてくれた後混ぜてくれた物、卵かけご飯の完成形を私の前に置いてくれる。


 生卵を混ぜるという時点でどうなんだ? とは思うのだが、それとは別に生卵をライスにかけて混ぜるだけというものが、はたして料理と呼べるだけのポテンシャルをもっているのかという事についても正直言って懐疑的である。


 しかしながらそれら疑問は目の前にある卵かけご飯を食べれば解決する問題である。


 私はスプーンを手に取ると卵を纏い黄金色に光る卵かけご飯を救い、目を閉じながら口へといれる。


 その瞬間私の口のかなには卵の甘さにご飯の甘さ、そこに醤油という尖った塩味と旨味が加わり、一つのハーモニーが繰り広げられるではないか。


 まさに完成された一つの料理と言える代物であった。


 正直な話、実家で食べる手の込んだ料理と引けを取らない、なんなら上位に余裕で食い込む程の美味しさであると言っても過言ではないだろう。


「どうやらその表情を見るに気に入ってくれたみたいですね。あ、ちなみに赤パンダの魔法の粉と粉状にした鰹節はかけても塩辛くなる事は無いので試してみますか?」


 そして私が卵かけご飯へ二口目を掬おうとスプーンを向けたその時、ミヤーコが卵かけご飯に合う調味料で尚且つ塩味が濃くならない物をチョイスして私に勧めてくるではないか。


 そういえば私が卵かけご飯を食べる前にそういえば卵かけご飯に合う調味料の説明をしてくれていたなと思いだすのだけれども、既に完成された料理へ調味料を足す事によって味が崩れてしまわないかと少しばかり不安になる。


 むしろ私が思うに卵かけご飯という料理は、シンプルが故に余計な味が無く素材そのものの味を引き立てているからこそのあのクオリティーの美味しさを作り出せているのではなかろうか? であれば調味料を足すのはむしろマイナスの行為になるのではなかろうか?


 そう思うのだけれども、ミヤーコが勧めて来るという事はそれなりに根拠があっての事であろうし、確かに思い返してみれば他の卵かけご飯を食べていた者たちもショーユ以外の調味料を使っていた者たちもいたような気がしないでもない。


 と、とりあえず合わなければ次回から他の調味料を使わなければ良いだけですし。


 私はそう判断し、調味料を使う事にする。


 まずは赤色で描かれた動物(後日聞いてみたらパンダと言うらしい)の容器に入った粉をサッサと二回ほど振り替えてよく混ぜると、スプーンで掬って一口食べてみる。


 …………味自体は想像していたほど、というか殆ど変化していないですね。 けれども明らかに旨味と深みが増しましたわっ!!


 美味く説明できないけれども明らかに美味しさが頭一つ抜けた事は明らかであり、私は何が起こったのか赤パンダの容器を手に取りまじまじと見るも裏側に異国の文字が小さく書いているだけである。


「それはサトウキビという砂糖を作る植物から作られているそうですよ。 不思議ですよね」


 そんな私を見てミヤーコが、この粉はサトウキビという植物から作られているのだと話してくれる。


 そして、今度は粉状にした鰹節が入っている容器を手に取ると、備え付けられた小さなスプーンで掬い、パラパラと卵かけご飯へとかける。


 まるで木を削ったような粉ですわね。 これをかけて本当に美味しくなるのかしら?


 そんな事を思いながら私は木の粉のようなものをまぶした卵かけご飯をスプーンで掬い、口に入れる。


 あぁ、どこまで高みに上るつもりなのだろうか? 先ほどの赤パンダの粉で深みがでた卵かけご飯に、今度は複雑な旨味が加わったではないか。


 それによりもともと美味しいとはいえ調味料と材料が少なく単純だった味が、二次元から三次元へと変化したかの如く激変したではないか。



続きが気になる、面白いと思った方は評価とブックマークをしていただけると嬉しいですっ!!(*'▽')ノ

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― 新着の感想 ―
赤パンダの魔法の粉の工場見学もおすすめです。 ミニ赤パンダがもらえますよ〜!
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