表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/28

着物





 翌日。


 私は『ぴぴぴぴぴ』と鳴る聞き慣れない音で目覚める。


 どうやらこの聞き慣れない音は白い箱型の、文字が緑色に光る時計から出ているようなのだが、しかし止め方が分からず、時計を持ち上げてみたりしながら四苦八苦していると、ノックが聞こえて来たので返事をするとミヤーコが入って来た。


そしてこの鳴っている時計はどうすれば止まるのかと聞くと『あらあらまあまあ』と言いながら私の手にある時計をひょいっと掴み取り、ポンと頭のボタンを押して音を止める。


「頭のボタンを押すと止まる仕組みですよ、奥方様。 後で時計の操作方法を教えた方が良いかしら? それとも、アラームの設定は消した方がいいかしら?」

「そ、そうですね……私もこの時計の操作方法を知りたいので後で教えてもらえるとありがたいです。 それにしても……設定した時間に鳴る魔道具とは、便利ですね」


この時計もそうなのだが、天井の光る魔道具にお風呂場の魔道具など、もしかしたら私は偉大なる魔術師様の元へ嫁ぎにきたのだろうか……?


「それでは、朝食がもうそろそろできる時間ですので準備をしましょうか。 お召し物はどういたしましょうか? 洋服にいたしますか? ドレスにいたしますか? それとも着物にいたしますか?」

「き、着物……とは何ですか?」

「そうですね、日本の伝統的な民族衣装ですね。 綺麗で可愛い物も多く、ドレスとは違った魅力がございますよ。 そして、奥方様の着物姿を見た旦那様は間違いなく意識してしまう事でしょう」


「き、着物にいたしますっ!!」


 ミヤーコの『着物を着るとソウイチロウ様が意識する』という言葉を聞いた瞬間、私は気が付くと着物を選択していた。


「そうですか。では今こちらに持って来ている桜という花の柄の着物でよろしいでしょうか? 他の柄が良ければお持ちしますが……」

「…………綺麗。これにするわっ! ミヤーコッ!」


 するとミヤーコは微笑ましいものを見るような表情をしたあと、今手元にある着物を見せてくれるのだが、その美しさに私は思わず言葉を失ってしまう。当然、目の前の着物に一目ぼれした私は迷う事もせずにさくらの柄の着物にする。


「かしこまりました」


 そして私は、初めて着る着物という衣服に四苦八苦(ミヤーコが着付けをしてくれたので私は殆ど立ったままだったのだが)しながらも、なんとか朝食まえに着る事ができた。


 その姿を姿見で確認すると、そこには今まで着ていたドレスとは異なる美しさを身にまとった私の姿が映し出されているではないか。


 正直言ってずっと見てられるのだけれども、流石に朝食に間に合わなくなるので後ろ髪を引かれながらも私は食堂へと向かうのであった。





「きゃぁぁあああっ!! シャーリーさん可愛いっ!! 写真撮っても良いっ!? って、もう撮っているんですけどねっ!! シャーリーさんはスマホとか持っていないだろうから後で現像した奴を渡すねっ!!」


 食堂に着くなりアンナが私を、何やら薄い板を取り出して私の周りをうろちょろとし始めるではないか。


 いったい何をしているのか気になった私は早速アンナへ何をしているのか聞いてみる事にする。


「その板みたいな奴で何をしているんですか?」

「あー、そか。 写真もこっちの世界にはまだ無かったんだった。 えっと、この板みたいな道具を使ってシャーリーさんを撮ってって……言葉で説明するよりも実際に見せた方が早いかっ! ほら、こんな感じでシャーリーさんの姿をこの板に保存していたのさっ!!」


 するとアンナは何やら薄い板の表面を指でスッスッとなぞったかと思うと、私へ板の表面を見せてくる。


「な……っ!? わ、私が薄い板の中にいますっ!?」

「因みに動画も撮っていたりっ」


 そしてアンナがそう言いながら薄い板を操作していくと、なんと薄い板の中に動く私が映し出されるではないか。


「す、凄いです……」


 やはり当初の私の予想通りソウイチロウ様は偉大なる魔術師であるのだろう。


 でなければこんなにも凄い、しかも薄い魔道具を作ったりできる訳がない。


「ほら、旦那様も何か言ったらどうですかっ!? 自分の奥さんがせっかく可愛い格好をしているのですから誉め言葉の一言でも言ってあげるべきだと私は思うんですけどっ!?」

「ア、アンナっ!? わ、私は大丈夫ですっ!!」


 そんな事を思っているとアンナがいきなりソウイチロウ様へと話題を振るではないか。


 確かに、私が着物というソウイチロウ様の故郷の民族衣装を身に纏った事に下心が無いと言えば嘘になるのだが、だからと言って直接ソウイチロウ様に聞くのは恥ずかしさが勝ってしまう訳で……。


 それでもソウイチロウ様の反応が気になった私はアンナに対して『止めて欲しい』とは言えず『大丈夫』とかいう中途半端な感じの言葉を使ってしまう。


「そうだね……。金髪碧眼で顔立ちも整っており顔もお人形のように小さいシャーリーが着物を着ると、まるでフィクションの世界に迷ってしまったのかと勘違いしてしまうくらい現実離れした可愛さと美しさがあるな」

「……え? まさかあの唐変木な旦那様がここまで異性の容姿に対してべた褒めするなんて……やはり旦那様はロリコンなのではっ!?」

「お前が褒めろと言ったから素直に褒めたんだろう? なんでそこまで言われなければならないんだ?」

「あっ! 図星だからってそんなに怒らないでくださいっ!! パワハラで訴えますよっ!!」

「お前な……。まぁ確かに直ぐに褒めなかった俺の落ち度でもあるし、今回はデザートなしで俺への暴言は聞かなかった事にしよう」

「ごめんなさいっ!! 謝りますのでデザート無しだけは勘弁してくださいっ!!」


 ソウイチロウ様が私の容姿を褒めた後、アンナとソウイチロウ様が何やら言い合っているようなのだが、私にはそれらが耳に入って来なかった。


続きが気になる、面白いと思った方は評価とブックマークをしていただけると嬉しいですっ!!(*'▽')ノ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ