大人と子供の境界線の違い
お久しぶりです。
もう少しだけ作品を連載することにいたしましたので、新しいストーリーを変わらず楽しんでいただければ幸いでございます。
シュバルツ殿下が平民となったあの事件から一か月がたった。
そして今私の手元には『お小遣』としてもらった10000と書かれた紙があった。
これをソウイチロウ様から『今月分』として十枚渡されたのだけれども、本当にこんな紙切れがお金として使えるのか不安になってくる。
因みにソウイチロウ様からは『足りなくなったらその都度渡すから言ってくれ』と言われてはいるのだけれども、これ一枚がどれ程の価値があるのか分からなかった為アンナに確認したところ、どうやら銀貨一枚ほどの価値があるそうだ。
銀貨十枚で金貨一枚なので、この10000と書かれた紙十枚で金貨一枚と同等の価値がある事になるのだが、確かにこちらの世界で紙は高価ではあるものの流石にこれ十枚で金貨一枚の価値にはならないので、やっぱり不思議というか違和感を覚える。
一貴族の令嬢が使えるお金と考えれば少額かもしれないのだが、それはそれとして別途こちら側のお小遣いとしては金貨三十枚頂いておりますし、それに頂いたところでそのお小遣いを使う機会、貴族を呼んで豪勢なパーティーを開き、その為のドレスなどを仕立てたりするような事もないので貰い過ぎだとは思う。
「……しかし、これでわたくしは日本で買い物ができます……っ!!」
そう考えれば、むしろこの紙のお金の方をこちらのお金よりも多く使ってしまいそうだなと思ってしまう。
それはさておき、とにかくこのお金を何に使おうかと想像するだけでワクワクが止まらなくなる。
因みにソウイチロウ様からは日本で外出する際、必ず側仕えの使用人は付ける事、外に出る際は必ずどこへ行くか側仕え以外第三者に伝える事を義務付けられている。
それは私が万が一迷子になった時の為に仕方のない事だというのは、頭では理解しているのだけれども、なんだか子ども扱いされているみたいで心では複雑である。
それもこれも全てソウイチロウ様がキス以上の事をしてこないのがいけないのだ。
しかも、口へのキスはあの時だけで、以降はおでこやほっぺばかり。
それも一日に一回から二回、私が強請ってようやっと、といった感じである。
初めの頃は自分の口からキスをしてほしいと口にするのは恥ずかし過ぎて言えなかったのだが、ミヤーコから『ソウイチロウ様が想像以上に鈍感である事はそろそろ奥方様も気付き始めているのではないでしょうか? 一応こちらからもソウイチロウ様をせっつきはしますが、ここはやはり奥方様本人から求めない限りは一生キスすらしてくれない可能性が高いかと……』と言われ『た、確かに』と納得してしまった自分に気付けた瞬間『恥ずかしいなどと言っている場合ではない!! そもそも私たちは婚姻関係を結んでいる夫婦なのだ。キスを強請る事くらいなんだと言うのだ。
そう思えてからは自分から夜にキスを強請るようになったし、夜は二人の時間を作るようにもしてもらった。
だというのに、ここまでしてまだ私はソウイチロウ様から手を出されていない……というか、どことなく可愛い妹的な感じで相手をされているように思えるのは私だけだろうか?
……もしかしたら日本のどこかに大人のレディーへと近づける何かがあるのかもしれない……なんて、それこそ子供が夢見そうな妄想をしそうになる。
「どうしたの?」
「アンナさん……実はカクカクシカジカでして……」
そんな事を思い、少し自分に女性として見られていないのかもと自信が無くなり始めた時にアンナが心配そうに話しかけてくるので、思わず私は胸の内をアンナへ打ち明けてしまった。
「あーー、なるほどねっ!! 多分それはもしかしたらこちらの世界と日本との大人と子供の境界線の違いが大きいのかも!!」
「…………大人と子供の境界線の違い……?」
するとアンナは少し悩んだような素振りをしたかと思うと何か思い当たる事があったようで、それを私に教えてくれるのだが、その内容は『こちらの世界と日本との大人と子供の境界線の違い』であると言うではないか。
そうは言われても、子供が産める平均的な年齢は日本でもこちらの世界でも大体同じという話を、以前ソウイチロウ様から手を出されない事の不安からミヤーコに相談して聞いた事がある。
であれば、こちらの世界と日本どちらも成長速度は同じと考えれば大人になる年齢も同じではないのか?
「あ、ちなみに日本では十八から大人の仲間入りなんだけれど、旦那様の年代は法律が変わる前の世代だから二十歳以上が大人の仲間入りという認識で、二十歳以下は旦那様から見たらまだまだ子供なんだと思う!!」
「そうですね。こちらの世界では身体的な特徴で判断されていますが、日本では精神的判断能力で判断されています。その為こちらの世界と日本とでは大人の定義が異なってくるということですね」
「そうそう!! そういう事っ!!」
するとアンナがこちらの世界と違い日本では十八または二十歳から基本的に大人と見られるようで、それにミヤーコがその理由を教えてくれる。




