どういった制裁をするべきかと考える
「そうですね……。これほど美味しい魚料理、いえ、今まで食べてきたどの料理よりもおいしいですっ!!」
私はウナジュウという料理を食べた感想を素直に言うと、使用人たちはホッとした後嬉しそうな表情をするのだが、こんなにも美味しい料理を食べて『まずい』という感想を抱く者がこの世にいるのだろうか?
もしこのウナギの食べ方がここの領地で一般的であるというのであれば、私が今まで生活していた王都では捨て値で売られていたウナギが、こちらでは少し高値で売られ始めているという理由も理解できるほどの美味しさであった。
「良かったっ!! 中には見た目が見た目だからちょっと無理って食わず嫌いしている人もいれば、欧米人だと魚の出汁や風味、醤油を食べ慣れてなくて苦手って人もいるから少し心配だったけど、シャーリーが美味しいと言ってくれてホッとしたよーっ!」
「あぁ、そうだな……」
どうやらアンナとソウイチロウ様もこのウナジュウという料理が私の口に合うかどうか心配していたようで、その心づかいがむず痒くも嬉しく思う。
「よーーしっ!! じゃぁそういう事でこの後は私と一緒にお風呂に入ろぉーっ!!」
「え? え? だ、大丈夫ですっ!! 私一人で入れますっ!!」
何がそういう事なのか分からないのだけれどもアンナが私に抱き着いて『一緒にお風呂に入ろう』と言ってくるではないか。
もしかしたら、アンナは公爵家からきた私はお風呂も一人で入れないと思っているのだろう。
たしかに公爵家にいた時は偶に使用人が身体を洗ってくれる時もあったのだけれども、お風呂は数少ない『一人になれる貴重な時間』でもあった為基本的には一人で入っていた為、風呂ぐらい自分で入れるのだ。
「うん、そうね。 きっとお風呂の使い方とかも初めは分からないでしょうからアンナが一緒にお風呂へ入って使い方とか一通り教えてあげてちょうだい」
「まっかせなさーいっ!!」
「あ、あのっ!! ですから私は一人でお風呂に入れますって!!」
そう何度も説明するのだけれども、ミヤーコもアンナも一向に首を縦に振ってくれず、むしろ私が一人でお風呂に入れる事すら信用してくれないではないか。
流石にそこまで言われてはむしろ逆に私が一人でもお風呂に入ることができる娘であると、何もできない箱入り娘ではないという事を見せつけてやろうではないか。
そう思い私は意気揚々と、アンナと共にお風呂場へと向かう事にする。
結果から言うと、私は間違いなくアンナがいなければお風呂へ入る事は出来なかっただろう。
説明されれば髪用の石鹸やオイルに身体用の石鹸がある事や、捻ればお湯が出て来る上に自分好みの温度に設定できる魔道具等、何てことないのだけれども説明も何もなしで扱う事ができるかと言われれば、まずできないだろう。
そして身体も心も十分に温まったので湯船から出て更衣室に向かい、そこで温風がでる魔道具の使い方を教わったり、瓶に入ったフルーツ牛乳という飲み物に舌鼓を打ったりしながら私の自室として割り当てられた部屋へと戻り、ベッドの上で横になる。
振り返ってみればこの一週間近くは怒涛の勢いで過ぎ去ったな…………と、今までの事を振り返った所で私の記憶は途切れるのであった。
◆国王side
息子の婚約破棄を聞いた時は『我が息子ながらやってくれた』という感想であった。
そもそも息子は我が国王であるという事を正しい意味で理解できているのかすら怪しいとすら思ってしまう。
でなければ、例え本当にシャーリーが息子の言う通りの人物であり妃として相応しくないと判断した上での婚約破棄であったとしても、このようなふざけた方法での婚約破棄など前代未聞であり、あり得ない。
貴族同士であったとしてもこんな婚約破棄などあってはならぬというのに……。
そして我は国王である以上、謝罪をすることは基本的には無い。 だからこその代わりとして『謝罪の意味を込めて』多額の賠償金を払わなければならないのである。
「まったく、流石にこれは我も庇う事はできぬな……」
そもそもシャーリーは、息子が言ったような行為をするような女性でない事は知っているのでまず捏造である事は間違いないのだが、それにしてもよくこんなにも嘘をでっち上げたものだと感心すらしてしまう。
何故その能力をもっと別の方向へ活かすことができなかったのか……。
とにかく、流石にこんな事をやらかすような者に次期国王など任せられる訳がないのでここは弟であるカイザルを次期国王として準備をしていこう。
今回のようなノリで使用人を解雇したり、王国のあれやこれやとめちゃくちゃにされて、気が付いた時には修復不可能レベルにまで好き勝手されたら目も当てられない。
そんな事を思いながらこれからどうしようかと考えているところに、これ以上に衝撃的な内容を、今回の件を説明しに来た執事のセバスが話す。
その内容を聞いた我は頭の中が真っ白になるくらいの激しい怒りを感じてしまう。
事もあろうにバカ息子は我の友達であるソウイチロウを、まるで『醜い化け物のような容姿をしているので、シャーリーにはそこへ『罰』として嫁がせよう』と言っていたようではないか。
そもそもソウイチロウに向けて醜い容姿などと言ってしまうあたり、どう考えても我の息子であるシュバルツはソウイチロウの事を知っておらず、ある事無い事でっち上げているというのはほぼ確定とみて良いだろう。
そして我は深いため息を吐くと、我の息子にどういった制裁をするべきかと考えるのであった。
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